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●若い兄妹エルフにまつわる記録 兄への「処罰」⑤
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「お願い!やめて!」
黄色い声が上がった。鈴のように高い音だが、よく通る凛とした響きは兄譲りだ。
「そんなの挿れたら、お兄ちゃんが壊れちゃう!やめて!」
先程まで双眸から流していた雫は止んでいる。丸い頬は濡れそぼり、その囀りは涙声だが、妹は兄のために戦う覚悟をしたらしい。
「主幹、雌が寂しがってますよ」
「雄は一旦吊るしといて、あっちの相手しましょうか?」
二人の役人が、やや離れた場所で部下の働きを視察している上長に指示を仰ぐ。
アリヤ主幹は軽く息を吐くと、ぐったりと項垂れている兄を一瞥し、そして大きな目で役人たちを睨みつけている妹をじっと見つめた。
「好きに……好きにすればいいわ。あんた達みたいな獣に何されたって平気よ。だから、お兄ちゃんを離して!もう十分でしょう!」
自らが獣の分際でありながら、気高き人間を獣呼ばわりするとは、なんたる罪深さか。
上司の視線につられるように、部下たちの瞳もまた、妹の方へと吸い寄せられていく。華奢ながらも兄より丸みを帯びた体つきに、柔らかそうな曲線を描く胸や腰が、薄汚れた衣の上から見て取れる。同性とはいえ男女の別など些末に思わせるような煽情的な兄の肉体も熱を誘うものだが、まだ開ききらぬ初々しい花のような妹の肢体もまた、格別に香しい。
アリヤ主幹が尖った顎で妹を指し、部下に何やら指示しようとする。
「……僕がいつ、音を上げたんだ」
主幹の声音を追い抜くように発せられたそれは、繰り返し叫びを封じ込めた喉のためにやや掠れていた。
「妹の番が来るのは、僕が拒絶した後のはずだろう……。さっき言ったばかりなのに、もう忘れてしまったのか」
細い首をのばし、兄が顔を上げる。こぼれそうに大きな瞳が浮かべているのは、敵意や恐怖などというよりも、どこか憐れみに近い色だった。
「そうだったな。思い出させてくれて礼を言うよ」
告げた後で妹から顔を背けたアリヤ主幹の唇は、いつも通りの弧を描いている。しかし優美な栗色の眉尻の脇、ぴっちりと撫でつけた髪の生え際辺りに、血管が浮きかけていることに私は気づいた。この下等な種族が恐れ多くも人間へ向けた、憐憫の気を読み取ったのだ。それはどんなに口汚い罵倒よりも、彼の心を逆撫でするものに違いなかった。
色男の上長が部下に目配せると、兄への「処罰」が再開される。無垢な蕾に硬く張り詰めた肉の切先が当てられ、役人の無骨な手が背後から伸びて、細い腰を引き寄せる。女のように自ら湿潤する機能を持ち得ない上に、潤滑の油さえ塗られていない小さな其処は、役人の青い先走りだけを頼りに巨大すぎる杭を受け入れるしかない。
「っ……、あ、あぁっ、うう、あああっ!」
役人の腰が進むにつれて、兄の叫びが増大していく。苦悶に満ちた悲鳴など意に介すことなく、王命の槍は兄の体を貫いていく。
「尻から力を抜けというのに、わからん奴だなぁ。ぎゅうぎゅう締め付けて、そんなに俺の魔羅が気に入ったか」
「は、あああっ、うぅっ……!」
空気を切り裂くような叫びが、くぐもった呻きに変化し始めた。この獣は、大声で喚くよりも歯を食いしばった方がいくらか耐えやすいことに気づいたらしい。本来ならば役人の言う通り脱力すれば楽に肉の槍を飲み込めるのだろうが、後ろを犯されるのが初めてではそんな器用なこともできないのだろう。
アリヤ主幹が、目一杯力んでいる小作りな顎を長い指で掬い上げる。
「口を開けろ」
「ぅ、はあぁ、うう……」
「聞こえているんだろ。早くしろ」
肉の棒が体内を無遠慮に侵略していくのを必死に耐え、身を裂かれるような痛みに苦悶しているエルフを無慈悲にそう急かした彼は、やっとの思いで開かれた兄の唇の間へ、その大きな手を突き入れた。小さな口内に男の指を四本も咥えさせられ、エルフの端麗な眉間に一層深い皺が寄る。主幹ははみ出た親指で、可憐な顎を不気味なほどに優しく摩った。
「歯を立てるなよ。役人の体を傷つけようものなら、王命によってお前も妹も生きたまま焼かれるぞ」
「っ、ぅ……」
「あの雌が生意気なことを抜かした罰だ。さぞ痛いだろうに歯も食いしばれないなんて、可哀想になぁ」
「……ぐ、うううっ!」
