ゴブリンでも勇者になれますか?

結生

文字の大きさ
15 / 43

名探偵

しおりを挟む
「あの、これどこに向かってるんですか?」


 第七師団支部を出てから真っすぐ東に飛んでいるが、まだ目的地を聞いていない。
 もうすぐ国境付近だ。このままでは国外へと出てしまう。


「ん? ああ、そう言えば言っていなかったな。これから向かうのはカルデネ洞窟だ」
「カルデネ洞窟? それって国境線上にある? なんでそんなところに?」
「ちょっと前々から気になっていた場所で調べたかったんだが、国境線上ってこともあって、外交問題になるとか何とか言われて調査の許可が下りなかったんだよ」
「確か、この先にあるのはタイタンですよね。敵国なんですからそれは許可なんか、おりる……わけ……ってちょっと待ってください! ダメって言われているところにこれから行く気なんですか!?」
「そうだが?」


 なんでそうあっけらかんと……。


「もちろん許可は……」
「取ってない。だって、言ったらダメって言われるじゃん」


 オーマイグッスネ。


「それって後でバレたら戦争になるじゃないですか!? 大問題ですよ!?」
「そう、つまりバレなきゃいいんだ」
「そうじゃないですって! ていうか、もし仮にカルデネ洞窟で大罪魔法に関する情報を手に入れたらどうするんですか!? 報告しないとですよね!?」
「そんなもん、見つかってから考えればいいだろ。見つからなかったら、報告しない方向でいいじゃん?」


 ダメだこの人。全裸以外は普通の人かもしれないと思ってたけど、そんなのは儚い夢だった。ズボンを履かないだけに……。
 ってそんな冗談言ってる場合じゃないって!


「ゼルも何とか……」
「ん? なんだぁ?」


 うっわ、すっごい嬉しそうな顔。


「敵国との国境線付近なんだろ? もしかしたら、そいつらと戦うかもしれないってことだろ? それでそいつら倒したら、また俺の評価がうなぎ登りだな」


 話を振った私がバカだった。


「ねぇ、ヘイヴィアは? やめた方がいいと思うよね!?」


 望み薄だが、一応ヘイヴィアにも聞いてみる。望み薄だけど。


「まぁ、そうだな……。辞めてもいいんじゃないか?」
「そうだよね! ……って、え? なに? どうしたの?」


 なんかいつもと様子がおかしい。さっきまでこんなんじゃなかったのに。


「どうしたって、何が?」
「何がって言われても、こうとは言えないんだけど。なんか大人しいし」
「別にいつもこんなんだろ」


 ウソだ! いつもは事あるごとにゼルに絡んで、うるさいくて面倒くさいのに!
 とは、流石に言えない。
 元気がない、というよりは何か思い悩んでいるように見える。


「腹の調子でも悪いのか? 何だったら帰ってもいいぞ。任務なら俺がいれば平気だし」


 あーあ、またゼルが余計なことを言い出した。
 そんなこと言ったら、ヘイヴィアが怒って……。


「そう、だな……。今回はお前たちだけでもいいかもな」
「あ、あれ?」


 ゼルの喧嘩を買わずに、やけにしおらしい態度を取るヘイヴィア。
 鈍感なゼルもこれには驚きを隠せず、私と顔を見合わせて二人して首を傾げた。
 どう考えてもおかしい。いつものヘイヴィアじゃない。
 今回の任務に関係しているとは思うけど、一体何だろう?
 教えてくれそうな雰囲気でもないし。


「無駄話はそこまでだ。着いたぞ」


 そう言って、ベルヴェットさんは箒の高度を下げていく。
 どうやらカルデネ洞窟の入り口付近に到着したようだ。


「よっ!」


 私の後ろに乗っていたゼルは高度を下げる前に箒から飛び降りた。


「あ、もうゼル……」


 なんか当たり前のように私の後ろに乗っていたけど、お礼の一つもないの? まぁ別にいいけどさぁ。
 少し遅れて私とヘイヴィアは一緒に箒の高度を下げて地面に着地する。
 私たちだけでもいいとか言っていたが、結局ヘイヴィアは帰らず黙って私たちについてきた。


「ここがカルデネ洞窟の入り口か。なんかホントあれだな。洞窟って感じの入り口だな」


 ゼルの言う通り、入り口は装飾されていたりせず、自然に空いた穴のようだった。大きさは大体人三人分ぐらいの大きさで比較的大きめだ。


「中は暗い。これを持っていこう」


 ベルヴェットさんが取り出したのはランプの魔具。魔力を流しこめば誰でも明かりをつけられる優れもの。使い勝手がよく魔具の中でも比較的安価で手に入る代物だ。


「それじゃあ、君たちは俺の後についてきて」


 ランプを持ったベルヴェットさんを先頭に、ゼル、私、そしてヘイヴィアと続く。


「何もねぇなぁ~」
「それはそうでしょ。まだ入ったばかりだし」
「なんかこう、侵入者を排除するトラップとないかなぁ~」
「ないでしょ。ただの洞窟なんだから。てか、トラップなんてない方がいいでしょ」
「でも、何もない洞窟よりは楽しみがある」
「その楽しみのせいで命落とすようなことになったらシャレにならないんだけど?」


