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悪魔
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「っけ、クソゴブリンにしては中々だったな」
ヘイヴィアは貫かれた右肩を押さえながら立ち上がろうとする。
「ちょ、ヘイヴィア! ダメだって、動いちゃ」
「平気だ。もう治った」
「そ、そんなわけないじゃん。だって、光の剣で貫かれて……え?」
よく見ると左足に空いたはずの傷が既に塞がっており、右肩もほとんど治りかけているようだ。
流石は吸血鬼、と言ったところだろうか。
とは言え、血を流し過ぎたせいか、まだ少しふらついている。
「なんだ、もういいのか? 怪我人はもっと休んでてもいいぞ」
双剣から太刀へと姿を戻したディスガイナを背中に納めたゼルは珍しくヘイヴィアを心配して声をかけた。
よかった。今の戦いで二人とも仲良く……。
「ま、俺なら剣で貫かれた程度で動けなくなったりしないがな」
「んだと? クソチビ! 俺は別に動けなかったわけじゃねぇ。しょうがないからお前にトドメをささせてやったんだ。かぁー俺の温情を理解できてなかったとか察しの悪いやつだなー」
「やんのか? 地味顔」
「上等だ。ミドリムシ」
あ~あ、また喧嘩が始まった。
この二人は一生いがみ合う定めなのかもしれない。
二人の喧嘩止めるの疲れるし、何よりさっきので魔力ほとんど使っちゃったし、放置で。
いちいち構ってられないよ、うん。
「お? もう終わってんじゃん」
「レミリアさん!」
下階から一足遅れてレミリアさんがやってきた。
「魔力が少し回復したから、助太刀にって思ったけどいらなかったな」
「当然、俺がいたからな」
「は? 何言ってんだ、ほとんど俺のおかげだろ」
「バカ言え、お前の砂なんかなくても俺の剣だけで充分だった」
「てめぇ、俺の土魔法を舐めてんのか? いいぜ。体に教えてやる」
「やってみろ、土塊野郎」
もういい加減にしてほしい。
「あはははは、元気なこった。まだまだ、力が有り余ってるみたいだな。しょうがない、私が相手をしてやろう」
あの、レミリアさん? あなたは止める側じゃないと。混ざっちゃダメですって。
いや、うん、もういいや。
私が何言っても聞かないだろうし、それよりも今はグリモワールの回収を急がなくちゃ。
ジェイドは倒せたけど、時間をかけすぎてしまった。
既に日は暮れ月が出始めていた。
私は立ち上がり、祭壇の上にあるグリモワールを回収しに行こうとした。
「え、嘘……」
しかし、祭壇の上でまだ意識があったジェイドが体を引きずりながら、グリモワールへと近づいていた。
「ま、まだだ……。俺は、俺は魔王に、なるんだ……」
ジェイドは何事か呟きながらグリモワールへと手を伸ばす。
ちょ、マズいって!
「みんな!」
ジェイドの意識がまだ残っていることをみんなに伝えようとしたその時だった。
「なんだ?」
「あ?」
「これは……魔力?」
可視化出来るほどの膨大な魔力がジェイドから……いや、グリモワールから溢れ出していた。
「なに? 何が起きたの?」
ジェイドの方を見ると、彼はいつの間にか立ち上がりグリモワールを手にしていた。
そして、グリモワールから噴き出した魔力が彼の体を包み込んでいく。
「な、なんだこれは!? や、やめろ! くるなああああああ!!!!!!!!!」
ジェイドは苦しみだし、叫び、のたうち回る。
どう見てもヤバい状況なんですけど! もしかして、グリモワールの封印が解かれたの!?
何が起きているのか分からず、私たちはむやみに動くことが出来なかった。
段々とジェイドを包んでいた魔力が晴れていく。それと共に彼の叫び声がやんだ。
「んあぁ~……、受肉したのはなん百年ぶりだ?」
そう口にしたのはジェイド本人。
だけど、この気配は何? まるで全く別の人が中に入っているような……。
「おい、何だありゃ。翼か?」
「それだけじゃねぇ、尻尾も生えてるぞ」
魔力が完全に晴れ、再び姿を現したジェイドの様相は人間のそれではなかった。
黒い翼に先の尖った長い尻尾。それに二本の角。
もしあれを私の知っている言葉で表すなら……。
「悪魔……」
ジェイドであったものは具合を確かめるように手を握ったり放したりしている。
「うん。悪くはない」
彼は一体何……?
