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DDD本部襲撃事件Ⅰ
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「うぉ、めっちゃニュースになってんじゃん。SNSでもトレンド入りしてるし」
アンリエッタのメイド、メアリーを助けた翌日。
ネットでは昨日の事件が大々的に取り上げられていた。
『またもや大手柄! アンリエッタ王女を救った英雄、領域の絶対者!!!』
そんな見出しがトップニュースとして上がっていた。
紫苑の名前や二つ名がSNSで呟かれトレンド1位にまでなっている。
とはいえ、そこまで驚くようなことでない。
だって、これいつもの流れだしな。紫苑は有名人だし人気もある。あいつが事件解決するたびにネット上では大盛り上がり。
「俺の名前は……載ってないか」
ちょっとは期待していた。昨日の事件をきっかけに俺の有名人になるのではないかと。そんなことはなかった。
そりゃそうだよなぁ。身元不確かな人間をニュースに取り上げても誰も興味示さないもんな。それより紫苑載せた方がみんな見るもんな。見栄えもいいし。
で、今ネットを騒がせている当の本人なのだが……。
「こっち? いやでも、今日の気分的にはこっちの方が……う~ん」
ニュースのことなど気にも留めず、今日着る服を真剣に悩んでいた。下着姿で。
何を悩んでいるんだ? いつものくそださTシャツでいいだろ。
「ねぇ、伊織的にはどれがいい?」
リビングの床に大量の衣服が並べられている。
正直どれでもいいし、興味もない。それよりも気になることがあった。
「下着の色は上下揃えようぜ」
ブラはピンク、パンツは青と白の縞パン。
こういうのは普通上下セットのやつ買って合わせるんじゃないの? 違うの? これは男の中の常識で女子はみんな見られないから別々でのいいっしょ? って考えなの?
「そこは安心して、この後、勝負下着に着替えるから。……ってあ、そっか。それなら、下着に合わせて、これがいいかな?」
どうやら、着る服が決まったみたいだ。
それよりも勝負下着ってなんだ? これからなんかあるのか? 普段着る服に頓着しないこいつがこうも一生懸命、服を吟味しているのはなんでだ? なに、デート? これからデートにでも行くの?
いや、それはないか。
こいつがここまで服に気を使う時は大体決まっている。
この後、絶対可愛い女の子に会う気だ。
それしかない。
でも、相手は誰だ? ここまで紫苑が気合を入れているのは久しぶりな気がする。
1つ心当たりがある。
いやでも……あるか? そうなのか?
そうなるとだ。これはちょっと嫌な予感がするな。
「あ~紫苑? 俺このあとちょっとバイトが……」
「何言っているの? 伊織は昨日、バイトの面接落ちたばっかじゃん。仕事ないでしょ?」
「え、あ、いや、別の、そう! 別のバイトの面接受かってて、今日からもうシフト入れられてるんだよ」
「じゃあ、それバックレで」
バッサリと言い捨てた。
「ちょいちょい、それはまずいだろ。シフトに穴開けちゃ。店長困っちゃうじゃん」
「バイトが1人抜けたくらいで回らなくなる職場って、それは店長のマネジメントの問題でしょ?」
ぐうの音も出ない。と言うか、それ俺が前に言ったやつだ。紫苑にドヤ顔で言ったやつだ。
これじゃあ、もうバイトをバックレるしかねぇ。……いやまぁ、バイト自体嘘だからバックレるとかそう言う問題ではないんだが。
え、じゃあなに? これ、この後の予定、紫苑に付き合わなきゃいけないってこと? マジかよ。
こうなりゃ、後は俺の嫌な予感が外れることを祈るしかねぇ。
--------------------------------------------------------------------------
結局、紫苑に付き合うことになった俺は紫苑が呼んだタクシーに乗せられた。
「ん?」
そして、連れてこられたのは俺の予想と反した場所だった。
「病院?」
そこは都内にあるちょっと大きめの病院だった。
「ここに知り合いがいるの」
紫苑はそれだけ言うと病院の中へと入っていき、面会の手続きを済ませる。
そして、そのままエレベーターに乗り、4Fまで上がる。
「ここだよ」
そうして、紫苑に連れてこられたのは個室の病室。
クロエ・テール?
