勇者だけど幼女使いと言われていますが何か?

KeyBow

文字の大きさ
69 / 73
第2章  兵士時篇

第69話 召喚

しおりを挟む
  時は少し戻り、フォルクスが召喚された時の事になる。


 赤井 雄馬は14歳の中学2年生だ。対面での対人コミュニケーションが少し苦手な現代っ子だ。

 身長は155cmではあるが、この1年でなんと10cmも伸びる等只今成長期真っ最中であった。体格は痩せており、顔自体は穏やかで優しい雰囲気がする。

 雄馬はお調子者で、周りからチビ助と揶揄されていた。面と向かってのまともな会話が苦手で、おちゃらけて自分の本来の姿を隠していた。弱い自分の本来の姿を悟られたくなく、誤魔化していたのだ。

 悪人が許せなかった。殺人や強盗のニュースを見ると、犯人に対して本気で死ねば良い、僕に力があったら裁いてやるのにと思ったり、所謂不良に対しても殺してやりたいと思うのだ。権力者に対してもそうだ。偽善者め!等と思うのだ。自分を普段構ってくれない両親のように。

 変人とされ周りから少し距離を置かれていた。親が権力者の為に虐めのターゲットにはされなかったが、雄馬の心はかなり歪になっていた。ただ、お年寄りの荷物を持ってあげたり、子供にも優し買った。何より妹を可愛がっていた。

 とにかく力を正しい方向に使っていない者が許せなかった。特に部下や自分を平気で殴る父親には。

 ただ、ネットでの文字のやり取りはちゃんとできているのだ。

 友人は少ない。雄馬の性質を知っている幼稚園からの付き合いの友達が2人いるだけだった。

 そんな感じでいつの間にか帰宅後はネットに逃げ込んでいる日々を過ごしていた。

 学校には行くが、受験勉強が有るからとそそくさと帰るような日々を過ごしていた。
 帰宅すると少し勉強をし、残りはネットゲーム三昧だった。

 そんなある日、以前からチェックをしていた新作VRゲームのβ版テストプレイヤーの募集が発表され、奇跡的にβテストのモニターに当選したのだ。

 そして今はそのβ版のキャラクターメイキングの真っ最中だ。送られてきたヘッドギアを装着し、ネットにダイブしようとしていた。

 変だなと思わなければならなかった。なにせ申込時や当選した後に住所等を記載していない。なのに性能評価のレポートを条件に、推奨スペックのパソコンが送られてきたのだ。モニター、ヘッドギア、マウスを接続し、パソコンの電源を入れると自動でβ版が起動した。ネットに繋ぐ設定をしていないのにだ。

 ゲーム自体はよくある剣と魔法のファンタジー物だ。魔法より剣が主流で、β版の主人公は兵士から始め、騎士や魔法戦士にクラスチェンジする。記憶を失った1兵卒からスタートという設定だ。
 
 スキルは何にするかな?と色々選んでいた。初期ポイントが有り、そのポイントの中からポイントの範囲内で幾つかを選ぶ。鉄板なのは無限収納。モニターの設定では自分は勇者になるらしいが、どれか一つの属性の精霊の加護が受けられる。各々違う特典が有り、いずれ頑張り次第で精霊と会話が可能で、使役も出来る。流れ矢であっさり殺られるのも嫌なので、飛び道具や矢の類が100%当たらなくなる特典から風を選んだ。

 更に特典として自動翻訳が有が文字は読めないので学ぶ必要がある。交渉術や魔法の全属性所持を追加した。騎士になる為には回復が必須だろうと思い込み、光属性を選んだ所でポイントを使い切った。中には超イケメンや、魅了魔法があった。魅了した女性を手籠に出来るのだが、ゲームじゃいらないなとスルーした。ルアルだったら女性を取っ替え引っ替えの夢の魔法だ。

 キャラクターメイキングが終わると変なメッセージが現れた。

 ようこそ。イプシロンVRβへ。貴方が唯一の適合者になります。本物の異世界へ貴方を誘います。注)この世界での死は実際の死を意味します。また、2度と元の世界には戻れません。承知の場合のみ続行を。尚貴方の記憶は召喚の対価として消去されますが、代わりにランダムで特殊スキルを付与します。

 細かな約款が書いてあり、ゲームではなく、生身の人間として異世界に行く事、異世界に行く特典として特別なスキルを得られる。勇者として行くが、記憶が無いから今設定したり説明を受けた事が分からない。死ねば現実に死ぬし、日本には帰って来られない。そのような事が書いて有ったが、笑いながら読んでいて、ゲームの世界観の設定程度にしか思わなかった。

 中々凝った設定だなと雄馬は感じた。名前はフォルクス、身長175cn、チュートリアルという兵士になるまでの訓練期間が終わった時は15歳にした。兵士になるまでの訓練期間は約1年。見た目は現地の一般人にカスタマイズされ、金髪に碧い目。普段ネットで使っている名前をここでも使う。

 まあせいぜい僕を楽しませてよ!とニヤニヤしながら、スタートではなく、転移ボタンをポチるのであった。

 ぽちった次の瞬間、急激に景色が変わり落下感を感じた。風がきつく目を開けていられない事から落下していると感じた。

「おいおいおいおい、流石にこれはやばいだろ。これじゃいきなりデススタートか?まじかよ」

 段々と川の水面が近付いてきて、飛行魔法で飛べないか?と念じたが、そのように都合良く可能な訳ではなく、無情にも川にダイブしていった。普通なら死ぬ所だが、幸いな事に雄馬は死ななかった。

 しかし、衝撃で頭から血を流し気絶して溺れていった。

 奇跡的に偶々通り掛かった近くの街の者が川を流されている雄馬を見付け、救助して街に連れて行ったのだ。

 数日後、目を覚ました雄馬だが自分の事を何も覚えていなかった。

 街の領主の館に預けられ、手厚い看病をされ一週間で歩く事が可能なまでに回復をしていた。周りが驚く驚異的な回復振りだったのだ。雄馬の身長はこの世界の平均的な成人より少し小さかったが、成長したらかなりでかくなると皆感じていた。

 典型的な中世のヨーロッパの街の感じだ。名前が思い出せないが、領主から自分の息子であるイプシロンと言われた。雄馬はそうですかと受け入れていたが、実の息子はこの屋敷に居て、現在は屋根裏部屋に隠れ潜んでいた。

 雄馬改めイプシロンは文字が読めなかったが、幸い言葉は通じた。怪我の養生として大人しくしていなければならなかったが、少しは体を動かさなければならず、少しずつ歩いたりして、体力を回復している最中であった。

 そしてある日の朝、屋敷に兵士達が来ており、領主と話しをしていた。

「彼ですか?」

「ええ、我が息子イプシロンですが、事故で記憶を無くしております。頭を強く打った為のようです。ケガは治っておりので是非ともお国の為にお使い下さい。別れは既に出来ております」

「貴方は領主の鏡だ。金で身代わりの者を確保し、身代わりを徴兵に差し出す領主が多いのに立派な事です。住人から聞きました。必ず我らが立派な兵士に育て上げます」

 まだぼーっとしていて、されるに任せる感じで大人しく連行されていた。窓からはそっとイプシロンが連れ去られる姿を見ていた本物のイプシロンが下卑た笑みを浮かべつつそこにいた。

 この国には徴兵制度が有り、街の人口に比例して徴兵される人数が決まる。領主の息子も例外なく対象にされ、身代わりを立てたりすると住民からの反発が強くなり、息子を差し出す必要があった。上の子の時に代わりを出したが、その時の影響が大きかったのだ。

 そんな時に、丁度良いタイミングで身代わりにピッタリな生贄が来たのだ。屋敷に雄馬が連れてこられた時に領主は小躍りしたものだ。しかも都合の良い事に記憶を失くし、誰も彼の存在を知らなかった。また、息子と背格好や髪の色、目の色が同じで、まるで兄弟のように似ていたのだ。

 訓練期間1年で各種教育を受け、兵士になった後実力や活躍次第で数年以内に騎士になる者もいる。兵役の義務期間は教育の1年が終わり兵士になってから3年だ。つまり今から4年間拘束されてしまうという事になる。元の身分は兵役が終わるまで全て剥奪され、その後の兵士としての地位は当人の実力次第だ。例え王族でも例外は無い。兵士になり3年したら去るのも残るのも自由だ。但し近隣諸国との争いが多い為、生き残るのは至難の業だ。

 そうやって領主に売られた雄馬は兵士になるべく他の徴兵者と共に馬車に揺られ、城に送られて行くのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...