ゴブリンでも勇者になれますか?

結生

文字の大きさ
35 / 43

最速の魔法

しおりを挟む
 う~あー! どうしよう!?
 一番最初に最上階にある祭壇まで辿り着いてしまった私は誰にも見つからないように石柱に隠れて頭を抱えた。
 どう見てもあれがジェイドって人だよね……。
 祭壇の上には顔に縦線が入った若い男性が一冊の本を持って佇んでいた。
 彼の他にはこの場には誰もいなかった。
 なにしているんだろう?
 石柱の陰から顔を出して、彼が何をしているのか様子を見ていた。
 あ、本を置いた。ん? なんか書いてる?
 祭壇に本を置いたジェイドはその周りに魔法陣の様なものを書き始めた。
 あれって止めた方がいいのかな……? いやいや、でも私なんかが出ていったところで過ぎに殺されちゃうだろうし……。でもでも、見てるだけで何もしないのは、それはそれで気が引けると言うか……。
 あー! もう! どうしたらいいの!?
 自分では判断できないと悩んでいたその時。


「お! マナじゃん!」


 敵に見つかることなんかお構いなしに大声で私を呼ぶ大バカ者が現れた。


「ヘ、ヘイヴィア……」


 確実にジェイドに見つかってしまった。
 なんてことをしてくれたのかしら。せっかく隠れていたのに……。


「まさか、お前の方が早かったとはな。やられたぜ。俺が一番乗りだと思ったのによ」


 そんなことはどうでもいい。それよりもジェイドは?
 ヘイヴィアからジェイドに視線を移すと、案の定、彼はこちらを見ていた。


「ほう、騎士が二人もここに辿り着いたか。刺客を送ったはずだが?」
「なんだ? てめぇがジェイドか?」
「そうだ、と言ったら?」
「残念だったな。てめぇの配下のスチールとかってやつは俺がぶっ飛ばしてやったぜ」
「スチールが敗れたのか。なるほど、それなりの力は持っているようだな。それにそのローブ、また第七師団か」
「観念しな。次はてめぇの番だ」


 ちょっとちょっとヘイヴィアさん? あまり敵を挑発しないでくださる? 相手誰だか分かってます? 世界的有名なテロリストさんですよ? 一瞬で殺されちゃうよ?


「あのゴブリンはまだ来てないみたいだな。よっしゃ、あいつが来る前にジェイドをぶっ飛ばす!」


 どこから湧いてくるのか、謎の自信を持ったままヘイヴィアはジェイドの元に向かっていく。


「“アースガトリング”!」


 ヘイヴィアは無数の砂のつぶてを生成し、ジェイドに向かって放つ。


「遅い」


 が、ジェイドは一瞬の閃光と共に姿を消す。


「なに!?」


 結果、ヘイヴィアの魔法は誰もいない場所に撃ち込まれる。


「“天帝の光剣”」
「が、はっ……」
「……………………え?」


 何が起きたのか分からなかった。
 けど、今起きていることが現実なのだとしたら、ヘイヴィアは二本の光の剣に右肩と左足を貫かれていた。


「ヘイヴィア!」


 私はすぐさまヘイヴィアの元に駆け寄り、彼に刺さった光の剣を抜く。
 結果から想像するに、ジェイドは光魔法によって高速移動してヘイヴィアの攻撃を避けた。その後、光の剣でヘイヴィアを攻撃した。
 高速移動もそうだけど、魔法発動のスピードが速すぎて目で追うことが出来なかった。
 光属性は全魔法属性の中で最速を誇る。その為、肉眼ではまず捉えきれない。


「うぐっ……クソ……」


 ヘイヴィアのダメージは深刻だ。吸血鬼とは言え、これではしばらくは動けないだろう。


「次は女、貴様だ」


 ジェイドは光の剣を握りしめこちらに近づいてくる。
 まずいまずいまずい! このままじゃ私もヘイヴィアも殺されちゃう!
 どうすればいいか分からず、私は固まる。
 そして、こういう時に限って余計なことを考えてしまう。
 ああ、やっぱり、私は騎士になんてなるべきじゃなかった。
 私なんかに務まるものじゃなかったんだ。
 全てを諦めた。
 死を受け入れた。
 けど……。


「なんだ?」


 それを否定するかのようなタイミングでジェイドの背後の床が抜け、突風が吹き荒れた。


「え……」


 その風と共に誰かが空高く飛んでいったのが見えた。
 そして、そのすぐ後。


「よっと、到着」
「ゼ……」


 空いた床からとても頼もしい背中が現れた。


「ゼル!!!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

なぜ、最強の勇者は無一文で山に消えたのか? ──世界に忘れられ、ひび割れた心のまま始めたダークスローライフ。 そして、虹の種は静かに育ち始め

イニシ原
ファンタジー
ダークスローライフで癒しに耐えろ。 孤独になった勇者。 人と出会わないことで進む時間がスローになるのがダークスローライフ。 ベストな組み合わせだった。 たまに来る行商人が、唯一の接点だった。 言葉は少なく、距離はここちよかった。 でも、ある日、虹の種で作ったお茶を飲んだ。 それが、すべての始まりだった。 若者が来た。 食料を抱えて、笑顔で扉を叩く。 断っても、また来る。 石を渡せば帰るが、次はもっと持ってくる。 優しさは、静けさを壊す。 逃げても、追いつかれる。 それでも、ほんの少しだけ、 誰かと生きたいと思ってしまう。 これは、癒しに耐える者の物語。 *** 登場人物の紹介 ■ アセル 元勇者。年齢は40に近いが、見た目は16歳。森の奥でひとり暮らしている。 ■ アーサー 初老の男性。アセルが唯一接点を持つ人物。たまに森を訪れる。 ■ トリス 若者。20代前半。アーサー行方不明後、食料を抱えて森の家を訪れる。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

異世界に無一文投下!?鑑定士ナギの至福拠点作り

花垣 雷
ファンタジー
「何もないなら、創ればいい。等価交換(ルール)は俺が書き換える!」 一文無しで異世界へ放り出された日本人・ナギ。 彼が持つ唯一の武器は、万物を解析し組み替える【鑑定】と【等価交換】のスキルだった。 ナギは行き倒れ寸前で出会った、最強の女騎士エリスと出会う。現代知識とチート能力を駆使して愛する家族と仲間たちのために「至福の居場所」を築き上げる、異世界拠点ファンタジーストーリー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...