 ゼルは割とその場のノリで話していてあまり何も考えてない節がある。
 勘弁してほしい。いちいちツッコむ方の身にもなってほしいのもである。
 いや、まぁ無視すればいいだけなんだけどね。


「ん? 光が見えてきた」


 洞窟の中に入ってからしばらくすると、目の前から明るい光が漏れ出てきた。


「お! 出口か!?」
「あ! ゼル!」


 光を見るなりゼルは何も考えず突っ走っていった。


「もう! 団体行動って言葉を知らないの?」


 私たちは急いでゼルの後を追う。


「出口、じゃねぇな」


 思いのほかすぐ追いつくことが出来た。
 何故ならゼルが立ち止まったからだ。


「どうしたの? 急に立ち止まって……、ってあれ?」


 ゼルが立ち止まった理由は見れば明らかだった。


「私たちがいたのは洞窟だったよね?」
「ああ、そうだな」
「でも、これって……」


 洞窟を進んだその先にあったのは、綺麗に整地された通路だった。
 その通路の両側の壁には一定間隔でランプが設置されており、先程見えた光はこの明かりだった。


「どう見ても洞窟ってよりも、遺跡っぽいですね」
「うん、そうだね。これは……」


 ベルヴェットさんは洞窟と遺跡の境目を触りながら詳しく調べていた。


「推測するに遺跡への通路はごく最近になって見つかったんだろう。恐らく少し前まではここで行き止まりだったはずだ」
「そんなことが見ただけで分かったんですか?」
「ああ。ほら、ここを見てみ。洞窟と遺跡の境目。少し溝があるだろう?」


 ベルヴェットさんが指した地面を見ると確かに不自然な溝があった。


「で、その溝から見える遺跡の床側面が少し擦れている。多分だが、行き止まりに見せかけた壁が横にスライドしたんだろう。隠し通路では定番の仕掛けだな」
「な、なるほど……」


 あれ? この人、もしかしてただの露出癖のある変態じゃない?


「それと遺跡の壁の所々に描かれている文字だけど、あの独特な象形文字は古代ミケラ文字だね。あちらこちらが崩れて文字がとびとびになってて読めないからなんて書いてあるかは分からないけど」
「え、古代ミケラ文字って最近になって解読されたって言うあれですよね。ベルヴェットさん読めるんですか?」
「読めるって言うか、それを解読して発表したのは俺なんだけど?」
「はい?」


 解読した? あの文字を?
 古代ミケラ文字は何百年もの間研究されてきてそれでも解読できなかった代物ですよ?
 それを解明したですって?
 もしそれが本当なのだとしたら、なんでこの人騎士団にいるの? 考古学者とかの方がいいんじゃないの?
 あと、あれなんですね。知的な眼鏡は伊達じゃなかったんですね。
 この人、ただの変態じゃない。


「あの~、ベルヴェットさんって考古学者とかそっち系の人ですか?」
「ん? いいや、違うよ。俺は探偵さ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

なぜ、最強の勇者は無一文で山に消えたのか? ──世界に忘れられ、ひび割れた心のまま始めたダークスローライフ。 そして、虹の種は静かに育ち始め

イニシ原
ファンタジー
ダークスローライフで癒しに耐えろ。 孤独になった勇者。 人と出会わないことで進む時間がスローになるのがダークスローライフ。 ベストな組み合わせだった。 たまに来る行商人が、唯一の接点だった。 言葉は少なく、距離はここちよかった。 でも、ある日、虹の種で作ったお茶を飲んだ。 それが、すべての始まりだった。 若者が来た。 食料を抱えて、笑顔で扉を叩く。 断っても、また来る。 石を渡せば帰るが、次はもっと持ってくる。 優しさは、静けさを壊す。 逃げても、追いつかれる。 それでも、ほんの少しだけ、 誰かと生きたいと思ってしまう。 これは、癒しに耐える者の物語。 *** 登場人物の紹介 ■ アセル 元勇者。年齢は40に近いが、見た目は16歳。森の奥でひとり暮らしている。 ■ アーサー 初老の男性。アセルが唯一接点を持つ人物。たまに森を訪れる。 ■ トリス 若者。20代前半。アーサー行方不明後、食料を抱えて森の家を訪れる。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界に無一文投下!?鑑定士ナギの至福拠点作り

花垣 雷
ファンタジー
「何もないなら、創ればいい。等価交換(ルール)は俺が書き換える!」 一文無しで異世界へ放り出された日本人・ナギ。 彼が持つ唯一の武器は、万物を解析し組み替える【鑑定】と【等価交換】のスキルだった。 ナギは行き倒れ寸前で出会った、最強の女騎士エリスと出会う。現代知識とチート能力を駆使して愛する家族と仲間たちのために「至福の居場所」を築き上げる、異世界拠点ファンタジーストーリー!

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...