ネームプレートにはそう書かれていた。
聞き覚えのない名前だ。てっきり、俺の知っている奴が入院しているのかと思ったが、そうではないみたいだ。
ますます、紫苑が俺をここに連れてきた理由が分からない。
「クロエさん! 会いに来たよ!」
紫苑はノックもせず、病室の扉を開ける。
相変わらず、無遠慮な奴だ。知ってる仲でもノックくらいするもんだろ。全くしつけがなっていない。
「あら、紫苑ちゃん。いらっしゃい」
だが、この病室の主はそんな紫苑の失礼な行動を咎めず、笑顔で受け入れた。
彼女がクロエ・テールか。
年の頃は20後半から30前半くらいだろうか。長い金色の髪に黒く大きな瞳。その整った顔立ちから、美人という言葉では足りないほどの美しさを持っていた。
美人は美人であるんだが……。
俺は部屋に入った瞬間、彼女よりも気になることがあった。
キツイな……この匂い。
お香……ではないな、香水か? 多分、そうだな。どうすれば部屋中にこの匂いが充満するんだ? 浴びるほど香水を吹きかけなきゃこうはならないだろ。
とは言え、初めましての女性を前にして匂いがキツイからと顔を歪めてしまうのは無礼というもの。
俺は紫苑の様な非常識な人間ではないので、口呼吸でなるべく匂いを吸わないようにして、何とか耐える。
「そちらの彼は? もしかして、紫苑ちゃんの彼氏かしら?」
クロエさんは俺の方をチラリと見ると、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「うんん、違うよ。ただの幼馴染み。ほら、前に話した伊織だよ」
話した? 何を? おい、お前、変なこと言ってないだろうな。
「ああ、彼があの……」
あの……なんだよ!? 気になるなその後! なんだ、紫苑のやつ俺をどういう風に説明したんだ。
いや待てよ。紫苑の性格からして嘘をつくようなことはしていないだろう。となれば、ありのまま、事実を伝えたに過ぎない。
そうなったら、俺…………ヒモじゃん!
そうだよ。紫苑の部屋に居候していて、生活費も出してもらって、けど、仕事はしてない。
やっちまったなぁ!!!! これはもう初対面の女性相手に引かれても文句言えねぇなぁ!
いや待て待て。これはこの世界が悪い。レムナントを蔑むこの世界の構造が全て悪い。
そうだ。俺のせいじゃない。これをちゃんと説明しないと。
俺はレムナントだから仕事に就けていないのだと……。
……でもちょっと待って。そうだよ。レムナントは蔑まれる者。それなら、彼女にそれを伝えたら、さらに状況が悪くなるのでは!?
なんだこれも詰んでるじゃねぇか。こうなれば、もう、余計なことを言わず、評価の下方修正だけは避けなくては。
「どうも、初めまして。東雲伊織です」
まずは無難に挨拶。さぁこれでどうくる?
「初めまして。私はクロエ・テール。あなたのことは紫苑ちゃんから聞いているわ。頭がいいんですってね」
ぬおおおおおお!!! グッジョブ、紫苑!
