盾の間違った使い方

KeyBow

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第43話 高コストな足場

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 聖水による「外部洗浄テスト」を終え、俺は予備のワークウェアに着替えた。
 股間の「濡れ衣」が解消され、拠点内には聖水で洗ったタオルの清々しい匂いが漂っている。雫ちゃんも自分の服を洗い終え、ようやく人心地ついた表情だ。
「……さて。インフラ(水)の目処が立ったところで、俺もレベル20の『レベルアップ・ボーナス』を確定させるぞ」
 俺は空中に浮かぶメニュー画面を操作した。
 この世界のシステムなのか、俺だけなのか分からないが、レベル20といった節目にポイント消費なしで「初級の属性魔法」を一つ習得できる。俺は迷わず『土魔法(初級)』を選択した。脳内に土の重みと、それを固定する感覚がインストールされる。   
「土魔法、ですか? 佐東さん、どう使うんですか?」   

「俺のガタが来始めた膝と腰で、君を守り抜くための『足場』を作るんだ」 
 俺は拠点の岩場に向き直り、コマンドを意識した。
「『土生成(クリエイト・アース)』」
 ゴゴゴ……と鈍い音を立てて、地面から四角い土の塊が、階段のようにせり出してきた。俺はその足場をタタッと駆け上がる。
「わあ、すご……あ、あれ!?」
 雫ちゃんが声を上げた瞬間、俺の足元にあった土の塊が、砂となってサラサラと崩れ去った。発動から、わずか十秒ほどだった。
「……なるほど。維持時間は十秒か。かなり短いな」
 俺は自分のステータス画面を確認して、さらに眉をひそめた。
「……おいおい、魔力(MP)が一気に10も減っているぞ。さっき二つ作ったから、合計で20消費だ」
「10……!? 私の聖水はバケツ一杯で1なのに、ずいぶん燃費が悪いんですね……」
「ああ。俺のは後付けのスキル、いわば『外付けの重いアプリ』みたいなものだからな。雫ちゃんのネイティブな魔法とは負荷が違うんだろう」
 俺は腕を組み、計算を始めた。
 俺の最大魔力は120。一回の足場生成で10消費ということは、連続して作れるのは12個までだ。しかも十秒で消えるとなれば、のんびりと階段を作って登るような使い方はできない。
「……使い所を考えないといけないな。敵の攻撃を回避する一瞬の跳躍や、崖を飛び越える際の中継地点として、ピンポイントで『打ち込む』ような運用になる。……アクロバティックに動くための、文字通りの『瞬間的な足場』だ」
「十秒だけなんて、なんだか綱渡りみたいで怖いです……」
「その緊張感が、生存本能(アドレナリン)を呼び覚ましてくれるさ。……さて、雫ちゃん。検証はここまでだ。水はある、足場も作れる。次は……この聖水をお湯にして、一ヶ月ぶりの『全身清拭』といきたい。雫ちゃんには1日振りか。で、カセットコンロをポチるよ」
「はい! お湯、楽しみです!」
 高コストで短命な土の足場。だが、品証マンとしての俺は、その「制限(リミット)」すらも仕様として受け入れ、戦術に組み込む快感を感じ始めていた。
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