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強欲の天秤
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「悪魔、だと?」
大罪魔法に悪魔が宿っているなんて聞いたことがない。けど、もし本当だとしたら、今ジェイドに取り付いているのが大罪魔法の本体ってこと?
そうなると……いけない!
「ヘイヴィア!」
私は咄嗟に名前を呼んだが、間に合わなかった。
「…………は?」
ザシュっと切断される音が鳴ると共にヘイヴィアの右腕が宙を舞った。
「ぐあああああ!!!」
ヘイヴィアは叫び声を上げ、なくなった右腕を押さえる。
「な、なんだ!?」
「今、何をしやがった!?」
レミリアさんもゼルも突然ヘイヴィアの腕が切断されたことに驚きを隠せなかった。
「代償を払わされたんだよ」
「代償? マナ、何か知っているのか?」
「今のジェイドが本当に強欲の大罪魔法に宿る悪魔なのだとしたら、多分そう。さっきヘイヴィアは彼にその正体を訊ねた。マーモンはその願いを叶えると同時にそれにヘイヴィアに代償を払わせたんだよ」
「ん? どういうことだよ?」
「強欲の大罪魔法については説明したよね」
「ああ、代償を支払うことによって願いを叶える魔法だろ?」
「それが今現実に起きたってことだよ。マーモンは自分の正体を明かす代償としてヘイヴィアの右腕を奪ったの」
「んな、めちゃくちゃな」
「言ったでしょ。大罪魔法はそれ一つで大国をも滅ぼせる力を持ってるって。むしろ、これくらいで済んだのが良い方だよ」
「ほう、小娘にしては中々頭の回転が速いな」
ジェイド、いや、マーモンは感嘆の声を上げた。
それは私が今言った説明が正しかったことを証明している。
「あのめちゃくちゃな魔法に対応する手段はねぇのか?」
「それは簡単だよ。何も要求しなければいい。そうすれば、代償を払わされることはないから。でも……」
でも、それはその場しのぎでしかなく。根本的な解決にはならない。
あのまま彼を野放しにしてしまえば、誰かが彼に願いを告げたら、そのたびに代償を払わされることになる。もし、その願いの代償が一国の命を必要とするものだった場合、帝国は滅ぶ。
うんん、この国だけじゃない。この世界全ての命が奪われる可能性だってある。
「何も難しく考えることはねぇよ。要はあいつをぶっとばしゃいいんだろ」
「ヘイヴィア! 平気なの!?」
「ああ、問題ねぇ。腕はくっつけた」
「くっつけたって……でもそれ……」
ヘイヴィアの右腕を見ると土魔法で切断面を固めて無理やり繋げていた。
当然、そんなもので腕が治るわけではなく、右腕は力なく垂れていた。
「こんなもんこうしときゃ、すぐ治る」
「そんなわけ……、え、ヘイヴィア? その目……どうしたの?」
気が付いたら、ヘイヴィアの瞳の色が血のような真紅に染まっていた。
「目? ……ああ、そうか。っち、血を流しすぎたせいか。気にすんな、なんでもねぇ」
ヘイヴィアは鬱陶しそうに舌打ちをした。
「その目。なるほど、やはりお前、人間ではないな?」
ヘイヴィアの瞳の色が変色したことに気が付いたマーモンは得心がいったように頷いた。
「腕を切り落とされてまともに意識を保っているところを見るに、不死者。吸血鬼か? いや、肉体の再生速度が遅い。純粋な吸血鬼ではなく、そのなりそこないか」
再生速度が遅い……? もしかしてって思ったけど、やっぱりヘイヴィアはリゼさんとの戦いの傷がまだ癒えてないんじゃないの?