彼女はヒモである俺に優しく微笑んだ。
これは好感触。しかも頭がいいだと? 紫苑のやつ、やる時はやるじゃん。流石、DDD序列1位。
「いえ、それほどでも。ところで、クロエさんは紫苑とはどういう関係なんですか?」
「私は彼女のハンドラーよ」
ハンドラー。それはDDD局員1人に必ず付く秘書の様なものである。
スケジュール管理や事務手続きなど、現場で動く局員のサポートをするのが彼女らの役割である。
「あれ? でも、紫苑のハンドラーって……」
俺の記憶が正しければ、紫苑のハンドラーは結構いい年したおばさんだったような気が……。
「紫苑ちゃんの前任者は去年退職したのよ。それで私は今年から彼女の担当になったの」
あ、なる。詳しい年は知らなかったけど、確かに定年でもおかしくないくらいのおばさんだった。
でも、一つ納得したことがある。
最近、紫苑がDDDの依頼を受けてないなって思ってたけど、あれはサボってたわけじゃなくて、ハンドラーのクロエさんが入院したからなのか。
「って、言っても今はこうなっちゃって、しばらくは彼女の手助けは出来ないのだけれど」
そう言って、クロエさんは左手を上げる。
「……っ!」
左腕は包帯がしっかりと巻かれていた。
けれど、それでも分かった。
彼女の左手首より先がないことに。
「何があったんですか?」
「ん~これは外部に漏らしちゃいけないんだけど……」
そう言いながらクロエさんは紫苑の方をチラリと見る。
「大丈夫だよ。伊織は言いふらしたりしないよ。だって、そんなこと言いたくても友達いないもん」
おい、コラ。何俺がボッチなことバラしてんだ。
違うから。俺の人間性に問題があって友達がいないんじゃないから。レムナントだからいないだけだし。
いや待てよ? そうなるとレムナントの友達ならいることにならないか?
でも俺には……そんな友達いない!
じゃあ、やっぱり人間性に問題あるってことじゃん!
いやいや、そもそもレムナントなんて希少種、早々会えるもんじゃない。もし出会えていたら友達になれる……はず。
やばい、ちょっと自信なくなってきた。
「あ~……それなら言ってもいいかな?」
あ~って、その後のちょっとした間は何? もしかして、気を使ってフォローしてくれようとした? でも、それならとか言っちゃって俺がボッチ前提で話進めようとしてない?
いや、まぁもうボッチでいいけどさ。マジで友達いないし。
「言っちゃいけないなら、別に言わなくても……」
正直、友達いるいないにかかわらず、何があったのか聞かない方が良さげな感じするんだが。
だって、左手無くなってるんだよ? 今日会ったばかりの俺に軽く話せるような内容じゃないだろ。下手したらトラウマもんだぜ? むしろ聞きたくないまである。
「いえ、紫苑ちゃんが信頼しているみたいだし」
え、話すの? マジで?
そうなると、俺も真面目に聞かなくてはならない。
「私がこうなったのは1週間前のことよ。赤坂にあるDDDの本部に何者かが侵入したの」
アンリエッタのメイド、メアリーを助けた翌日。
ネットでは昨日の事件が大々的に取り上げられていた。
『またもや大手柄! アンリエッタ王女を救った英雄、領域の絶対者!!!』
そんな見出しがトップニュースとして上がっていた。
紫苑の名前や二つ名がSNSで呟かれトレンド1位にまでなっている。
とはいえ、そこまで驚くようなことでない。
だって、これいつもの流れだしな。紫苑は有名人だし人気もある。あいつが事件解決するたびにネット上では大盛り上がり。
「俺の名前は……載ってないか」
ちょっとは期待していた。昨日の事件をきっかけに俺の有名人になるのではないかと。そんなことはなかった。
そりゃそうだよなぁ。身元不確かな人間をニュースに取り上げても誰も興味示さないもんな。それより紫苑載せた方がみんな見るもんな。見栄えもいいし。
で、今ネットを騒がせている当の本人なのだが……。
「こっち? いやでも、今日の気分的にはこっちの方が……う~ん」
ニュースのことなど気にも留めず、今日着る服を真剣に悩んでいた。下着姿で。
何を悩んでいるんだ? いつものくそださTシャツでいいだろ。
「ねぇ、伊織的にはどれがいい?」
リビングの床に大量の衣服が並べられている。
正直どれでもいいし、興味もない。それよりも気になることがあった。
「下着の色は上下揃えようぜ」
ブラはピンク、パンツは青と白の縞パン。
こういうのは普通上下セットのやつ買って合わせるんじゃないの? 違うの? これは男の中の常識で女子はみんな見られないから別々でのいいっしょ? って考えなの?
「そこは安心して、この後、勝負下着に着替えるから。……ってあ、そっか。それなら、下着に合わせて、これがいいかな?」
どうやら、着る服が決まったみたいだ。
それよりも勝負下着ってなんだ? これからなんかあるのか? 普段着る服に頓着しないこいつがこうも一生懸命、服を吟味しているのはなんでだ? なに、デート? これからデートにでも行くの?
