ゴブリンでも勇者になれますか?

結生

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突入! ディオナ神殿

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「あの、レミリアさん? これは……?」
「しっかり捕まってろよ」


 私たちは何故かロープでぐるぐる巻きにされており、そのロープの先をレミリアさんが握っていた。


「場所はディオナ神殿と分かったが、普通に箒で飛んでったら、夜になっちまう」
「だから、団長に早く報告を……」
「だから、全力で飛ばす。下噛むから喋んなよ?」
「え、ちょ、何を……」


 聞く間もなくレミリアさんは跳躍する。もちろん、ロープで縛られた私たちはそれにつられて上空へと飛ぶ。


「魔力全開放!」
「い!」
「へ?」
「きゃ!」


 上空へと飛んだ私たちはそのまま超加速して横に落ちていく。






 二時間後。


「し、死ぬかと思った……」
「オロオロロロロロ……」


 重力の方向を横に向けることによって高速移動を可能にしたレミリアさんの魔法によって、私たちは短時間でディオナ神殿までつくことが出来た。
 けど、あまりの速さにまだ足がフラフラする。
 ゼルもぐったりしていて、ヘイヴィアは木陰で吐いていた。


「はぁはぁはぁはぁ……」


 しかし、一番つらそうなのはレミリアさんだった。
 それもそのはずだ。あれだけ強力な魔法を二時間も発動しっぱなしだったのだから。
 恐らく魔力ももうほとんど残っていないだろう。


「私はここに残る。お前ら先に行け」
「で、でも……」


 ディオナ神殿に予定より早く着いたとは言え、この先にいるのは翡翠の妖狐のマスターであるジェイド。新人三人で対処できる保証なんてない。いや、むしろ返り討ちにあう可能性の方が高い。


「時間がねぇんだ。一度でも大罪魔法を使われちまったら、帝国民全員の命がねぇ。絶対に止めろ」


 そうだ。ここでうだうだ言っていても誰も助からない。私たちでなんとかしなきゃ!


「はい! 分かりました!」
「うっす! 俺がそのジェイドってのを倒してやりますよ」
「いいや、倒すのは俺だ。お前は休んでていいぞ」
「んだと? お前の方こそ体調はいいのかよ。吐いてたくせに」
「やんのか!?」


 また二人が喧嘩を始めてしまった。今はそれどころじゃないのに。


「じゃあ、早いもん勝ちだ!」


 二人は我先にとディオナ神殿の中へと突っ走っていった。
 私も置いていかれないように二人の後を追おうとした。


「ちょっと待て、マナ」


 しかし、レミリアさんに呼び止められた。


「少し話がある」





「……行ったか」


 マナと話し終えた後、彼女がディオナ神殿の中へと入っていくのを確認したレミリアはゆっくりと立ち上がる。


「ったく、ぞろぞろと無駄に人数がいるこって」


 レミリアの周囲には例の狐の刺青が入った者たちがいかにも悪人ズラと言った感じで現れた。


「んじゃ、ま、後輩たちの為にもここは死守するか」







「レミリアさんと話してて遅れちゃった。二人とも足早すぎ……」


 私は急いディオナ神殿の中を走る。


「って、分かれ道!?」


 そして、私は三つに分かれた道に突き当たった。


「えっと……二人は?」


 う~んとあの二人の性格を考えるなら……。


「真っすぐかな? なんか曲がるってこと知らなさそうだし」


 ということで、私は敵に会わないことを祈りながら中央の道を選んだ。







 マナがこの分かれ道にたどり着く少し前。


「休んでろよ、地味顔」
「てめぇが休んでろ、ミドリムシ」


 ディオナ神殿に入ってからも二人は相も変わらずいがみ合っていた。


「っち、分かれ道か……」


 そんな二人は三つに分かれた通路で立ち止った。


「「ここは当然……」」
「右だな」
「左だ」


 二人は同時に真逆の方向を指差した。


「なんでだ! どう見ても右の方が怪しいだろ」
「何言ってんだ。左だろ。なんかこっちの方が良さそうな気がする」


 二人とも全く根拠のない言い分で言い争っていた。


「丁度いい、ならこっからは別行動だ」
「いいぜ、ならどっちが先にジェイドのやつを倒せるか勝負だ」
「乗った。俺が勝ったら、今後俺のことを様付で呼べよ」


 そうして、ゼルは右の道へ、ヘイヴィアは左の道へと走って行く。
 奇しくも三人とも別々の道を選んだのだった。
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