ざまぁから始まるモブの成り上がり！〜現実とゲームは違うのだよ！〜

第１章

第23話 依頼達成

　俺は町に帰る途中でレイラに聞いた。

「なあレイラ、薄々いや、もう俺が何者か確信しているんだろう？」

「急にどうしたの？」

「今後の事もあるから、ちゃんと話しておかなきゃなって思ってさ。今の認識を聞きたかったんだ。レイラと一緒にいるお陰でなんとかなっているけど、今のままではそれも限界だと感じたんだ」

「トニーはこの世界の人ではないわよね？」

「どうしてそう思うの？」

「もしかして隠しているつもりなの？」　

「えっ？」

「トニーはわかりやすいのよ。今の反応はそうですって言っているのと同じよ。私は異世界人と出会うと予言されたの。だからあの日ギルドにいる誰かは異世界人だと分かっていたの。それでトニーの能力が尖っていて、余りにも周りと掛け離れているから直ぐに分かったわ。でもね、信頼の置ける人かどうかは別なのよ。だから見極めていたの」

「そんなに早くにバレていたのか」

「やっぱり異世界人なのね。駄目よ。こんなにあっさりと誘導尋問に引っ掛かっては。異世界人と会う予言は嘘よ。あの時トニーを平手打ちにした時に違和感が有ったの。
　何というのかな、波長が違ったの。今は他の人と区別が付かないけど、明らかに異物感を感じたのよ。だから観察していたの。行動や言葉の節々に異世界人の徴候が見受けられたのよ」

「なあレイラ。全てを話すから俺が生きるのに力を貸してくれないか？既に周りに力を見せてしまったから、こっそりとかひっそりとってのはもう無理だから。異世界人と知られる人を最小限にしたい。お願いできないかな？」

「勿論そのつもりよ。トニーが話してくれるなら、私も予言の一部以外は話すわ。心配しないで。異世界人を始末する人とかじゃないから。私は味方よ」

　トニーは包み隠さずに話した。
　何故体力が無いのかや、常識が違うのか、ゲームの事は説明が難しかったので、今となってはと前置きをしてこの世界に送り込む者を選別していて、別の試験の合格者を送り込んだと。その試験は魔法に近いけど違うが、魔法と考えてとし、魔法で作られた仮想空間でボスに止めを刺した者が勝者だったと。10年は遊んで暮らせるお金を賞金にしていたと、自分は隠れており、ラストアタックをする機会を伺い、別の者がラストアタックを決める2秒前に横取りして倒したと。だから本当は別の奴が来る筈だったと。

　レイラは少し考えた。

「トニー、卑屈にならないで。己を知り、戦略を立てて実行した。貴方は選ばれるべくして選ばれたのよ。横取りされた者が甘いのよ。トニーはルールを破ったの？破ったのではないのならば、胸を張って勝者を名乗りなさい。もしもその行動が相応しくなければ神がその者を寄越した筈よ。それに貴方以外だと既に死んでいると思うの。この世界はね甘くないのよ。ビクビクして慎重に動く位の事が必要よ」

「その、何故そのように手の混んだ事をしたのか分からないんだ。気が付いたら草原でインプに襲われていたんだ」

「私も一つ条件が有るの」

「な、な、なんだろう？」

「貴方の奥さんにして」

「へっ？」

「相変わらずね。うふふ。冗談よ。私を剣姫にして欲しいの。導いて欲しいの。ただそれだけよ」

　俺は手を差し出した。

　レイラは分からなかったようだ。

「向こうの世界の仲間に対する挨拶だよ。共に生きよう！と言うのに宜しく！といった感じたよ。握って」

　２人はがっしりと握手をした。

「トニーは私を襲わないわよね？」

「ああ。誓う」

「うん。じゃあ、やっぱり君は私の部屋に泊まりなさい」

「へっ？」

「ちゃんとベットが２つあるし、もし私を犯したら首を食い千切ってでも殺すから」

「わ、分かった。宜しくな」

「素直で宜しい。ギルドマスターには私が話すから、トニーは黙っていて。よしよし。そろそろ町に戻ってお昼を食べに行きましょう！」

　そうして俺は改めて命を預ける事の出来る仲間を得た。

　その後は時折ヒールを掛けながら町に戻ったが、やはりお昼の時間だったので、お昼を食べてからギルドに向かう事になったが、トニーはレイラの事がよく分からなかった。冗談なのか、本気なのかよく分からないが、一つ言えるのは、彼女の協力無しにこの世界で立ち回れる自信が無い事、一人だと変に権力者に目をつけられたりして、気が付いたらぶすりとやられるんだろうなと。

　トニーは早く宿にてじっくりとステータスを考察したいな！と思うのであった。