いや、それはないか。
こいつがここまで服に気を使う時は大体決まっている。
この後、絶対可愛い女の子に会う気だ。
それしかない。
でも、相手は誰だ? ここまで紫苑が気合を入れているのは久しぶりな気がする。
1つ心当たりがある。
いやでも……あるか? そうなのか?
そうなるとだ。これはちょっと嫌な予感がするな。
「あ~紫苑? 俺このあとちょっとバイトが……」
「何言っているの? 伊織は昨日、バイトの面接落ちたばっかじゃん。仕事ないでしょ?」
「え、あ、いや、別の、そう! 別のバイトの面接受かってて、今日からもうシフト入れられてるんだよ」
「じゃあ、それバックレで」
バッサリと言い捨てた。
「ちょいちょい、それはまずいだろ。シフトに穴開けちゃ。店長困っちゃうじゃん」
「バイトが1人抜けたくらいで回らなくなる職場って、それは店長のマネジメントの問題でしょ?」
ぐうの音も出ない。と言うか、それ俺が前に言ったやつだ。紫苑にドヤ顔で言ったやつだ。
これじゃあ、もうバイトをバックレるしかねぇ。……いやまぁ、バイト自体嘘だからバックレるとかそう言う問題ではないんだが。
え、じゃあなに? これ、この後の予定、紫苑に付き合わなきゃいけないってこと? マジかよ。
こうなりゃ、後は俺の嫌な予感が外れることを祈るしかねぇ。
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結局、紫苑に付き合うことになった俺は紫苑が呼んだタクシーに乗せられた。
「ん?」
そして、連れてこられたのは俺の予想と反した場所だった。
「病院?」
そこは都内にあるちょっと大きめの病院だった。
「ここに知り合いがいるの」
紫苑はそれだけ言うと病院の中へと入っていき、面会の手続きを済ませる。
そして、そのままエレベーターに乗り、4Fまで上がる。
「ここだよ」
そうして、紫苑に連れてこられたのは個室の病室。
クロエ・テール?
ネームプレートにはそう書かれていた。
聞き覚えのない名前だ。てっきり、俺の知っている奴が入院しているのかと思ったが、そうではないみたいだ。
ますます、紫苑が俺をここに連れてきた理由が分からない。
「クロエさん! 会いに来たよ!」
紫苑はノックもせず、病室の扉を開ける。
相変わらず、無遠慮な奴だ。知ってる仲でもノックくらいするもんだろ。全くしつけがなっていない。
「あら、紫苑ちゃん。いらっしゃい」
だが、この病室の主はそんな紫苑の失礼な行動を咎めず、笑顔で受け入れた。
彼女がクロエ・テールか。
年の頃は20後半から30前半くらいだろうか。長い金色の髪に黒く大きな瞳。その整った顔立ちから、美人という言葉では足りないほどの美しさを持っていた。
美人は美人であるんだが……。
俺は部屋に入った瞬間、彼女よりも気になることがあった。
キツイな……この匂い。
お香……ではないな、香水か? 多分、そうだな。どうすれば部屋中にこの匂いが充満するんだ? 浴びるほど香水を吹きかけなきゃこうはならないだろ。
とは言え、初めましての女性を前にして匂いがキツイからと顔を歪めてしまうのは無礼というもの。
俺は紫苑の様な非常識な人間ではないので、口呼吸でなるべく匂いを吸わないようにして、何とか耐える。
「そちらの彼は? もしかして、紫苑ちゃんの彼氏かしら?」
クロエさんは俺の方をチラリと見ると、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「うんん、違うよ。ただの幼馴染み。ほら、前に話した伊織だよ」
話した? 何を? おい、お前、変なこと言ってないだろうな。
「ああ、彼があの……」
あの……なんだよ!? 気になるなその後! なんだ、紫苑のやつ俺をどういう風に説明したんだ。
いや待てよ。紫苑の性格からして嘘をつくようなことはしていないだろう。となれば、ありのまま、事実を伝えたに過ぎない。
そうなったら、俺…………ヒモじゃん!
