神の布使い

KeyBow

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第11話 2人での共同作業

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 晃司は朝目覚めた時に一瞬パニックになった。
 白馬のホテルの自分が泊まっている部屋じゃない!と。

 そして女性に抱き付かれているので、大会中に女を連れ込んでというか、女の部屋に転がり込んでしまったと一瞬思った。
 やばい!不純異性交遊がバレると流石にオリンピック出場に影響が出るか?と。

 しかしこの誰か?とエッチな事をした記憶がない。というか、未だに童貞だ。

 やばいやばいと思っていると、その女性は目覚めたようで、寝ぼけながら抱きまくらをホールドする感じでしがみついてきた。

 意外と力があり、少し痛かった。

「い、痛いよ。そんなにしがみつかれると痛いよ」

「晃司ひゃん、ご、ごめんなさい。それと、約束を守ってくれてありがとうございます」 

「あれ?君誰?」

「えっ?ラミィですよ・・・」

「ラミィ…あっ!ご、ごめん。寝ぼけていたよ。おはよう。よく寝られた?」

「はい!お陰様で柔らかい布団でしたから。晃司ひゃんは泥のように寝ていたよね?」

「うん。もう少しきちんと話すよ」

 そこから詳しく何が有ったのかや、別の世界から来ている事、魔法なんて無かったし魔物もいない。
 そんな別世界から来ている事から常識が違うはずである事を伝えた。

 ここが何処かも地理等も全て分からない。
 ただ、ここが自分が召喚された王都だとは分かったが、手配書が回っている以上、これから他の町に拠点を変える事のリスクと王都に残る事のリスクを比べるとどちらが高いかを考えた。
 だが、もしも鉱山送りになっている事が解った場合、今このタイミングで王都にいるはずがない。
 尋問された時に名前を聞かれたが、名字のみ名乗った。
 だが、冒険者としては晃司と名乗り、登録も足が付かないようにしていた。

 ただ、自分がよりによって王都に戻っていたのだという事に気が付いた時には既に手配書が出回っており、受付嬢の話からすると、これから他の町に移るのは目立つので避けるが、正体は隠して欲しいとお願いした。
 ただ、賞金首ではなく、王城に連れていけば謝礼が出るというのが気になる。
 悪意からか否かが分からないから、真意が分かる迄はと伝えた。

「それであの魔力と強さなんだね!分かったよ!勿論内緒にするよ!」

 ラミィはあっさりと受け入れてくれた。しかも信じてくれたのだ。

 それは別として稼がないと生きていけないから、今日から頑張ろう!となった。

 顔を洗って部屋に戻ったが、丁度ラミィが着替えをしていて下着姿だった。

 慌てて後ろを向いた。

「ご、ごめん。着替えているなんて思わなくて。部屋の外で待っているよ」

「晃司、待って。別に見られても減るものじゃないし、ただの着替えよ?何を慌てているの?晃司も早く着替えたら?」

 恥ずかしがりながら晃司は着替えたが、ラミィは変な人と呟いていた。

 朝食を食べながら、改めて着替えをしている所を見てしまったと謝ったが、一蹴されてしまった。

 貴族は別だが、少なくともこの国では冒険者は湯浴み場は別だが、着替えとかは普通に異性の前でするが、イヤらしい目で見ないのが普通だといい、倫理観が違うようだねと言われた。

 晃司の話は、はあ!?といった感じでスルーされていた。

 話が変わり、今日はどうするかとなったが、中級者向けの薬草採取の場所に1度行ってみたかったというのだ。

 ただ、そこそこ魔物が出るので、最低でも1人は戦える警戒役が必要で、今までは1人だったので断念していた。

 稼ぎは今までの3倍にはなるという。
 多少の危険が有るが、危険具合と稼ぎは基本的に比例するのだと。

 ただ、昨日のように、比較的安全と言われている初心者向けの薬草採集だったのに対処できない魔物が現れた。
 実際問題晃司がいなければラミィは自分は死んでいたと思うという。
 だからあの時の魔物がよく出ると言われる所で薬草を採集をするのも、初心者用の稼ぎの悪い所で採集するのもリスクが変わらない。
 ならば稼ぎの多い方が良いなとなった。

