勇者はいいですって言ったよね!〜死地のダンジョンから幼馴染を救え!勇者?いらないです!僕は好きな女性を守りたいだけだから!〜

KeyBow

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第75話 怒り

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 結局ミレールはライの趣旨を理解してくれたが、当初の予定通り、明日には王都に帰る為に出発する。

 今日は念の為ライの屋敷に家族ごと泊める事になり、家族には子供達二人が誘拐され、偶々別件の事件の犯人の家を捜索していたら監禁されていた子供達が見付かったと。ミレールは二人を探していて、どうにもならない状況になり、知己のあるライを頼って来た事にするとした。

 その後領主代理の館に向かったが、子供達の事はメアリーとクラウディアに面倒を見てもらう事にし、屋敷に連れて行く事になった。

 メアリー以外はまだライの母親との関係性が出来ていないからだ。ライの母親は勿論ミーニャ達にも家柄等関係なく優しく接してくれているが、お母様と呼ぶか下の名前で呼んでいるかの違いだ。

 領主代理の館に着くと、行政の場である町庁舎隣に向かった。と行っても隣の建物だ。

 皆ライに話し掛けられなかった。怒りの形相で近寄り難かったからだ。

 地下に犯罪者を捕らえる牢屋があり、領主代理の案内でそこに向かった。

 鉄格子の作りはオーソドックスなので、時代や世界が違っても大差ないなとライは感じた。

「こちらでございます」

 一番奥の普段は使われない所だ。普通の牢屋の倍くらいあり、貴族を収監する為の牢屋と言う。分厚い扉を潜り、長い廊下を進んだ先だった。嫌な気分になる陰気な所だ。出来るなら二度と来たいとは思わない所だ。

「こいつか。こいつの正体を知っているのは俺のフィアンセを除き、ここにいない者はどれ位いる?」

「はい。直ぐに隔離しましたので5人だけで、既に箝口令を出しております」

「ど、どうして貴様がここにいるのだ!貴様の首級を確かにみたのだぞ!くそ、儂を誰だと思っているのだ!今直ぐに開放せぬか!」

 粗末なベッドから立ち上がり、ライの姿を見ると格子に掴まり叫んでいた。

「貴様があの子供を攫ったのか?この人でなしが!」

「ちっ!しくじりおってからに!この売女め!失敗して何故生きておるのだ!このような所に入れおって、ただで済むとは思わぬ事だ。父上に頼めば貴様なんぞあっという間に家族共々始末してくれるぞ!」

 ライは領主代理に質問をした

「カターラさん、因みにこいつはラングレイを名乗っていますが、公式のラングレイと言う人物のマーナダブルの出入りってどうなっていましたっけ?」

 ミーニャから大公家、つまり国王の弟の長男と聞いていたのと、貴族は町長に町への出入りを報告しなければならなず、例え国王でも例外なくという事を領主を押し付けられた時に国王の側近から聞かされていたので、念の為確認をしたのだ。

「はい。ラインガルド様達の帰還及びダンジョンクリアの報告会の来賓として来ていましたが、翌日には町を出ております。私が直接門にてお見送りした国王陛下一行の中にラングレイ様、つまり大公家の長子がいらっしゃった事を確認したのが最後でありますし、御本人の署名がございます」

「じゃあこの町にいない筈だな?ではこいつは何者だ?」

 カターラは冷や汗をかいていた。何をしようとしているのかが何となく分かったからだ。

「もしもラングレイ様御本人でございますればこの場にいる筈は御座いません。私か、私の不在時は必ずや代理を置いておりますのでその者かに伝える義務が有ります。ラインガルド様の所にも、入町報告はないのでございますよね?」

「ああ、この一週間の間に俺の屋敷に来た貴族はメアリーとユリカのご両親を除き、男爵家の者が一番上だし入町報告はそもそも俺の所に来ないよ。万が一来たらカターラさんの所に行くようにするよ。記録も取る事にしているけど、今まで誰一人として入町報告をしにきた者はいないな」

「はい。ではラングレイ様ご本人はこの町にはいらっしゃらない事になります。もしラングレイ様ご本にでしたら密入町となり、重大な国家反逆罪となりますな」

「ライは刀を抜いてラングレイの首筋に当て、そこから振りかぶり首を刎ねようとした」

「ライ駄目よ!」

「止めるなミーニャ。こいつは生かしておけば碌なことがない」

「違うの。ミレールを刺客として差し向けたりしていたのよ。他にも何か悪巧みをしているに違いないと思うの。だから尋問をしてからにした方が良いと思うの」

「そ、そうか。確かにそうだよな」

 ライが横を向いたその瞬間にラングレイは懐に入れていたナイフを抜き、ライに体当たりをした。
 ライは油断していたが、脇腹に鋭い痛みを覚えた。

「馬鹿め!身体検査もしないからだ。儂もダンジョン生還者なのだぞ!死ね!」

 ミーニャは口を押さえて悲鳴を上げていた。そして蹲るライに止めを刺そうとしていたが、ライは咄嗟に刀を振り抜いた。弥生が刀だった時に作った刀のコピー品だ。

 見事にラングレイの首を刎ねた。
 皆啞然としていた。まさかラングレイが油断していたとはいえライに手傷を負わせる事が出来るとは誰も思わなかった。かなりの肥満体でもあるからだ。そう、ダンジョンで得られたギフトを使ったのだ。

 ライはヒールを使い自らの傷を治し、ラングレイの首を繋げ蘇生を試みたが、蘇生しなかった。

 弥生が中に入ってくると、ラングレイの死体を次元の狭間に送り込んだ。無表情にまるで道端に落ちているゴミを拾いゴミ箱に入れるが如く、整然と躊躇う事もなくだ。

 事後処理をカターラに託し引き上げたが、流石に二度の襲撃を受け、ライの屋敷には当面の間警備の兵士が配備される事になったのであった。

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