「おい、てめぇ、何者だ?」
私が抱いていた疑問をヘイヴィアが口にした。
「ゴブリン? それと人間が三人……いや、二人か。お前たちか? 俺を呼び起こしたのは」
「あ? 何言ってやがる。俺はお前が誰かって聞いたんだ」
「そうか、お前たちではないのか。状況はよく分からないが、まぁいいだろう。名乗ってやろう。俺の名はマーモン」
「強欲の大罪魔法に宿る悪魔だ」
ヘイヴィアは貫かれた右肩を押さえながら立ち上がろうとする。
「ちょ、ヘイヴィア! ダメだって、動いちゃ」
「平気だ。もう治った」
「そ、そんなわけないじゃん。だって、光の剣で貫かれて……え?」
よく見ると左足に空いたはずの傷が既に塞がっており、右肩もほとんど治りかけているようだ。
流石は吸血鬼、と言ったところだろうか。
とは言え、血を流し過ぎたせいか、まだ少しふらついている。
「なんだ、もういいのか? 怪我人はもっと休んでてもいいぞ」
双剣から太刀へと姿を戻したディスガイナを背中に納めたゼルは珍しくヘイヴィアを心配して声をかけた。
よかった。今の戦いで二人とも仲良く……。
「ま、俺なら剣で貫かれた程度で動けなくなったりしないがな」
「んだと? クソチビ! 俺は別に動けなかったわけじゃねぇ。しょうがないからお前にトドメをささせてやったんだ。かぁー俺の温情を理解できてなかったとか察しの悪いやつだなー」
「やんのか? 地味顔」
「上等だ。ミドリムシ」
あ~あ、また喧嘩が始まった。
この二人は一生いがみ合う定めなのかもしれない。
二人の喧嘩止めるの疲れるし、何よりさっきので魔力ほとんど使っちゃったし、放置で。
いちいち構ってられないよ、うん。
「お? もう終わってんじゃん」
「レミリアさん!」
下階から一足遅れてレミリアさんがやってきた。
「魔力が少し回復したから、助太刀にって思ったけどいらなかったな」
「当然、俺がいたからな」
「は? 何言ってんだ、ほとんど俺のおかげだろ」
「バカ言え、お前の砂なんかなくても俺の剣だけで充分だった」
「てめぇ、俺の土魔法を舐めてんのか? いいぜ。体に教えてやる」
「やってみろ、土塊野郎」
もういい加減にしてほしい。
「あはははは、元気なこった。まだまだ、力が有り余ってるみたいだな。しょうがない、私が相手をしてやろう」
あの、レミリアさん? あなたは止める側じゃないと。混ざっちゃダメですって。
いや、うん、もういいや。
私が何言っても聞かないだろうし、それよりも今はグリモワールの回収を急がなくちゃ。
ジェイドは倒せたけど、時間をかけすぎてしまった。
既に日は暮れ月が出始めていた。
私は立ち上がり、祭壇の上にあるグリモワールを回収しに行こうとした。
「え、嘘……」
しかし、祭壇の上でまだ意識があったジェイドが体を引きずりながら、グリモワールへと近づいていた。
「ま、まだだ……。俺は、俺は魔王に、なるんだ……」
ジェイドは何事か呟きながらグリモワールへと手を伸ばす。
ちょ、マズいって!
「みんな!」
ジェイドの意識がまだ残っていることをみんなに伝えようとしたその時だった。
「なんだ?」
「あ?」
「これは……魔力?」
可視化出来るほどの膨大な魔力がジェイドから……いや、グリモワールから溢れ出していた。
「なに? 何が起きたの?」
ジェイドの方を見ると、彼はいつの間にか立ち上がりグリモワールを手にしていた。
そして、グリモワールから噴き出した魔力が彼の体を包み込んでいく。
「な、なんだこれは!? や、やめろ! くるなああああああ!!!!!!!!!」
ジェイドは苦しみだし、叫び、のたうち回る。
どう見てもヤバい状況なんですけど! もしかして、グリモワールの封印が解かれたの!?
何が起きているのか分からず、私たちはむやみに動くことが出来なかった。
段々とジェイドを包んでいた魔力が晴れていく。それと共に彼の叫び声がやんだ。
「んあぁ~……、受肉したのはなん百年ぶりだ?」
そう口にしたのはジェイド本人。
だけど、この気配は何? まるで全く別の人が中に入っているような……。
「おい、何だありゃ。翼か?」
「それだけじゃねぇ、尻尾も生えてるぞ」
魔力が完全に晴れ、再び姿を現したジェイドの様相は人間のそれではなかった。
黒い翼に先の尖った長い尻尾。それに二本の角。
もしあれを私の知っている言葉で表すなら……。
「悪魔……」
ジェイドであったものは具合を確かめるように手を握ったり放したりしている。
「うん。悪くはない」
彼は一体何……?
「おい、てめぇ、何者だ?」
私が抱いていた疑問をヘイヴィアが口にした。
「ゴブリン? それと人間が三人……いや、二人か。お前たちか? 俺を呼び起こしたのは」
「あ? 何言ってやがる。俺はお前が誰かって聞いたんだ」
「そうか、お前たちではないのか。状況はよく分からないが、まぁいいだろう。名乗ってやろう。俺の名はマーモン」
「強欲の大罪魔法に宿る悪魔だ」
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