神の布使い

KeyBow

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第2話 魔物の襲撃

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 晃司は粗末な麻の布を纏い、腰紐をしていたのみだ。足は裸足で馬車の柵にもたれ掛けさせられており、そんな中、ふと目が覚めた。
 幸いなのは手枷や足枷がされていない事だろうか。

 殴られた為か頭が痛い。同じ馬車には身なりが悪く健康状態の悪い者達が乗っていて、皆うつろな目をしていた。
 盗賊などの粗暴の悪い感じではなく、やせ細っており貧困層のそれだ。

 訳が分からなかった。どう見てもそこにいる者達は日本人には見えないからだ。
 しかも今日は冬で長野県は白馬村に来ていたはずなのにここは真夏だ。
 それと話している会話が理解できているので、尚更混乱していた。
 拉致られた時の記憶が無いとして、俺なんか拉致っても仕方がないだろうが!とぼやきたかったが、それはさておき今の状況を把握しようとした。
 ここはどう見ても外国だが、皆日本語を話している。片言ではなく、母国語を話すように流暢にだ。
 それともビックリ番組か、中世チックな映画のエキストラにされてしまったのか?と考えが過ぎるが、それにしては馬車のくたびれ具合が生々しい。

 ただ、物凄く臭う。
 取り敢えず周りの者と話をしてみなければと声を掛ける。

「あのう、ここはどこで、何があったのでしょうか?」

「坊主、気が付いたか。坊主が何をやったか、した事にされているのかは知らないが、儂等は皆鉱山に送られるんじゃ。領主様に今年は不作で、とてもではないが税金を満額納められないからと減税をお願いしに行ったのじゃが、この有り様なのじゃよ」

「僕はよく分からないんです。冬の雪山にいた筈なのに、気が付いたら女の人の入っているお風呂で溺れていて、次に目覚めたら鎖に繋がれていたんです。訳が分からない尋問を受けたのですが、確か尋問をしていた人が、まあいいや、面倒くさいからこいつも鉱山送りにしとけ!とか言って部下に命じた後殴られたようで意識を無くしました。そして気が付いたらここにいたので、自分の身に何が起こったのかよく分からないんです。それとここはなんという国ですか?」

「自分のいる国の事もわからんのか?ここはロルモン王国で坊主が積まれたのが王都じゃ」

「そんな国の名前なんて聞いた事がありませんよ?」

「どれだけ田舎で育ったんじゃ?大陸の2大国の片割れじゃぞ!」

 そうしていると、何やら前方で騒ぎが起こり、火の玉や氷柱?が飛んでいるのが見えた。

 晃司は火の玉が飛んでいっている様子を見て、おっちゃんに聞いた。

「あ、あの火の玉は何ですか?」

「本当に田舎の出なんじゃな。火魔法じゃよ。まあ、田舎の村じゃと魔力持ちはまず見ないからのう。王都には100人位はおるのだろうが、魔法を見るのは初めてか?」

 晃司は心ここに非ずといった感じで頷くのがやっとで、ぶつぶつと呟いていた。

「なんなんだよ魔法って!確かにそれっぽいけど、ま、まさか!?ここは異世界なのか!?俺は異世界召喚でもされた?それとも迷い込んだのか?」

 呟きながらふと空を見上げると、昼間なのに明るく光る恒星が見え、月の大きさが全く違う。
 どうやら別の星にいるのだと理解した。
 北半球と南半球の見え方の違いでもないのだと愕然とした。月の見え方だが、日本で見える月を500円玉の大きさに例えると今見えているのは100円玉位の大きさだった。

 そうしていると、ドン!と音がしたかと思うと、馬車が横転し、馬車の中にいた20人程の者達は外に投げ出された。

 手脚があさっての方向に曲がっていたり、中には頭から血を流している者もいる。
 そして角の生えた大型犬やポニー程の大きさの獣?が突進してきて、気が付くのが遅れた者を串刺しにした。
 かなりの数の獣に襲われているようだ。

 ドーベルマンを少し太らせ、一回り大きいといえば、それらの獣に襲われるのがいかに怖いか分かるだろう。
 
 晃司はヒィィと唸りながらその場から逃げ出した。

 そこは草原の中で、所々木々が見える。

 獣が周りの者を襲っており、先程話をしていたおっちゃんも串刺しにされていた。

 足が痛く血も出ているので唸ったが、捕まったら最後、殺される!と恐怖感から必死に走った。小便を漏らしながら必死に死にたくないとなみだを流しながら。そしてその黒かった髪は、死の恐怖から真っ白になっていった。

 獣が背後に迫っており、林が見えるのでそちらに向かって逃げていたが、ふと突然その先がなくなった。
 崖っ淵に来たのだ。正確には急斜面の手前に来たのだ。
 角度が70度を超えており、断崖絶壁にしか見えない。その先は急斜面で、20m位下に川が見える。

 獣が晃司目掛けて突進していたが、ヒュンという音と共に獣に矢が刺さり、前のめりに崩れ落ちた。
 だが、晃司の方に向かって来る方向は変わらず、倒れた状態のまま滑走している状態で、少し勢いが落ちた程度だった。

 その獣は晃司に体当りする形になったが、幸いなのは角が刺さらなかったが、晃司はその獣もろとも斜面を川に向かって転げていったのであった。
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