肉体の傷はすぐ治るけど、内面的な部分、例えば魔力とか、その辺はまだ完治しきれてない。
今にして思えば、ヘイヴィアの魔力の感じが前と違って弱々しく感じる。
ジェイドにあっさりやられてたのはそのせいだったのね。
「吸血鬼の成りそこないに、劣等種族のゴブリン。はみ出し者ばかりか。この俺の受肉を見届ける者としては役不足だな」
マーモンは完全にゼルとヘイヴィアを見下していた。
「劣等種族のゴブリンじゃねぇ! 俺は勇者になるゴブリンだ!」
「勇者、だと? くはははははははははははは!!!! なれるわけないだろう! ゴブリンが勇者になる? もし、そんなことになったらこの世界は終わりだろうよ」
「なんだと! なるったらなる!」
「どこからそんな自信が出てくる? ゴブリンというからには、今までそれ相応の扱いを受けてきたはずだ。そんな夢見がちなことなど……」
「俺がなるって決めたんだ。だから、なる」
マーモンの言葉を遮ってゼルはそう言った。
「ふぅ~、まぁ、そんなものはどうでもいいな。何故なら、今ここでお前たちは死ぬのだから」
「はっ、死なねぇよ。勇者になるまではな!」
ゼルはディスガイナを抜き、マーモンに向かっていく。
「ゴブリンでも肩慣らし程度にはなるか。いいだろう、相手をしてやる」
マーモンは一度上空へと飛び、滑空しながらゼルを迎え撃つ。
「天導流唯式、六ノ型……」
ゼルはディスガイナを引き、切っ先をマーモンへ向ける。
「“虎龍突き”!」
そして、そのまま勢いよくディスガイナを前へと突き出す。
「狙いが甘すぎる」
マーモンはゼルの突きを空中で軽やかに躱し、右手に魔力を圧縮した球体を作り出す。
「吹き飛べ」
それをゼルの腹部に突きつける。
「がはっ!」
もろに攻撃を食らったゼルは壁まで突き飛ばされる。
「隙だらけだ!」
マーモンの攻撃直後の隙を狙って、レミリアさんは背後から拳を振るう。
「いいや、わざとだ」
しかし、マーモンは振り返らず、人差し指でレミリアさんの拳を受け止めつつ、踵落としを決める。
「落ちろ」
「っ!」
踵落としを食らったレミリアさんは地面に体を打ち付ける。
「これならどうだ! “アースキャノン”!」
今度はヘイヴィアが巨大な砲台を作り、マーモンに向かって岩石を放つ。
「ぬるい」
マーモンはゆっくりと手を前に突き出す。
すると、ヘイヴィアが放った岩石がマーモンの目の前でピタリと止まった。
「なに!?」
「返す」
マーモンはそう言って、岩石を軽く叩く。
「ぐぁ!」
……え?
気が付いたら、ヘイヴィアが後ろに吹き飛んでいた。
どうやら、目にも止まらぬ速さでヘイヴィアの放った岩石を打ち返してきたみたいだ。
レベルが違いすぎるよ……。
ゼル、ヘイヴィア、レミリアさん。三人とも、倒れ伏し、動かない。
「後は女、お前だけだ」
マーモンは私の前に降り立つ。
ダメだ……逃げないと。……殺される。
「……………………」
頭では分かっている。
でも、恐怖で体が動かない。
「まだだ! まだ俺は負けてねぇぞ!」
「俺もだ」
「新人が気張ってんだ。アタシが倒れてはいられないな」
三人は立ち上がり、その目はまだ諦めてなかった。
「ふん、死にぞこないどもが。いいだろう。なら、俺の魔法を見せてやる」
ぐっと一気にプレッシャーが上がった。
魔法? もしかして……!
「逃げ場はない」
「強欲の天秤発動!」
大罪魔法に悪魔が宿っているなんて聞いたことがない。けど、もし本当だとしたら、今ジェイドに取り付いているのが大罪魔法の本体ってこと?
そうなると……いけない!
「ヘイヴィア!」
私は咄嗟に名前を呼んだが、間に合わなかった。
「…………は?」
ザシュっと切断される音が鳴ると共にヘイヴィアの右腕が宙を舞った。
「ぐあああああ!!!」
ヘイヴィアは叫び声を上げ、なくなった右腕を押さえる。
「な、なんだ!?」
「今、何をしやがった!?」
レミリアさんもゼルも突然ヘイヴィアの腕が切断されたことに驚きを隠せなかった。
「代償を払わされたんだよ」
「代償? マナ、何か知っているのか?」
「今のジェイドが本当に強欲の大罪魔法に宿る悪魔なのだとしたら、多分そう。さっきヘイヴィアは彼にその正体を訊ねた。マーモンはその願いを叶えると同時にそれにヘイヴィアに代償を払わせたんだよ」
「ん? どういうことだよ?」
「強欲の大罪魔法については説明したよね」
「ああ、代償を支払うことによって願いを叶える魔法だろ?」
「それが今現実に起きたってことだよ。マーモンは自分の正体を明かす代償としてヘイヴィアの右腕を奪ったの」
「んな、めちゃくちゃな」
「言ったでしょ。大罪魔法はそれ一つで大国をも滅ぼせる力を持ってるって。むしろ、これくらいで済んだのが良い方だよ」
「ほう、小娘にしては中々頭の回転が速いな」
ジェイド、いや、マーモンは感嘆の声を上げた。
それは私が今言った説明が正しかったことを証明している。
「あのめちゃくちゃな魔法に対応する手段はねぇのか?」
「それは簡単だよ。何も要求しなければいい。そうすれば、代償を払わされることはないから。でも……」
でも、それはその場しのぎでしかなく。根本的な解決にはならない。
あのまま彼を野放しにしてしまえば、誰かが彼に願いを告げたら、そのたびに代償を払わされることになる。もし、その願いの代償が一国の命を必要とするものだった場合、帝国は滅ぶ。
うんん、この国だけじゃない。この世界全ての命が奪われる可能性だってある。
「何も難しく考えることはねぇよ。要はあいつをぶっとばしゃいいんだろ」
「ヘイヴィア! 平気なの!?」
「ああ、問題ねぇ。腕はくっつけた」
「くっつけたって……でもそれ……」
ヘイヴィアの右腕を見ると土魔法で切断面を固めて無理やり繋げていた。
当然、そんなもので腕が治るわけではなく、右腕は力なく垂れていた。
「こんなもんこうしときゃ、すぐ治る」
「そんなわけ……、え、ヘイヴィア? その目……どうしたの?」
気が付いたら、ヘイヴィアの瞳の色が血のような真紅に染まっていた。
「目? ……ああ、そうか。っち、血を流しすぎたせいか。気にすんな、なんでもねぇ」
ヘイヴィアは鬱陶しそうに舌打ちをした。
「その目。なるほど、やはりお前、人間ではないな?」
ヘイヴィアの瞳の色が変色したことに気が付いたマーモンは得心がいったように頷いた。
「腕を切り落とされてまともに意識を保っているところを見るに、不死者。吸血鬼か? いや、肉体の再生速度が遅い。純粋な吸血鬼ではなく、そのなりそこないか」
再生速度が遅い……? もしかしてって思ったけど、やっぱりヘイヴィアはリゼさんとの戦いの傷がまだ癒えてないんじゃないの?