既に地獄の底へ到達していたはずの兄の眼前が、更なる闇に染まったのがわかる。閉じ合わせることの出来ない淡色の唇から、ぽたぽたと涎が落下した。
黄色い声が上がった。鈴のように高い音だが、よく通る凛とした響きは兄譲りだ。
「そんなの挿れたら、お兄ちゃんが壊れちゃう!やめて!」
先程まで双眸から流していた雫は止んでいる。丸い頬は濡れそぼり、その囀りは涙声だが、妹は兄のために戦う覚悟をしたらしい。
「主幹、雌が寂しがってますよ」
「雄は一旦吊るしといて、あっちの相手しましょうか?」
二人の役人が、やや離れた場所で部下の働きを視察している上長に指示を仰ぐ。
アリヤ主幹は軽く息を吐くと、ぐったりと項垂れている兄を一瞥し、そして大きな目で役人たちを睨みつけている妹をじっと見つめた。
「好きに……好きにすればいいわ。あんた達みたいな獣に何されたって平気よ。だから、お兄ちゃんを離して!もう十分でしょう!」
自らが獣の分際でありながら、気高き人間を獣呼ばわりするとは、なんたる罪深さか。
上司の視線につられるように、部下たちの瞳もまた、妹の方へと吸い寄せられていく。華奢ながらも兄より丸みを帯びた体つきに、柔らかそうな曲線を描く胸や腰が、薄汚れた衣の上から見て取れる。同性とはいえ男女の別など些末に思わせるような煽情的な兄の肉体も熱を誘うものだが、まだ開ききらぬ初々しい花のような妹の肢体もまた、格別に香しい。
アリヤ主幹が尖った顎で妹を指し、部下に何やら指示しようとする。
「……僕がいつ、音を上げたんだ」
主幹の声音を追い抜くように発せられたそれは、繰り返し叫びを封じ込めた喉のためにやや掠れていた。
「妹の番が来るのは、僕が拒絶した後のはずだろう……。さっき言ったばかりなのに、もう忘れてしまったのか」
細い首をのばし、兄が顔を上げる。こぼれそうに大きな瞳が浮かべているのは、敵意や恐怖などというよりも、どこか憐れみに近い色だった。
「そうだったな。思い出させてくれて礼を言うよ」
告げた後で妹から顔を背けたアリヤ主幹の唇は、いつも通りの弧を描いている。しかし優美な栗色の眉尻の脇、ぴっちりと撫でつけた髪の生え際辺りに、血管が浮きかけていることに私は気づいた。この下等な種族が恐れ多くも人間へ向けた、憐憫の気を読み取ったのだ。それはどんなに口汚い罵倒よりも、彼の心を逆撫でするものに違いなかった。
色男の上長が部下に目配せると、兄への「処罰」が再開される。無垢な蕾に硬く張り詰めた肉の切先が当てられ、役人の無骨な手が背後から伸びて、細い腰を引き寄せる。女のように自ら湿潤する機能を持ち得ない上に、潤滑の油さえ塗られていない小さな其処は、役人の青い先走りだけを頼りに巨大すぎる杭を受け入れるしかない。
「っ……、あ、あぁっ、うう、あああっ!」
役人の腰が進むにつれて、兄の叫びが増大していく。苦悶に満ちた悲鳴など意に介すことなく、王命の槍は兄の体を貫いていく。
「尻から力を抜けというのに、わからん奴だなぁ。ぎゅうぎゅう締め付けて、そんなに俺の魔羅が気に入ったか」
「は、あああっ、うぅっ……!」
空気を切り裂くような叫びが、くぐもった呻きに変化し始めた。この獣は、大声で喚くよりも歯を食いしばった方がいくらか耐えやすいことに気づいたらしい。本来ならば役人の言う通り脱力すれば楽に肉の槍を飲み込めるのだろうが、後ろを犯されるのが初めてではそんな器用なこともできないのだろう。
アリヤ主幹が、目一杯力んでいる小作りな顎を長い指で掬い上げる。
「口を開けろ」
「ぅ、はあぁ、うう……」
「聞こえているんだろ。早くしろ」
肉の棒が体内を無遠慮に侵略していくのを必死に耐え、身を裂かれるような痛みに苦悶しているエルフを無慈悲にそう急かした彼は、やっとの思いで開かれた兄の唇の間へ、その大きな手を突き入れた。小さな口内に男の指を四本も咥えさせられ、エルフの端麗な眉間に一層深い皺が寄る。主幹ははみ出た親指で、可憐な顎を不気味なほどに優しく摩った。
「歯を立てるなよ。役人の体を傷つけようものなら、王命によってお前も妹も生きたまま焼かれるぞ」
「っ、ぅ……」
「あの雌が生意気なことを抜かした罰だ。さぞ痛いだろうに歯も食いしばれないなんて、可哀想になぁ」
「……ぐ、うううっ!」
既に地獄の底へ到達していたはずの兄の眼前が、更なる闇に染まったのがわかる。閉じ合わせることの出来ない淡色の唇から、ぽたぽたと涎が落下した。
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