ゴブリンでも勇者になれますか?

結生

文字の大きさ
34 / 43

ゼルVS.メイヴィス

しおりを挟む
「あ、あれ? おっかしいな~?」


 二人と別れた後、ゼルはその別れた場所に戻ってきていた。
 恐れをなして後戻りしてきたわけではない。道に迷って気づいたら来た道を戻っていただけなのである。


「ここさっきんとこだよな? なんでだ? まっすぐ進んでたんだけどな」


 どうして元の道に戻ってきてしまったのか、分からないゼルは首を傾げる。


「おやおや、これはこれは、ゴブリンじゃありませんか」
「誰だ?」


 正面の道からカツカツと音を立てながらやってきたのは、杖を突いた老人だった。


「そのローブを見るに騎士団の方の様ですが。いやはや、騎士団がゴブリンを入団させるとは、よほどの人材不足と見える」
「なんだ、爺さん。こんなとこで。迷子か?」
「いやははは、この状況で私を一般人だと思うとは……」
「っ!」


 油断はあった。
 一瞬にしてその老人はゼルの懐に入り、杖を喉元に突き付けた。


「少々危機感が足りないのでは?」
「っく!」


 ゼルは咄嗟に後ろに飛びのいてディスガイナを抜いた。


「ほう、今の反応は良かったですよ。ゴブリンにしてはなかなか俊敏ではないですか。何か武術の心得でも?」
「敵に教えることなんか何もねぇよ」
「なるほど。それもそうですね。では、当ててみましょう。今の移動術は天導流の月影ですかな?」
「なっ! なんで、爺さんがそれを知っているだ!?」
「なに、簡単なことですよ。以前にも天導流の使い手と相対したことがあるだけのことです。伊達に年は重ねていませんよ」
「うわ、マジかよ。爺さん、強いだろ。もしかして、ジェイドってやつか?」
「いえいえ、違いますよ。私はメイヴィス。そうですね……翡翠の妖狐の幹部と言ったところでしょうか」
「そうか。なら、あんたも逮捕だ!」


 ゼルは馬鹿正直に真正面から斬り込む。


「愚直で真っ直ぐな攻撃……ゆえに読まれやすい」


 メイヴィスは杖でディスガイナを受け止める。


「なっ! なんで斬れねぇ」
「初歩的な強化魔法ですよ」
「魔法? なら……」
「おや?」


 ディスガイナがメイヴィスの杖にかけられた強化魔法を喰らう。


「これは、いけませんね」


 ディスガイナが強化魔法を喰いきる前に、メイヴィスはディスガイナを弾き、距離を取った。


「魔法を吸収する剣、ですか。いやははは、面白い神器ですね」
「っち、喰いきれなかったか」
「察するにその剣は魔力を糧に強化される類のもの、ではないですか?」
「だから、敵に教えることなんか何もねぇよ!」


 ゼルはまた正面から斬り込む。


「魔法を吸収する、それなら……」


 メイヴィスはディスガイナを受け止めず、飛んで躱した。


「武器ではなく本体に直接攻撃するのが効果的の様ですね」


 そのまま空中で回し蹴りを繰り出し、ゼルを吹っ飛ばした。


「ぐはっ!」


 壁まで吹き飛ばされ、ゼルはディスガイナを手放す。


「この厄介な武器は没収させていただきましょうか」


 ゼルの手を離れたディスガイナをメイヴィスが拾い上げる。


「っ! こ、これは!」


 ディスガイナを手にしたメイヴィスはふらつき、膝をついた。
 その隙を見逃さなかったゼルはお返しとばかりに、上段蹴りをかまし、ディスガイナを奪い返す。


「喰ったぜ。爺さんの魔力」


 奪い返したディスガイナの刀身の穴の一つが緑色に光る。


「やられましたね。まさか、手に取った持ち主の魔力すらも無差別に吸収するとは……」


 ゼルに蹴り飛ばされたメイヴィスは立ち上がり体勢を立て直す。


「爺さんの魔力は風属性みたいだな。その力、借り受けるぜ。換装(レ・フォルマ)」


 ディスガイナが風を纏いながら、その姿を変容させていく。


「風の双剣ツヴァイエメラル」


 風が晴れると、ディスガイナは二本の短剣へと姿を変えた。


「こいつを解放したからには、速攻だ」
「っ!」


 ゼルは目にもとまらぬ速さでメイヴィスの懐に潜り込む。


「これが風の速さだ」
「……っ速い!」


 躱しきれないと判断したメイヴィスは咄嗟に杖でガードする。


「天導流凬式、一ノ型“迅旋風”」


 ゼルの双剣から打ち出された一撃は突風を生み、メイヴィスを天井へと突き上げる。


「っぐ!」


 そして、メイヴィスはそのまま天井を突き破り空高く飛んでいった。


「あ~あ、どっか行っちゃった。でも、まいっか」


 上階の天井ごとぶち抜いたことによって、ゼルは正規ルートを通ることなく祭壇のある最上階まで行けるようになった。


「これで上に行けるようになったし、ラッキー」


 ゼルはツヴァイエメラルの風を利用して、最上階まで飛んでいくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

なぜ、最強の勇者は無一文で山に消えたのか? ──世界に忘れられ、ひび割れた心のまま始めたダークスローライフ。 そして、虹の種は静かに育ち始め

イニシ原
ファンタジー
ダークスローライフで癒しに耐えろ。 孤独になった勇者。 人と出会わないことで進む時間がスローになるのがダークスローライフ。 ベストな組み合わせだった。 たまに来る行商人が、唯一の接点だった。 言葉は少なく、距離はここちよかった。 でも、ある日、虹の種で作ったお茶を飲んだ。 それが、すべての始まりだった。 若者が来た。 食料を抱えて、笑顔で扉を叩く。 断っても、また来る。 石を渡せば帰るが、次はもっと持ってくる。 優しさは、静けさを壊す。 逃げても、追いつかれる。 それでも、ほんの少しだけ、 誰かと生きたいと思ってしまう。 これは、癒しに耐える者の物語。 *** 登場人物の紹介 ■ アセル 元勇者。年齢は40に近いが、見た目は16歳。森の奥でひとり暮らしている。 ■ アーサー 初老の男性。アセルが唯一接点を持つ人物。たまに森を訪れる。 ■ トリス 若者。20代前半。アーサー行方不明後、食料を抱えて森の家を訪れる。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

異世界に無一文投下!?鑑定士ナギの至福拠点作り

花垣 雷
ファンタジー
「何もないなら、創ればいい。等価交換(ルール)は俺が書き換える!」 一文無しで異世界へ放り出された日本人・ナギ。 彼が持つ唯一の武器は、万物を解析し組み替える【鑑定】と【等価交換】のスキルだった。 ナギは行き倒れ寸前で出会った、最強の女騎士エリスと出会う。現代知識とチート能力を駆使して愛する家族と仲間たちのために「至福の居場所」を築き上げる、異世界拠点ファンタジーストーリー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...