上 下
91 / 119
第1章 王都編

第91話 白金貨での私刑依頼

しおりを挟む
 ギルドに寄る前に改めて皆の予備装備を揃えに行く。
 特に先輩の盾は代わりが無く困る。剣や槍は何とでもなるが、大盾は無理だ。
 ついでにクラシス姉のビキニアーマーもオーダーしていた。

 マリニアとスニシスも何かを頼んでいたが、この2日の稼ぎが全て飛んだ。

 まあ、必要経費だ。

 帰宅すると早速子供達が今日の仕事振りをアピールしてきた。
 勿論草刈りだ。

「す、すごいな。かなりスッキリしてきたじゃないか!」

 子供達の頭をわっしわっしと強く撫でてやるとドヤ顔でVサインしていたが、執事長が面倒を見てくれていた。

 どこをやるのか指示をすれば、昼過ぎには終わったと報告に来るのでその後、子供達は遊んでいるのだとか。

 夕食まで少しあるので、子供達と遊ぶ時間にしている。

 まだこの館に来てから日数は対して経過していないが、子供達の相手をし、マリニア達と風呂に入る。
 お互い一切隠さずに入っているが、不思議な事に恥ずかしさは微塵もない。

 子供達を洗ったりするのにてんやわんやで、おっぱいぷるるんなのが目に入っても何も感じない。
 背中を洗い合ったりするが、流石に前は意識してしまうから止めている。

 風呂の後はソシアとヤーナが子供達に読み聞かせをしているが、俺はメイド長と執事長と話をする時間にしている。

 俺の1番の心配は俺は性奴隷として蹂躙されていた者達だ。
 当人達は娼婦として働くか、俺の慰み物になるのだと覚悟を決めていたようだ。
 まだ俺との面談は時期尚早だろうが、子供達とは接する事が出来るのだとか。
 執事長の目下の心配は資金だ。
 渡したお金は減る一方だが、俺の稼ぎがどれ位か伝える事で安堵している。
 パーティーで話し合い、稼ぎの半分を館に入れたり、今日のように装備代にするようにした。

 メイド長の心配は部屋数の不足だ。
 館の規模と人数が合わない。
 冒険者たる俺達の衣食住が最優先とする為、他の者の食事の時間をコントロールしているが、1度に食べられる人数が限られている。
 幸い敷地だけは広い。 
 今後人数を減らさないなら部屋の不足を考えないといけなくなった。

 うーん・・・頭が痛い。
 おかしい・・・勤勉さはサンタナのパーティーに置いてきたはずなのに、早朝から寝る時間になってからも馬車馬の如く皆の為に必死に働いている。
 
 追放されてからは面倒事から逃げたくて辺境の町に逃げたのに・・・
 
 で、様々な理由で今は断れないのもあり、国王からの依頼をこなしている最中だ。
 
 ・・・

 子供達が寝静まり、ヤーナと俺が眠った頃ドアの下にメモがそっと差し込まれ、それを見たソシアに起こされたのが事の始まりだ。

 「もう寝やしたと思いましたのに」
 
「よく言うな。あいつを引き込んだのはお前か?」

「驚きやした。まだ抱いていないのでしょう。余り女に恥をかかせるもんじゃありやせんぜ。後が面倒でいけやせん」

「実経験からか?」

「ふふふ。これは余計なお世話でやしたね。彼女達は元々あっしら側でして、偶々旦那のところに行っただけでやす。これだけは誓って偶々でやす」

「これだけはね。で、今回は?」

「おいおい。第1王子とはどういう事だ?余り関わり合いたくない手合だが」

「この国の事情に精通しなさ過ぎですぜ。この王子の所為で戦争が起き、しかも負け戦になるのは必須でやして、愚者として王位継承権は2位、第2王子が1位。敵国に情報を流し、更に引き込もうとしている事が露見しやした。国王陛下と第2王子を暗殺する計画も露見しておりやす。しかし、糾弾して処刑しやすと隣国がここぞとばかりに攻め入るのが必至とかでやして、暗殺と言うのが負け戦を防ぐ手段とかでやして、依頼主は国王夫妻でやす」

「俺がやらなければこの国自体が滅ぶか。殺らなきゃあいつらを守れないのか・・・」

 情報屋は硬貨を投げてきたが、流石に俺も目を丸くした。

 プラチナである白金貨だ。
 プラチナはこの世界では極めて希少で、かなり高価な魔導具の作成に欠かせない。
 大きさはCD程の大きさで、俺も初めて見る。
 大金貨1枚=金貨100枚
 白金貨1枚=白金貨100枚
 一般家庭の100年分の年収だ。

 現代日本だと3~6億円と言えばその価値が分かるだろうか。
 細かく砕いて売ってもそれ位の価値になるのだ。

「まじかよ」

「あっしも驚きやしたぜ」

「断ったらどうなる?」

「口封じに刺客が送り込まれるので、今晩にも他国に向かって逃げ出すしかなくなりやすぜ」

「ったく面倒なのを持ってきやがって」

 俺は白金貨を投げた。

「大金貨に両替しといてくれ」

「気を付けて」

「丁度良い。館が手狭でな。屋敷を建てる資金にするさ」
 
 ・・・

 そうして今はその王子の寝室の外にいるのだが、今は待ちだ。
 女とやりながら暗殺の手筈をしていた。
 その女が美人の暗殺者のようで、国王をたぶらかせて陰部に仕込んだ毒でやったら死ぬようにし、死に様はかなり情けなくするとか言っている。
 第2王子は別の刺客により国葬中に飲み物に入れた毒で始末するとか。
 それはもう露見しているんだがな。

 十中八九敵国が送り込んだ協力者だ。
 メイドに扮して接近するとか。
 で、10分位して果てた後その女が出て行ったので、更に数分待って窓から侵入し、結界を張った。
 これで音は聞こえないだろう。

 念の為スリープで眠らせ、魔法の痕跡を消す魔導具にて使用した魔素を回収。
 鑑定の結果間違いなく当人であり、偽装されているが赤文字だった。
 結界を脳中に使い、グチャグチャにする。
 完全に寝ている時に突然死したかのように見え、明日の朝起きてこないし、呼んでも出てこないからと部屋に入った者が発見するだろう。

 窓から出て、そっと鍵を内側から掛ける。
 ちょっとした小道具で出来るのだ。足場に乗っているから、屋根に何かが触れると作動するトラップを回避しているから、密室だ。
 だから病死とされるし、あの女の目も誤魔化せるだろう。
 警備をここだけ薄くはしているのだろうが、実に簡単な仕事だった。

 そうして俺は私刑を終え、再び夜の闇へと消えるのであった。
しおりを挟む

処理中です...