その恋、魔ちがってませんか?~魔女DK、後輩の恋占いに巻き込まれています!

ヤマ

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15.真面目な馬鹿ほど可愛い

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 時代がかった立派な木の天井が目に入り、慌てて飛び起きた。

 やけに広い和室、やけにもっちりした金糸の刺繍入り布団に寝かされていた。

 目を動かすと精巧な欄間に水墨画のような絵が描かれた襖、木枠の丸窓からは立派な日本庭園が見える。
 奥には花の散った、しかし立派な桜の木が、ここの主のように鎮座している。

「越後屋……?」

 時代劇に出てくる金持ち商人の邸宅が広がっていた。
 ゆっくり起き上がると襖が開き、盆にコップと水差しを載せた安倍が現れた。

「気が付きました?」
「……ここ、お前の家?」
「うわごとでしたが病院は嫌だって言うから連れてきたんです」

 商店街の入り口で倒れたことを思い出した。
 あそこから連れ帰って、しかも介抱までしてくれたのか。
 申し訳なさで心臓が痛い。

「世話かけて悪かったな」

 俺の謝罪に安倍は「気にしないでください」と仏頂面で言った。

 気にした方がよさそうな表情だが、占いの庵で知った彼の性格からして本当に気にしなくて良いのだろう。

 多分。

 汲んでもらった水で喉を潤しながら今一度由緒正しい日本家屋を見回した。

 そういえば安倍のあだ名に若様というのがあったが、こういう意味も含まれていたのか。
 高そうな漆塗りの盆を見ながら納得した。

「気分はどうですか」
「あーだいぶ良くなった。単なる過労だし」
「そんな社畜みたいな」

 一介の男子高校生の状態としてふさわしくない名称に安倍は険しい顔をした。

「姉の手伝いでバイトはじめたんだ」

 半ば無理やり、という恨み言は飲み込む。
 安倍は目を見開いた。

「飲食店とかですか?」
「え、いや」

 言いかけて、墓穴を掘ったことに気が付いた。

 ここでうまくごまかさなければ魔女狩りの一環としてバイト先にも押し掛けると言い出しかねない。

 やばい。とりもちが待ってる。

「バイト先に女の人たくさんいますか?」
「ん?」

 どこで、やどんなと種別を聞かれるものだと思っていたが、なぜか職場の男女比率を気にしている。

 しかも人一人くらい殺しそうな顔で。

「いや、いないっていうか客商売だけど個人作業だから」
「……客は、やっぱり女の人が多いですか」
「んん??」

 やたらバイト先の女性出現率を気にする安倍に大量にはてなマークが飛ぶ。

 しかもやっぱりってなんだ。

「多いっていうか、相手するのはほぼ女の人だな……これだけ聞くとホストみたいだけど違うからな」

 売りにできる顔面は持ち合わせていないし。

 赤いバラを咥えて写真に映っている自分を想像して笑いそうになった。いや本当にホストがバラを咥えているなんて思っていないが。

 バカな妄想をしながらまた水を口に含む。

「やっぱり……。悠長にしてられないな……」
「ひ、」

 横を向いて発された独り言は小さくて聞こえなかったが、安倍は人一人殺してしまった後のような顔をしている。

 既遂犯にうすら寒さを覚えて思わず布団の上で距離をとった。

「つーかお前強いんだな。なんか格闘技やってたのか?」

 話を変えたくて必死で探し当てたテーマだが、結構気になっていた。

「空手と合気道と弓道を」
「まさかの三つ」

 オカルト研究部にはインドアなイメージしかない。
 そのくせに分厚い体をしているし、何かやっているとは思っていたが盛り過ぎである。

 だが言われてみれば納得がいった。
 安倍がやけに凛としているのは、厳しいに違いないこの家の躾と武道のお陰か。

 というか。

「天狗捕まえるのにとりもち要らねぇだろ絶対! 矢で射ろ、矢で。背後から狙え!」

 できない理由があるからとりもちなのだろうと思いつつからかうと、安倍が「確かに……」と目を丸くした。

 俺まで目を丸くしてしまう。

 こいつは完全無欠の鉄人のように見えて、たまに抜けているのだ。

 俺はなんだか胸を押さえて「でも矢を使うとなると狩猟許可が……」などと真面目に考え込んでいる安倍から顔をそらした。

 この間からちょくちょくこの図体のでかい若様が可愛く見える。
 病気かもしれない。

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