その恋、魔ちがってませんか?~魔女DK、後輩の恋占いに巻き込まれています!

ヤマ

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29.武士の技

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 ぎゅ、と抱かれる力が強まり、否定しようがないほどはっきりした声でもう一度「好きです」と言われた。

「小さいころから好きだったんです。でもそれだけじゃなく、調べていくうちに先輩だろうなと目星はついて、いろいろ話してもっと好きになりました。男だけど諦めきれなくて、」
「待って待って待った待った! 落ち着こう! 一旦落ち着こう!」

 心臓がめちゃくちゃ煩い。

 わざとそれを凌駕するほどの音量で叫び安倍の口をふさいだ。

 むぐ、と猫の前足の向こうで安倍が目を丸くしている。

「人妻は!?」
「何の話ですか?」

 俺の手を退けた安倍に、普通に自然にきょとんと聞き返されて気が付いた。

 そういえば安倍から思い人が人妻だと聞いたわけではなかった。

 俺が勝手に勘違いしただけだ。

 ……間違ってたのは俺か!

「お前が占ってた鈍感馬鹿系ラノベ主人公は俺ってこと!? え、両想い? いやでもあの再会は『導入で間違えた』ってレベルじゃねぇし! 普通にストーカー宣言だわ!」

 尻尾を出すまで監視します、が愛の告白の導入だと思うやつがいたらぜひとも会ってみたい。

 絶対友達になれない。

 俺の叫びに安倍が困ったように眉根を寄せた。

「緊張してたんですよ。しかも全然覚えられてないとは思わなくて。ていうか先輩、今、」
「覚えてなかったのは悪かったよ……でもそれにしたって……わっ!」

 でかい猫の頭をわしづかみにされ、ぎゅっぽん! ともがれた。

 爽快感とともに開けた視界に、目じりを赤らめた、それでも真剣な顔をした安倍が俺を見つめていた。

「今先輩、両想いって言いました?」
「ひ、」

 咄嗟に両手で口をふさぐが手遅れなんてものではなかった。

 じわじわと頬が熱を持っていくのが分かる。

「か、返せ!」

 どう考えても真っ赤な顔をしている。
 恥ずかしすぎる。

 猫の頭を取り返そうと安倍につかみかかるも、長身を活かし頭上高く掲げられては届くはずもない。

 それどころか、空いた脇に腕が回りまたしても抱きしめられてしまった。

 俺の最後の砦、猫の頭が転がっていく。

「素人相手に決め技を使うんじゃない!」

 何の型か分からないが、体が全く動かない。

 いや単に帰宅部と武士の筋力差かもしれないが。

「俺なら陽の気もいつでも補充し放題です。受験もまだですし、自由がききます。今ならお買い得ですよ!」
「三〇分以内にお電話でさらにもう一セット! みたいに言うな! ……っ!」

 両ほほを掴まれ、安倍が真剣な顔を向けてくる。

 その訴えるような黒い目に俺は動きを止めざるを得なかった。
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