肉体の傷はすぐ治るけど、内面的な部分、例えば魔力とか、その辺はまだ完治しきれてない。
今にして思えば、ヘイヴィアの魔力の感じが前と違って弱々しく感じる。
ジェイドにあっさりやられてたのはそのせいだったのね。
「吸血鬼の成りそこないに、劣等種族のゴブリン。はみ出し者ばかりか。この俺の受肉を見届ける者としては役不足だな」
マーモンは完全にゼルとヘイヴィアを見下していた。
「劣等種族のゴブリンじゃねぇ! 俺は勇者になるゴブリンだ!」
「勇者、だと? くはははははははははははは!!!! なれるわけないだろう! ゴブリンが勇者になる? もし、そんなことになったらこの世界は終わりだろうよ」
「なんだと! なるったらなる!」
「どこからそんな自信が出てくる? ゴブリンというからには、今までそれ相応の扱いを受けてきたはずだ。そんな夢見がちなことなど……」
「俺がなるって決めたんだ。だから、なる」
マーモンの言葉を遮ってゼルはそう言った。
「ふぅ~、まぁ、そんなものはどうでもいいな。何故なら、今ここでお前たちは死ぬのだから」
「はっ、死なねぇよ。勇者になるまではな!」
ゼルはディスガイナを抜き、マーモンに向かっていく。
「ゴブリンでも肩慣らし程度にはなるか。いいだろう、相手をしてやる」
マーモンは一度上空へと飛び、滑空しながらゼルを迎え撃つ。
「天導流唯式、六ノ型……」
ゼルはディスガイナを引き、切っ先をマーモンへ向ける。
「“虎龍突き”!」
そして、そのまま勢いよくディスガイナを前へと突き出す。
「狙いが甘すぎる」
マーモンはゼルの突きを空中で軽やかに躱し、右手に魔力を圧縮した球体を作り出す。
「吹き飛べ」
それをゼルの腹部に突きつける。
「がはっ!」
もろに攻撃を食らったゼルは壁まで突き飛ばされる。
「隙だらけだ!」
マーモンの攻撃直後の隙を狙って、レミリアさんは背後から拳を振るう。
「いいや、わざとだ」
しかし、マーモンは振り返らず、人差し指でレミリアさんの拳を受け止めつつ、踵落としを決める。
「落ちろ」
「っ!」
踵落としを食らったレミリアさんは地面に体を打ち付ける。
「これならどうだ! “アースキャノン”!」
今度はヘイヴィアが巨大な砲台を作り、マーモンに向かって岩石を放つ。
「ぬるい」
マーモンはゆっくりと手を前に突き出す。
すると、ヘイヴィアが放った岩石がマーモンの目の前でピタリと止まった。
「なに!?」
「返す」
マーモンはそう言って、岩石を軽く叩く。
「ぐぁ!」
……え?
気が付いたら、ヘイヴィアが後ろに吹き飛んでいた。
どうやら、目にも止まらぬ速さでヘイヴィアの放った岩石を打ち返してきたみたいだ。
レベルが違いすぎるよ……。
ゼル、ヘイヴィア、レミリアさん。三人とも、倒れ伏し、動かない。
「後は女、お前だけだ」
マーモンは私の前に降り立つ。
ダメだ……逃げないと。……殺される。
「……………………」
頭では分かっている。
でも、恐怖で体が動かない。
「まだだ! まだ俺は負けてねぇぞ!」
「俺もだ」
「新人が気張ってんだ。アタシが倒れてはいられないな」
三人は立ち上がり、その目はまだ諦めてなかった。
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※小説家になろうにも掲載しています。
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