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第47話 ポーションを飲ませる男は酷いそうだ
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街に到着すると、エルフの誉れの面々は崩れ落ちるようにその場にへたり込んだ。すでに体力の限界だったのだろう。まともに動けるのはたった二人だけ。そのうちの一人は、どこにそんな力があるのかと疑いたくなるほど細い体なのに仲間を背負っていた。
「大丈夫なの?」とアルが尋ねると、彼女は小さく微笑み、「慣れてるから」とだけ答えた。
それ以上の会話は不要だった。彼女たちの実力を考えれば、この言葉がただの強がりでないことは明らかだった。
そのまま、アイシャ以外のメンバーは治療院へ運ばれることとなった。
付き添いとして、リリィとアイリスが残る。一方、サラ、アイシャ、アルの三人はギルドへ向かい、今回の異常事態について報告することになった。
本来、このエリアに出現する魔物は精々Dランクが年に数回討伐される程度だ。ところが、実際には Bランクのオルトロスが2体、それに単体ではC寄りとは言え、Bランクであるヘルハウンドの群れが出現した。
これだけでも異常事態だが、問題はそれだけではない。
【エルフの誉れ】は、今のこの街で連絡の取れる最大戦力に近いパーティーであるにもかかわらず、ほぼ全滅しかけた。
ギルドとしても、決して看過できない事態だった。
ギルドに到着すると、彼らを迎えたのは受付のエミリーだった。
「えっ?」
エミリーの目が驚きに見開かれる。
アイシャが怪我をしていること、そしてアルが彼女の肩を支えていること。
その二つに驚いたのだ。
「とにかく、副ギルドマスターのところへ!」
慌ただしく案内される。ちなみに、ギルドマスターは現在、王都へ出張中だった。
ギルドの奥へと案内される前に、エミリーはどこからか体力回復ポーションを手にして戻ってきた。そして、それをアイシャに差し出す。
「これを飲んでおいてください。話し合いは長引くかもしれませんし、少しでも回復しておいたほうが・・・」
アイシャは渋い顔をする。
「どうしたんですか?」
アルが疑問に思い尋ねると、アイシャは複雑な表情を浮かべながら、少し言い淀んだ後に答えた。
「うむ、その……寝れば回復するから、別に飲まなくてもよいだろ?」
エミリーが持ってきたポーションを見つめながら、目を逸らす。その反応にアルは首を傾げた。
「もしかして、そのポーション、まずいんですか?」
「泣く子も黙るほど、激マズだ・・・」
即答だった。
横ではサラがふらふらとよろめいている。
「ほら、アイシャさん。そんなこと言ってる場合じゃないでしょう?さっきまでのカッコ良いお姉さんはどこに行ったんですか!」
アルの一言の後エミリーが説得を続けるが、アイシャはなおも渋る。しかし、サラの様子を見てついに観念し、無言でポーションを受け取ると・・・一気に喉へ流し込んだ。
「・・・」
ゴクリ、と音が鳴る。
次の瞬間。
「~~~~~っ!!!」
アイシャの顔が歪み、全身が震える。そして、ゴクリと飲み込んだ後、まるで恨みでも抱いたかのようにアルを睨みつけた。
「君はひどい男だな。女にこれを飲ませるとは・・・」
「いや、俺が飲ませたわけじゃないんですけど!?エミリーさんだと思いますよ・・・」
アルが慌てて弁解するが、アイシャの視線は冷たい。
そのやり取りの最中、治療院へ行っていたエルフの誉れの一人が戻ってきた。
「アイシャ、いい年して子供みたいなことを言うのはやめましょうよ」
彼女は呆れたようにため息をつく。
「でも、本当にまずいんだぞ、あれ」
「知ってます。でも、効果は抜群なんですから、諦めてください」
アイシャは再び苦い顔をしながらも、仕方なく体を伸ばした。そして、ギルドの奥へ向かう準備を整えるのだった。
「大丈夫なの?」とアルが尋ねると、彼女は小さく微笑み、「慣れてるから」とだけ答えた。
それ以上の会話は不要だった。彼女たちの実力を考えれば、この言葉がただの強がりでないことは明らかだった。
そのまま、アイシャ以外のメンバーは治療院へ運ばれることとなった。
付き添いとして、リリィとアイリスが残る。一方、サラ、アイシャ、アルの三人はギルドへ向かい、今回の異常事態について報告することになった。
本来、このエリアに出現する魔物は精々Dランクが年に数回討伐される程度だ。ところが、実際には Bランクのオルトロスが2体、それに単体ではC寄りとは言え、Bランクであるヘルハウンドの群れが出現した。
これだけでも異常事態だが、問題はそれだけではない。
【エルフの誉れ】は、今のこの街で連絡の取れる最大戦力に近いパーティーであるにもかかわらず、ほぼ全滅しかけた。
ギルドとしても、決して看過できない事態だった。
ギルドに到着すると、彼らを迎えたのは受付のエミリーだった。
「えっ?」
エミリーの目が驚きに見開かれる。
アイシャが怪我をしていること、そしてアルが彼女の肩を支えていること。
その二つに驚いたのだ。
「とにかく、副ギルドマスターのところへ!」
慌ただしく案内される。ちなみに、ギルドマスターは現在、王都へ出張中だった。
ギルドの奥へと案内される前に、エミリーはどこからか体力回復ポーションを手にして戻ってきた。そして、それをアイシャに差し出す。
「これを飲んでおいてください。話し合いは長引くかもしれませんし、少しでも回復しておいたほうが・・・」
アイシャは渋い顔をする。
「どうしたんですか?」
アルが疑問に思い尋ねると、アイシャは複雑な表情を浮かべながら、少し言い淀んだ後に答えた。
「うむ、その……寝れば回復するから、別に飲まなくてもよいだろ?」
エミリーが持ってきたポーションを見つめながら、目を逸らす。その反応にアルは首を傾げた。
「もしかして、そのポーション、まずいんですか?」
「泣く子も黙るほど、激マズだ・・・」
即答だった。
横ではサラがふらふらとよろめいている。
「ほら、アイシャさん。そんなこと言ってる場合じゃないでしょう?さっきまでのカッコ良いお姉さんはどこに行ったんですか!」
アルの一言の後エミリーが説得を続けるが、アイシャはなおも渋る。しかし、サラの様子を見てついに観念し、無言でポーションを受け取ると・・・一気に喉へ流し込んだ。
「・・・」
ゴクリ、と音が鳴る。
次の瞬間。
「~~~~~っ!!!」
アイシャの顔が歪み、全身が震える。そして、ゴクリと飲み込んだ後、まるで恨みでも抱いたかのようにアルを睨みつけた。
「君はひどい男だな。女にこれを飲ませるとは・・・」
「いや、俺が飲ませたわけじゃないんですけど!?エミリーさんだと思いますよ・・・」
アルが慌てて弁解するが、アイシャの視線は冷たい。
そのやり取りの最中、治療院へ行っていたエルフの誉れの一人が戻ってきた。
「アイシャ、いい年して子供みたいなことを言うのはやめましょうよ」
彼女は呆れたようにため息をつく。
「でも、本当にまずいんだぞ、あれ」
「知ってます。でも、効果は抜群なんですから、諦めてください」
アイシャは再び苦い顔をしながらも、仕方なく体を伸ばした。そして、ギルドの奥へ向かう準備を整えるのだった。
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