異世界学園系乙女ゲーヒロインに転生したけど浮気とか絶対無理なんで、逆ハールートは断固拒否します!!!

めがねこ

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第六話:女神様のお告げ

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 なぜ一目見ただけで、この人が女神様だと分かったのか。
 それは、今世で私は生まれた時から女神様を信仰する教会の孤児院で育ち、彼女の姿が伝承や絵画と同じだったからだ。

 虹色の長髪と虹彩は、まるでダイヤモンドのように光を放ち、色彩はゆらゆらと変わり続けるホログラムのよう。
 この世のどんな宝石よりも美しく、ただ見つめているだけで心を奪われる。

 透き通るように白い粉雪のような肌。純白のローブ。
 ただ、聖書や伝承、絵画に記されているような、女性的特徴は見当たらない。
 その身体は小学生ほどの身長で、凹凸のない子どものような体型。
 顔立ちも幼さが残っているのに、瞳だけが老女のような深い静けさと、無償の愛をたたえていた。

「初めまして、我が愛し子よ。」

 桜色の唇から、鈴の音のような声が転がる。

「先ほどは、そなたが我が世界に来てからの前世の様子を見せたのだ。」

 そう言って、女神様が右手を掲げると、宙に映像が浮かび上がった。
 そこには、私の母が優しそうな男性と寄り添いながら泣いている姿があった。

「あれが、そなたの母と、その恋人だ。そなたが前世の世界で天に召してから彼女は長らく塞ぎ込んでいたが、彼の支えもあり、そろそろ回復するだろう。安心なされ。」

 女神様が手を下ろすと、映像はすっと消えた。

「…じゃあ、私はもう、戻れないんですか?」

 震える声で問いかける。
 いくらこちらの世界で十八年生きてきたとはいえ、前世の母の姿を見せられて、戻りたい気持ちがなくなるはずがない。

「残念ながら、あちらの世界でのそなたの運命は既に決まっておった。それにそなたの肉体と魂は離れて久しい。我には、人の子の運命は変えられぬ。」

 女神様は痛ましげに瞳を伏せた。

「…さぞ、辛かったであろう。」

 そう優しく囁かれると、堪えていたものが一気に決壊した。
 涙が止まらず、私はその場でしゃがみこみ、子どものように泣き叫んだ。

「うわあああああん!!」

 嗚咽が止まらない。
 すると、女神様はゆっくりと歩み寄ってきて、何の躊躇もなく私を抱きしめた。

「我はこの世界の管理を任された存在。本来なら、どんな姿にもなれるし、奇跡だって起こせるのだ。…制約はあるがな。」

 女神様はそう言いながら、自分の腕を見下ろした。

「だが、我はまだ未熟。そなたに力を分け与えたことで、しばらくは大きな奇跡も使えなくなった。」

「じゃあ……その、女神様が子どもの姿なのは、力が減っているから?」

 涙を拭きながらそう聞くと、女神様はふっと笑った。

「その通り。この姿も仮初のもの。そなたが認識しやすいように、人の子の姿に合わせたまでだ。」

 そして、女神様は私をじっと見つめ、真剣な声で言った。

「そなたがなぜ転生したのか、この世界がなぜ前世の『おとめげえむ』の世界に似ているのか、その訳を話してやろう。」

 そう言って、女神様は語り始めた。



 ✦✦✦

 この世には、星の数ほどの世界が存在しておる。
 我のような存在もまた無数におるのだ。
 人の子らに「神」と呼ばれる、高次元の者たちじゃな。

 我は、その幾多ある世界のひとつを管理するため、創設者様の手により生を受けた。
 創設者様が定めた秩序と規律に従い、この世界を見守ることこそ、我に課せられた使命。

 しかし、何故かこの世界で、そなたの前世で言うところの「ばぐ」のようなものが現れ始めた。
 そなたも知っておるであろう。
 初代の癒しの乙女が戦うことになった、正体不明の「闇」の呪いのことだ。

 この脅威に対抗するため、我は女神の姿で人々の前に現れ、一人の少女に我が力を分け与えた。
 それが「癒しの乙女」の始まりなのだ。

 しかし…それから幾星霜いくせいそう、我の力は次第に弱まり、逆に闇の力はなおも増しておる。
 創設者様に助けを請いたくとも、あのお方はあまりに気まぐれ。
 そなたに説明するのも難しいが、そういう存在なのだ。
 我もどうにも手が打てぬまま、ここに至っておる。

 そして、そなたの転生について。
 人の魂というものは成熟するまで何度も生まれ変わる。
 時に同じ世界で、時にまったく異なる世界で。
 その流れの中で、偶然にも、そなたの転生先が前世で「おとめげえむ」として作られた「るみくろ」と酷似したこの世界であった。

 …正直に言えば、我も驚いておる。
 こんなことは、我が存在する限り初めてのことだ。

 だが、忘れるでない。
 この世界は「げえむ」ではない。
 分かりやすい選択肢なんぞ無いし、やり直しも、「せーぶ」もできぬ。
 全ては現実であり、選択の重みはそのまま、そなたの命運を左右する。

 だからこそ、我はそなたという異質な存在を癒しの乙女として選んだのだ。
 そなたに我の力の一部を分け与え、手を差し伸べたいと、そう思ったのだ。

 ✦✦✦



「だが、力の尽きかけた今の我にできるのは、こうして夢に現れ助言をすることぐらい。先ほどの映像を見せるだけでも相当な力を消費してしまった。しばらくは休まねばならぬ。」

 そう言うと、女神様の姿はどんどん薄くなっていった。

「さらばだ、我が愛し子よ。また会おう。」

「え、ま、待ってください女神様!」

 私は必死に手を伸ばしたが、女神様は光の粒となって消え、やがて私の意識も遠のいて行った。
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