76 / 87
第75話 怒り
しおりを挟む
結局ミレールはライの趣旨を理解してくれたが、当初の予定通り、明日には王都に帰る為に出発する。
今日は念の為ライの屋敷に家族ごと泊める事になり、家族には子供達二人が誘拐され、偶々別件の事件の犯人の家を捜索していたら監禁されていた子供達が見付かったと。ミレールは二人を探していて、どうにもならない状況になり、知己のあるライを頼って来た事にするとした。
その後領主代理の館に向かったが、子供達の事はメアリーとクラウディアに面倒を見てもらう事にし、屋敷に連れて行く事になった。
メアリー以外はまだライの母親との関係性が出来ていないからだ。ライの母親は勿論ミーニャ達にも家柄等関係なく優しく接してくれているが、お母様と呼ぶか下の名前で呼んでいるかの違いだ。
領主代理の館に着くと、行政の場である町庁舎隣に向かった。と行っても隣の建物だ。
皆ライに話し掛けられなかった。怒りの形相で近寄り難かったからだ。
地下に犯罪者を捕らえる牢屋があり、領主代理の案内でそこに向かった。
鉄格子の作りはオーソドックスなので、時代や世界が違っても大差ないなとライは感じた。
「こちらでございます」
一番奥の普段は使われない所だ。普通の牢屋の倍くらいあり、貴族を収監する為の牢屋と言う。分厚い扉を潜り、長い廊下を進んだ先だった。嫌な気分になる陰気な所だ。出来るなら二度と来たいとは思わない所だ。
「こいつか。こいつの正体を知っているのは俺のフィアンセを除き、ここにいない者はどれ位いる?」
「はい。直ぐに隔離しましたので5人だけで、既に箝口令を出しております」
「ど、どうして貴様がここにいるのだ!貴様の首級を確かにみたのだぞ!くそ、儂を誰だと思っているのだ!今直ぐに開放せぬか!」
粗末なベッドから立ち上がり、ライの姿を見ると格子に掴まり叫んでいた。
「貴様があの子供を攫ったのか?この人でなしが!」
「ちっ!しくじりおってからに!この売女め!失敗して何故生きておるのだ!このような所に入れおって、ただで済むとは思わぬ事だ。父上に頼めば貴様なんぞあっという間に家族共々始末してくれるぞ!」
ライは領主代理に質問をした
「カターラさん、因みにこいつはラングレイを名乗っていますが、公式のラングレイと言う人物のマーナダブルの出入りってどうなっていましたっけ?」
ミーニャから大公家、つまり国王の弟の長男と聞いていたのと、貴族は町長に町への出入りを報告しなければならなず、例え国王でも例外なくという事を領主を押し付けられた時に国王の側近から聞かされていたので、念の為確認をしたのだ。
「はい。ラインガルド様達の帰還及びダンジョンクリアの報告会の来賓として来ていましたが、翌日には町を出ております。私が直接門にてお見送りした国王陛下一行の中にラングレイ様、つまり大公家の長子がいらっしゃった事を確認したのが最後でありますし、御本人の署名がございます」
「じゃあこの町にいない筈だな?ではこいつは何者だ?」
カターラは冷や汗をかいていた。何をしようとしているのかが何となく分かったからだ。
「もしもラングレイ様御本人でございますればこの場にいる筈は御座いません。私か、私の不在時は必ずや代理を置いておりますのでその者かに伝える義務が有ります。ラインガルド様の所にも、入町報告はないのでございますよね?」
「ああ、この一週間の間に俺の屋敷に来た貴族はメアリーとユリカのご両親を除き、男爵家の者が一番上だし入町報告はそもそも俺の所に来ないよ。万が一来たらカターラさんの所に行くようにするよ。記録も取る事にしているけど、今まで誰一人として入町報告をしにきた者はいないな」
「はい。ではラングレイ様ご本人はこの町にはいらっしゃらない事になります。もしラングレイ様ご本にでしたら密入町となり、重大な国家反逆罪となりますな」
「ライは刀を抜いてラングレイの首筋に当て、そこから振りかぶり首を刎ねようとした」
「ライ駄目よ!」
「止めるなミーニャ。こいつは生かしておけば碌なことがない」
「違うの。ミレールを刺客として差し向けたりしていたのよ。他にも何か悪巧みをしているに違いないと思うの。だから尋問をしてからにした方が良いと思うの」
「そ、そうか。確かにそうだよな」
ライが横を向いたその瞬間にラングレイは懐に入れていたナイフを抜き、ライに体当たりをした。
ライは油断していたが、脇腹に鋭い痛みを覚えた。
「馬鹿め!身体検査もしないからだ。儂もダンジョン生還者なのだぞ!死ね!」
ミーニャは口を押さえて悲鳴を上げていた。そして蹲るライに止めを刺そうとしていたが、ライは咄嗟に刀を振り抜いた。弥生が刀だった時に作った刀のコピー品だ。
見事にラングレイの首を刎ねた。
皆啞然としていた。まさかラングレイが油断していたとはいえライに手傷を負わせる事が出来るとは誰も思わなかった。かなりの肥満体でもあるからだ。そう、ダンジョンで得られたギフトを使ったのだ。
ライはヒールを使い自らの傷を治し、ラングレイの首を繋げ蘇生を試みたが、蘇生しなかった。
弥生が中に入ってくると、ラングレイの死体を次元の狭間に送り込んだ。無表情にまるで道端に落ちているゴミを拾いゴミ箱に入れるが如く、整然と躊躇う事もなくだ。
事後処理をカターラに託し引き上げたが、流石に二度の襲撃を受け、ライの屋敷には当面の間警備の兵士が配備される事になったのであった。