 ラミィの話に一理あるなと思い、晃司は了承した。

 採取依頼はギルドでは随時依頼という形でやっているから、事後報告で良いとの事だ。

 残り物のパンを分けてもらい、それを昼食にするとラミィが言っていたので、取り敢えず従う。

 お互いの分を背嚢に入れ、宿を後にした。
 ラミィは昨日は持っていなかった弓を持っており、矢筒も背負っていた。弓といっても小さく軽いショートボウだ。

 目的地は町から1時間位の所に有り、中級ポーションの材料や、毒消しの材料になる薬草や植物の根がそこそこの値段になる。

 道中少し話をしながら進んだ。

「あのう、パーティー名のブラックローズって素敵な名前だけど、由来は有るの?」

「俺のいた世界で存在しない花なんだよ。赤が多いけど、品種改良をしても、黒色だけは作れていなくて、幻の華なんだ」

 ラミィは感心していた。

「そう言えばラミィは弓を持っているけど、腕前は?」

「多分普通の人より上手な筈ですね。一応下位のですけど、弓等の加護持ちなので。でも、腕力があまりないので遠くには飛ばせないけど、命中率は高いの!」

「じゃあ魔物が出たら俺が前に出るから、ラミィは弓で掩護かな?」

「そうなりますね。そろそろ道を外れますね!」

 道を外れてから10分程で林に着いた。
 この林の周りに目的の薬草がそれなりに有るとの事だ。
 だが、時折林から魔物が出て来てしまい、その魔物に襲われて死亡者が出る事もあるそうだ。

 警戒しつつ、ラミィが薬草をいくつか採取して、見本として見せてくれた。

「見本で持っておきますか?」

「いや、もう名前と姿が一致したからいらないよ。ありがとう」  

 晃司はスキーにのめり込んでいたから勉強をあまりしていなかったが、1度読めばその内容は頭に入る。
 だから今までの試験も1夜漬けでなんとかなってきた。

 ただ、当人はその能力が如何に凄い事なのかについて気が付いていなかった。

 彼が召喚されたのはその力が有るからなのだ。

 ラミィはへっ?と言った感じだったが、晃司は周辺を警戒しつつ、1番高いと言う草を次々に発見してはラミィに伝え、それをラミィが採っていた。
 探しては採るのを繰り返すので本来は効率が悪いのだが、ラミィが採ってしまっている間に晃司が次を見つけているので逆に効率が良くなっていた。

 いつの間にか晃司の指示でラミィが採るになっていた。

 午前中はあっという間に終わったが、想定の倍以上の量が取れておりラミィは興奮気味だったが、お互いお礼を言い合っていた。

「晃司、凄いよ!晃司がサクサク見つけてくれるから、もう2万Gになるはずよ!」 

「俺の方こそごめんね。ラミィにばかり採らせていて」

「うんうん。もしここが安全な所で警戒が必要なくても私じゃこれだけを見つけるのは無理よ!だから気にしないで!」

 最初は交代交代で見張りと採取をしようとなっていたが、作戦変更になった。

「今更だけど、晃司が見付け私が採るに変更ね」

 今更といいつつラミィがやり方を変更すると言ってきたからだ。

 午前中は一度ホーンラビットが一匹出ただけだった。晃司が振るった剣で叩きつけられてあっさりたおされていたが。

 昼なので、林から少し離れた所でパンを出して食べていた。

 晃司はラミィの手を取り、マッサージをしていた。

 彼女の手はタコが出来ていて、肌は荒れていた。
 毎日のように薬草を採っていたからか、小さい体に似合わずそれなりに握力があり、日本の女の子の手とは違うんだなと晃司は感じた。
 だがラミィは恥ずかしがっていた。  

「こ、晃司、私の手は滑らかじゃないから、その、恥ずかしいな」

「働き者の良い手じゃないか。俺にはこうやって癒やす事しかできないから、せめてこれ位はさせてよ」

 そうやってお互いを尊敬し合い、昼を過ごしていくのだった。
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