そうだよ。紫苑の部屋に居候していて、生活費も出してもらって、けど、仕事はしてない。
やっちまったなぁ!!!! これはもう初対面の女性相手に引かれても文句言えねぇなぁ!
いや待て待て。これはこの世界が悪い。レムナントを蔑むこの世界の構造が全て悪い。
そうだ。俺のせいじゃない。これをちゃんと説明しないと。
俺はレムナントだから仕事に就けていないのだと……。
……でもちょっと待って。そうだよ。レムナントは蔑まれる者。それなら、彼女にそれを伝えたら、さらに状況が悪くなるのでは!?
なんだこれも詰んでるじゃねぇか。こうなれば、もう、余計なことを言わず、評価の下方修正だけは避けなくては。
「どうも、初めまして。東雲伊織です」
まずは無難に挨拶。さぁこれでどうくる?
「初めまして。私はクロエ・テール。あなたのことは紫苑ちゃんから聞いているわ。頭がいいんですってね」
ぬおおおおおお!!! グッジョブ、紫苑!
彼女はヒモである俺に優しく微笑んだ。
これは好感触。しかも頭がいいだと? 紫苑のやつ、やる時はやるじゃん。流石、DDD序列1位。
「いえ、それほどでも。ところで、クロエさんは紫苑とはどういう関係なんですか?」
「私は彼女のハンドラーよ」
ハンドラー。それはDDD局員1人に必ず付く秘書の様なものである。
スケジュール管理や事務手続きなど、現場で動く局員のサポートをするのが彼女らの役割である。
「あれ? でも、紫苑のハンドラーって……」
俺の記憶が正しければ、紫苑のハンドラーは結構いい年したおばさんだったような気が……。
「紫苑ちゃんの前任者は去年退職したのよ。それで私は今年から彼女の担当になったの」
あ、なる。詳しい年は知らなかったけど、確かに定年でもおかしくないくらいのおばさんだった。
でも、一つ納得したことがある。
最近、紫苑がDDDの依頼を受けてないなって思ってたけど、あれはサボってたわけじゃなくて、ハンドラーのクロエさんが入院したからなのか。
「って、言っても今はこうなっちゃって、しばらくは彼女の手助けは出来ないのだけれど」
そう言って、クロエさんは左手を上げる。
「……っ!」
左腕は包帯がしっかりと巻かれていた。
けれど、それでも分かった。
彼女の左手首より先がないことに。
「何があったんですか?」
「ん~これは外部に漏らしちゃいけないんだけど……」
そう言いながらクロエさんは紫苑の方をチラリと見る。
「大丈夫だよ。伊織は言いふらしたりしないよ。だって、そんなこと言いたくても友達いないもん」
おい、コラ。何俺がボッチなことバラしてんだ。
違うから。俺の人間性に問題があって友達がいないんじゃないから。レムナントだからいないだけだし。
いや待てよ? そうなるとレムナントの友達ならいることにならないか?
でも俺には……そんな友達いない!
じゃあ、やっぱり人間性に問題あるってことじゃん!
いやいや、そもそもレムナントなんて希少種、早々会えるもんじゃない。もし出会えていたら友達になれる……はず。
やばい、ちょっと自信なくなってきた。
「あ~……それなら言ってもいいかな?」
あ~って、その後のちょっとした間は何? もしかして、気を使ってフォローしてくれようとした? でも、それならとか言っちゃって俺がボッチ前提で話進めようとしてない?
いや、まぁもうボッチでいいけどさ。マジで友達いないし。
「言っちゃいけないなら、別に言わなくても……」
正直、友達いるいないにかかわらず、何があったのか聞かない方が良さげな感じするんだが。
だって、左手無くなってるんだよ? 今日会ったばかりの俺に軽く話せるような内容じゃないだろ。下手したらトラウマもんだぜ? むしろ聞きたくないまである。
「いえ、紫苑ちゃんが信頼しているみたいだし」
え、話すの? マジで?
そうなると、俺も真面目に聞かなくてはならない。
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