ざまぁから始まるモブの成り上がり！〜現実とゲームは違うのだよ！〜

第１章

第66話 手立てはあるが

　翌朝大変な事になっていた。
　幼稚園児にはよく有る朝のあれだ！
　そう、おねしょだ・・・

　漸く仮で門を復旧させる事が出来たが、まだ完全ではないので町の駐屯兵が門を守っていた。一部のオークは逃げ果せたかもだが、基本的に駆逐が完了したのでギルドマスターは門から離れ、収束宣言を出すように領主に伝えに来ており、それが終わるとトニーの所に来た。

　その様子を見てショックを受けていた。

「トニー君に何が起こったの？」

「オークキングを倒した後に異変が起こって、時間と共に酷くなっていて、どうも子供の頃に戻ってしまっているの」

「ウーン・・・呪われちゃったようだね・・・」

「元に戻せないのですか？」

「困ったにゃー・・・。トニー君は解呪を使えるにゃ！でも、正気に戻らにゃいと無理ニャ・・・困ったにゃ。折角解呪を使えるのに、今のままだと無理にゃ」

「解呪はどうやったら使えるのですか？」

「闇魔法のレベルが10にならないと無理だにゃ」

「私が覚えましょうか？」

「アイハ君には無理ニャ。アイハ君のジョブはレベルが10迄行けるのは風だけにゃ」

　皆項垂れた。
　そこに、目の前に解決する手段が有るのだが、手が届かない。

　つまりこんな感じだ。
　会社のパソコンが故障して立ち上がらなくなった。そのパソコンにしかインストールされていないアプリを使わないと業務に支障が出る。しかし、他のパソコンにインストールする為のマニュアルが印刷されておらず、その壊れたパソコンにしか保存されていない。故障したパソコンの修理方法がそのパソコンの内部にしかない。よくあるパターンだ。

　ひょっとしたら運が良ければ何かの節に一時的に正気に戻るかも？となった。

　トニーに魔法の事を教えるも、ステータスを彼は見る事が何故かできなかった。ストレージも開かない。幸い前回のダンジョンクリアの報酬はアイハもレイラも己のストレージに入れているから、当面お金には困らない。

　アイハが必死になり、解呪発動などを声に出させたりしたが、現れない。
　王都にいる闇魔法の手練はレベル9で打ち止めらしい。

　あれから一週間が経過していた。町は日常を取り戻しており、新たなダンジョンも現れる兆候もなかった。

　しかしトニーはと言うと深刻だった。
　一週間経過し、よくなる兆候どころか悪化の一途を辿っていた。ジュータスクの打った手が完全に嵌っていたのだ。幸いトニーの剣とは別に仕込んでいた事が生きてきた。

　スラナシスカは有能だが、全知全能ではない。トニーの件でジュータスクを徹底的にマークしていたが、過去の事にまで遡れない。

　スラナシスカは別の部署の者だ。内部の不正を取り締まる部署からこの転移に関わる部署内の、内部告白から派遣されていた。

　現状打つ手がなかった。
　だが、上司のタミースの許可を得て1つ下界に干渉をする事にした。些細な事だ。ガッツリ系の干渉は許されていないが、ちょっとした事は出来る。その手とは・・・ある者に、その手をそうとは分からぬように伝えていた。しかし、伝えられた者は神託だと分かっていた。

　そしてトニーが伏せって、自力で歩けない程にまで衰弱した頃、王都よりシスティーナがトニーの所に訪れた。それも僅かな供回りのみを引き連れて。

　領主はオロオロしていた。領主が国王に異変について書簡にて報告をさせていたのだが、そこに解決の立役者が呪いに倒れた旨があり、慌ててシスティーナを派遣した、もとい、システィーナが国王に一言従姉妹のレイラに会いに行くと伝えて出ていったのだ。だが、客人に会いに来たと聞いて胸を撫で下ろしていた。

　そしてシスティーナはレイラと数年振りに再開した。

「トニー君に会わせなさい。私は彼を救いに来たの。彼は異分子。この世界の理から外れた存在。だから近いうちに再び合う必要が有って、貴女に王都に来るようトニー君に託したのだけど、これは予想外だったわ」

「お姉さま。どうしてそれを？」

「女神様より時折神託が降りるのよ。今回はこれね。詳しい人には聞いたけど、下手をすれば死ぬ薬だそうよ。でも何もしなければ一週間持たないわよ。これを飲ませるか否かは貴女が決めなさい」

「どうすれば良いの？」

「貴女が自分で決めなさい」

「違うの。やり方を聞いているの。やると決めたわ」

「この薬は覚醒剤と言う阿片よりも強力な麻薬だそうよ。副作用に暫く苦しむし、恨まれるかもなの。これで一時的に正気に戻し、解呪をさせるのだそうよ。ただ、劇薬でもあるから、体が耐えられないかもなの」

「私が飲ませるわ。アイハ、良いわね！」

「勿論よ。もう見ていられないわ」

　そうしてどうやって薬を飲ませるかについて、話し合うのであった。