今日は念の為ライの屋敷に家族ごと泊める事になり、家族には子供達二人が誘拐され、偶々別件の事件の犯人の家を捜索していたら監禁されていた子供達が見付かったと。ミレールは二人を探していて、どうにもならない状況になり、知己のあるライを頼って来た事にするとした。
その後領主代理の館に向かったが、子供達の事はメアリーとクラウディアに面倒を見てもらう事にし、屋敷に連れて行く事になった。
メアリー以外はまだライの母親との関係性が出来ていないからだ。ライの母親は勿論ミーニャ達にも家柄等関係なく優しく接してくれているが、お母様と呼ぶか下の名前で呼んでいるかの違いだ。
領主代理の館に着くと、行政の場である町庁舎隣に向かった。と行っても隣の建物だ。
皆ライに話し掛けられなかった。怒りの形相で近寄り難かったからだ。
地下に犯罪者を捕らえる牢屋があり、領主代理の案内でそこに向かった。
鉄格子の作りはオーソドックスなので、時代や世界が違っても大差ないなとライは感じた。
「こちらでございます」
一番奥の普段は使われない所だ。普通の牢屋の倍くらいあり、貴族を収監する為の牢屋と言う。分厚い扉を潜り、長い廊下を進んだ先だった。嫌な気分になる陰気な所だ。出来るなら二度と来たいとは思わない所だ。
「こいつか。こいつの正体を知っているのは俺のフィアンセを除き、ここにいない者はどれ位いる?」
「はい。直ぐに隔離しましたので5人だけで、既に箝口令を出しております」
「ど、どうして貴様がここにいるのだ!貴様の首級を確かにみたのだぞ!くそ、儂を誰だと思っているのだ!今直ぐに開放せぬか!」
粗末なベッドから立ち上がり、ライの姿を見ると格子に掴まり叫んでいた。
「貴様があの子供を攫ったのか?この人でなしが!」
「ちっ!しくじりおってからに!この売女め!失敗して何故生きておるのだ!このような所に入れおって、ただで済むとは思わぬ事だ。父上に頼めば貴様なんぞあっという間に家族共々始末してくれるぞ!」
ライは領主代理に質問をした
「カターラさん、因みにこいつはラングレイを名乗っていますが、公式のラングレイと言う人物のマーナダブルの出入りってどうなっていましたっけ?」
ミーニャから大公家、つまり国王の弟の長男と聞いていたのと、貴族は町長に町への出入りを報告しなければならなず、例え国王でも例外なくという事を領主を押し付けられた時に国王の側近から聞かされていたので、念の為確認をしたのだ。
「はい。ラインガルド様達の帰還及びダンジョンクリアの報告会の来賓として来ていましたが、翌日には町を出ております。私が直接門にてお見送りした国王陛下一行の中にラングレイ様、つまり大公家の長子がいらっしゃった事を確認したのが最後でありますし、御本人の署名がございます」
「じゃあこの町にいない筈だな?ではこいつは何者だ?」
カターラは冷や汗をかいていた。何をしようとしているのかが何となく分かったからだ。
「もしもラングレイ様御本人でございますればこの場にいる筈は御座いません。私か、私の不在時は必ずや代理を置いておりますのでその者かに伝える義務が有ります。ラインガルド様の所にも、入町報告はないのでございますよね?」
「ああ、この一週間の間に俺の屋敷に来た貴族はメアリーとユリカのご両親を除き、男爵家の者が一番上だし入町報告はそもそも俺の所に来ないよ。万が一来たらカターラさんの所に行くようにするよ。記録も取る事にしているけど、今まで誰一人として入町報告をしにきた者はいないな」
「はい。ではラングレイ様ご本人はこの町にはいらっしゃらない事になります。もしラングレイ様ご本にでしたら密入町となり、重大な国家反逆罪となりますな」
「ライは刀を抜いてラングレイの首筋に当て、そこから振りかぶり首を刎ねようとした」
「ライ駄目よ!」
「止めるなミーニャ。こいつは生かしておけば碌なことがない」
「違うの。ミレールを刺客として差し向けたりしていたのよ。他にも何か悪巧みをしているに違いないと思うの。だから尋問をしてからにした方が良いと思うの」
「そ、そうか。確かにそうだよな」
ライが横を向いたその瞬間にラングレイは懐に入れていたナイフを抜き、ライに体当たりをした。
ライは油断していたが、脇腹に鋭い痛みを覚えた。
「馬鹿め!身体検査もしないからだ。儂もダンジョン生還者なのだぞ!死ね!」
ミーニャは口を押さえて悲鳴を上げていた。そして蹲るライに止めを刺そうとしていたが、ライは咄嗟に刀を振り抜いた。弥生が刀だった時に作った刀のコピー品だ。
見事にラングレイの首を刎ねた。
皆啞然としていた。まさかラングレイが油断していたとはいえライに手傷を負わせる事が出来るとは誰も思わなかった。かなりの肥満体でもあるからだ。そう、ダンジョンで得られたギフトを使ったのだ。
ライはヒールを使い自らの傷を治し、ラングレイの首を繋げ蘇生を試みたが、蘇生しなかった。
弥生が中に入ってくると、ラングレイの死体を次元の狭間に送り込んだ。無表情にまるで道端に落ちているゴミを拾いゴミ箱に入れるが如く、整然と躊躇う事もなくだ。
事後処理をカターラに託し引き上げたが、流石に二度の襲撃を受け、ライの屋敷には当面の間警備の兵士が配備される事になったのであった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる