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外伝2章
第2話 アニソン編 第二章
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僕たちはアニソンが声優アーティストやアイドルアニメの登場によって、
日本のメインストリームへと躍り出た瞬間を目撃した。
しかし、アニソンの勢いが地上へと吹き上がる裏側で、もう一つの巨大な音楽の波が、インターネットのニコニコ動画という特異な場所で静かに育まれていた。
それが、ボーカロイド(VOCALOID)を主体とした音楽文化だった。
この文化は、僕たちが日々夢中になっていたニコニコ動画において急速に成長した。
ボーカロイドの登場で誰もがPC一つで、キャラクターに歌わせ、自分の作品を公開できるようになったのだ。インターネットのクリエイターたちは「表現の自由度」を極限まで追求し、既存の産業に囚われない、実験的で先鋭的な楽曲が次々と生まれた。
僕自身、「メルト」や「千本桜」を初めて聞いた時は素直に感動した。
メジャーなポップソングよりも、「好きだ」と思えた。
ユーザーは楽曲を聴くだけでなく、「歌ってみた」として再創造し、そのムーブメントを増幅させた。
そして、『ブラック★ロックシューター』は曲がそのままアニメになるという、創造が生んだ「現実の逆転」を目の当たりにし、僕は鳥肌が立った。
これが、ネットの黎明期を支えたボーカロイドの躍進だった。
この黎明期から、日本の音楽シーン全体を揺るがす才能が次々とメジャーデビューしていく。
筆頭が、ボーカロイドプロデューサー「ハチ」として活動していた米津玄師だった。
彼は圧倒的なメロディセンスと、内省的な歌詞で、瞬く間に若者たちのカリスマとなった。
その才能がメジャーフィールドで成功を収めたことは、「ネット発のクリエイターが、メインストリームの頂点に立つ」という、僕たちの世代にとっての「ネットの勝利」を象徴していた。
これこそが、才能のメジャー化、米津玄師という革命である。
米津玄師の音楽がアニメの世界へと還元されたとき、その相乗効果は凄まじかった。
特に「KICK BACK」はリズムも曲もとにかく格好良く、アニメ『チェンソーマン』の放送が始まる前から、僕たちの期待と興奮を最高潮に高めてくれた。
彼らネット出身のアーティストが主題歌を担当することで、アニソンは技術的な先進性、普遍性、そしてインターネット的なスピード感を獲得し、そのクオリティは飛躍的に向上したのだ。
米津玄師の音楽がアニメファン以外にも広く浸透したことで、アニメやネット発の音楽を愛することが、「隠すべき趣味」ではなく「クールで新しい文化」として社会に認められ始めた。
これは、文化の融合と共にオタクカルチャーの力が一般層へと自然に流れ出した、大きな時代の変化だった。
このようなネットカルチャーの隆盛と時を同じくして、
前話で触れた「歌を主体とした世界観」を持つアニメの中で、
一人の強烈なカリスマ性を持つアーティストがデビューする。
それが、LiSAだった。
彼女のキャリアの初期は、アニメ『Angel Beats!』の作中バンド、
Girls Dead Monster(ガルデモ)のボーカル担当として名を轟かせた。
僕はガルデモ時代から、楽曲「Thousand Enemies」で夢中になった。
あまりにも格好よく、LiSAの声に震え、すぐにアルバムを何度も聞いた。
彼女のロックな歌声は、僕たちファンがアニメに込めた「情熱」そのものを具現化していた。
ガルデモでの成功を足がかりに、LiSAは次々と人気アニメのタイアップを担当していく。
『Fate/Zero』のOPに選ばれたとき、僕は「当然だ」と思った。
ユニットだけで収まる人じゃないと、信じていたからだ。
彼女は『ソードアート・オンライン』など、時代の最も熱量の高い作品に不可欠な存在となり、生身のロックシンガーとしてアニソン界の絶対的な歌姫へと駆け上がった。
そして、2019年。LiSAのキャリアは日本のエンターテイメント史における転換点となる作品と出会う。
それが、アニメ『鬼滅の刃』だった。
『紅蓮華』、『炎』は、アニメの社会現象とともに文字通り「国民的な楽曲」となり、アニソンを聴かなかった層まで巻き込んだ。
LiSAはこれらの楽曲で紅白歌合戦に連続出場を果たした。
これは、かつて地下で生まれていたアニソンが、「日本を代表する文化」として、最も権威ある舞台に立った瞬間だった。
この飛躍は、アニソンが日本文化を牽引する「エンターテイメントの中心地」であることを、日本人に知らしめたのである。
そして時は現在、米津玄師がネット音楽の普遍性を証明し、
LiSAがアニソンの勢いを国民的なものにする中、
2020年代に入り、アニソンを世界へと羽ばたかせる、異色のユニットが登場する。
それが、YOASOBIだった。
彼らは「小説を音楽にする」という、極めてインターネット的な手法で物語とデジタルサウンドを融合させた。
ボーカロイド出身クリエイターから受け継いだ洗練されたデジタルポップサウンドと、「ネット発のクールな感性」は、若年層に熱狂的に受け入れられた。
彼らのキャリアもまた、歴史的な転換点と出会う。
それが、アニメ『【推しの子】』の主題歌「アイドル」だった。
僕がこの音楽を聞いたとき、その映像美と漫画のテーマにあった最高に魅力的な楽曲だと直感した。
独特なテンポとリズムは、何度もリピートして聞きたいと思わせた。
しかし、この曲が世界中のチャートを席巻したとき、僕は驚きを隠せなかった。
TikTokでは、日本人だけでなく海外の人までが、この曲に合わせて「踊ってみた」の動画をアップしており、世界中の若者の間で共通言語になっていた。
SNSを中心に拡散した「アイドル」の世界的成功は、アニソンが「世界のポップカルチャーの最前線」に立った瞬間を決定づけた。
僕たちがKOTOKOのI've Soundを深夜のPCの前で、ひっそりと聴いていた時代から、わずか十数年。
アニソンは、インターネットと物語の力、そしてファンとクリエイターの情熱によって生み出された、世界で最も革新的で、最も力のある音楽ジャンルとなったのだ。
僕たちが愛し、育ててきた「オタク文化」の熱狂は、もう隠れる場所にいない。
いまや世界を動かす光源となって、僕たちの前に輝いている。
そして、この新しい時代の扉を開いた僕たちのコンテンツは、これからも加速し続ける。
日本のメインストリームへと躍り出た瞬間を目撃した。
しかし、アニソンの勢いが地上へと吹き上がる裏側で、もう一つの巨大な音楽の波が、インターネットのニコニコ動画という特異な場所で静かに育まれていた。
それが、ボーカロイド(VOCALOID)を主体とした音楽文化だった。
この文化は、僕たちが日々夢中になっていたニコニコ動画において急速に成長した。
ボーカロイドの登場で誰もがPC一つで、キャラクターに歌わせ、自分の作品を公開できるようになったのだ。インターネットのクリエイターたちは「表現の自由度」を極限まで追求し、既存の産業に囚われない、実験的で先鋭的な楽曲が次々と生まれた。
僕自身、「メルト」や「千本桜」を初めて聞いた時は素直に感動した。
メジャーなポップソングよりも、「好きだ」と思えた。
ユーザーは楽曲を聴くだけでなく、「歌ってみた」として再創造し、そのムーブメントを増幅させた。
そして、『ブラック★ロックシューター』は曲がそのままアニメになるという、創造が生んだ「現実の逆転」を目の当たりにし、僕は鳥肌が立った。
これが、ネットの黎明期を支えたボーカロイドの躍進だった。
この黎明期から、日本の音楽シーン全体を揺るがす才能が次々とメジャーデビューしていく。
筆頭が、ボーカロイドプロデューサー「ハチ」として活動していた米津玄師だった。
彼は圧倒的なメロディセンスと、内省的な歌詞で、瞬く間に若者たちのカリスマとなった。
その才能がメジャーフィールドで成功を収めたことは、「ネット発のクリエイターが、メインストリームの頂点に立つ」という、僕たちの世代にとっての「ネットの勝利」を象徴していた。
これこそが、才能のメジャー化、米津玄師という革命である。
米津玄師の音楽がアニメの世界へと還元されたとき、その相乗効果は凄まじかった。
特に「KICK BACK」はリズムも曲もとにかく格好良く、アニメ『チェンソーマン』の放送が始まる前から、僕たちの期待と興奮を最高潮に高めてくれた。
彼らネット出身のアーティストが主題歌を担当することで、アニソンは技術的な先進性、普遍性、そしてインターネット的なスピード感を獲得し、そのクオリティは飛躍的に向上したのだ。
米津玄師の音楽がアニメファン以外にも広く浸透したことで、アニメやネット発の音楽を愛することが、「隠すべき趣味」ではなく「クールで新しい文化」として社会に認められ始めた。
これは、文化の融合と共にオタクカルチャーの力が一般層へと自然に流れ出した、大きな時代の変化だった。
このようなネットカルチャーの隆盛と時を同じくして、
前話で触れた「歌を主体とした世界観」を持つアニメの中で、
一人の強烈なカリスマ性を持つアーティストがデビューする。
それが、LiSAだった。
彼女のキャリアの初期は、アニメ『Angel Beats!』の作中バンド、
Girls Dead Monster(ガルデモ)のボーカル担当として名を轟かせた。
僕はガルデモ時代から、楽曲「Thousand Enemies」で夢中になった。
あまりにも格好よく、LiSAの声に震え、すぐにアルバムを何度も聞いた。
彼女のロックな歌声は、僕たちファンがアニメに込めた「情熱」そのものを具現化していた。
ガルデモでの成功を足がかりに、LiSAは次々と人気アニメのタイアップを担当していく。
『Fate/Zero』のOPに選ばれたとき、僕は「当然だ」と思った。
ユニットだけで収まる人じゃないと、信じていたからだ。
彼女は『ソードアート・オンライン』など、時代の最も熱量の高い作品に不可欠な存在となり、生身のロックシンガーとしてアニソン界の絶対的な歌姫へと駆け上がった。
そして、2019年。LiSAのキャリアは日本のエンターテイメント史における転換点となる作品と出会う。
それが、アニメ『鬼滅の刃』だった。
『紅蓮華』、『炎』は、アニメの社会現象とともに文字通り「国民的な楽曲」となり、アニソンを聴かなかった層まで巻き込んだ。
LiSAはこれらの楽曲で紅白歌合戦に連続出場を果たした。
これは、かつて地下で生まれていたアニソンが、「日本を代表する文化」として、最も権威ある舞台に立った瞬間だった。
この飛躍は、アニソンが日本文化を牽引する「エンターテイメントの中心地」であることを、日本人に知らしめたのである。
そして時は現在、米津玄師がネット音楽の普遍性を証明し、
LiSAがアニソンの勢いを国民的なものにする中、
2020年代に入り、アニソンを世界へと羽ばたかせる、異色のユニットが登場する。
それが、YOASOBIだった。
彼らは「小説を音楽にする」という、極めてインターネット的な手法で物語とデジタルサウンドを融合させた。
ボーカロイド出身クリエイターから受け継いだ洗練されたデジタルポップサウンドと、「ネット発のクールな感性」は、若年層に熱狂的に受け入れられた。
彼らのキャリアもまた、歴史的な転換点と出会う。
それが、アニメ『【推しの子】』の主題歌「アイドル」だった。
僕がこの音楽を聞いたとき、その映像美と漫画のテーマにあった最高に魅力的な楽曲だと直感した。
独特なテンポとリズムは、何度もリピートして聞きたいと思わせた。
しかし、この曲が世界中のチャートを席巻したとき、僕は驚きを隠せなかった。
TikTokでは、日本人だけでなく海外の人までが、この曲に合わせて「踊ってみた」の動画をアップしており、世界中の若者の間で共通言語になっていた。
SNSを中心に拡散した「アイドル」の世界的成功は、アニソンが「世界のポップカルチャーの最前線」に立った瞬間を決定づけた。
僕たちがKOTOKOのI've Soundを深夜のPCの前で、ひっそりと聴いていた時代から、わずか十数年。
アニソンは、インターネットと物語の力、そしてファンとクリエイターの情熱によって生み出された、世界で最も革新的で、最も力のある音楽ジャンルとなったのだ。
僕たちが愛し、育ててきた「オタク文化」の熱狂は、もう隠れる場所にいない。
いまや世界を動かす光源となって、僕たちの前に輝いている。
そして、この新しい時代の扉を開いた僕たちのコンテンツは、これからも加速し続ける。
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