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外伝最終章
第1話 海に消えたビーチボール
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コミケでの「勝利」と、アニソンが日本を席巻し始めたという時代の実感は、
僕の中に新しいエネルギーを生んでいた。
僕たちはもはや、ただ受け取るだけの消費者ではない。
自分たちの熱狂を形にし、創造し、そして何より、現実世界で共有し、楽しむことができる世代なのだ。
そんな熱い夏、僕の原点であるクリエイターズブランド、『Key』から、
待望の新作、『リトルバスターズ!』の発売日を告げる報せが届いた。
Key作品は、僕にとって特別な存在だ。
それは僕らの世代が失いかけた学生時代の輝きを追体験させてくれる、最高の物語だった。
この頃、ゲーム特典の熱狂的な店舗特典文化があった。
ソフマップ、とらのあな、ゲーマーズ、メッセサンオー、ヨドバシカメラなど、各店舗が競い合って魅力的な特典を用意しており、ファンはどの店舗で購入するかを真剣に悩んだものだ。
僕が選んだのは、ソフマップの店舗特典だった。
特典はなんと、夏の解放感に溢れるビーチセット(ビーチボール、うきわ、フロートマット)だ。
他の店舗の美麗な特典も魅力的だったが、僕はこのビーチセットにKeyからのメッセージを感じた。
飾るための特典ではない。
「青春の続きは、現実で始めろ」という声が聞こえた気がしたのだ。
熱狂はPCの中だけではない。
僕は、この特典をただ押入れの奥にしまうのではなく、全力で使うことを選択した。
熱狂は創造だけではない、共有し、現実を楽しむためのものだ。
こうして特典を手に入れた僕たちは、この夏を最高の舞台にすることを決めた。
『リトルバスターズ!』の物語のエンディングの重要な要素は、修学旅行のやり直しとして海へ向かうシーンだ。
僕らの青春も、今、まさにこの場所で熱く燃えている。
ならば、僕たち自身も海へ向かうべきだろう。
僕はすぐさま、コミケやアニソンライブで共に過ごした、最も熱量の高い仲間たちに声をかけた。
行き先は、夏の解放感に溢れる江の島だ。
週末、僕たちはトヨタ ハイエースにバーベキュー用品と、もちろん、ソフマップ特典のビーチセットを詰め込んだ。
目指すは、夏の熱狂をすべて受け止めてくれるビーチだ。
東京都内の仲間たちを拾い、海を目指して東名高速道路を南下する。
渋滞に巻き込まれる時間帯もあったが、車内はすでに熱狂の坩堝と化していた。
車の音楽は、当時の僕たちの「サウンドトラック」だ。
カーオーディオから大音量で流れるのは、当時を象徴するアニソンばかりだ。
切ないメロディで青春の焦燥感を煽る『アンインストール』。
そして、僕たちの世代の「熱くなれ」という叫びそのものの『空色デイズ』。
『リトルバスターズ!』の主題歌や、当時アニメ界隈で有名だった名曲『もってけ!セーラーふく』を、僕たちは車内で大合唱した。
深夜のPCの前でヘッドホン越しに聴いていた音楽が、真昼の太陽の下、最高の仲間たちと共有される。この瞬間こそが、僕たちが長年培ってきた「オタク文化」の価値を現実が証明しているように感じられた。
それは、まさに僕たちの青春の真っ只中だった。
そして、2時間のドライブを経て、僕たちは遂に真夏の光に照らされた江の島のビーチに到着した。海辺の熱狂は、すぐに僕たちを包み込んだ。
アスファルトの熱気、潮の匂い、そして人々の明るいざわめき。
すべてが、僕たちが慣れ親しんだ深夜アニメの静寂とは対極にあった。
車から荷物を下ろし、まずはバーベキューの準備だ。
「さあ、バーベキューを始めるぞ!」
僕たちが目指したのは、グルメ番組に出てくるような彩り豊かなバーベキューではない。
僕たちの合言葉は「野菜はいらない、肉と魚介類があればいい」。
用意したのは、厚切りのステーキ肉、巨大なソーセージ、そして海で食べるための大ぶりのエビとホタテ。
サイドメニューとして、炭火で焼くのはバターを乗せたアルミホイル包みのじゃがいもだけだ。
野菜の色は一切ない、茶色と赤と白だけの豪快な食材が網の上に乗せられる。
それは、僕たちの文化が持つ「質実剛健で熱量優先」の精神を体現した、
最も純粋な「男のバーベキュー」だった。火の番をしながら、僕たちは他愛もない話をした。
次のコミケの作戦、新作アニメの展開予想、そして尽きることのないゲームの話題。
僕たちの居場所は、間違いなくこの海辺の小さな煙の中にもあった。
腹を満たし、夏のエネルギーをチャージすると、僕たちは遂に特典の出番だと悟った。
「特典を使うぞ!」
僕は車からソフマップ特典のビーチボールとフロートマットを取り出した。
リトルバスターズのキャラクターがプリントされたビーチボールは、真夏のビーチという最高の舞台で、その存在感を放った。
僕たちは早速、そのビーチボールを使ってビーチバレーを始めた。
「リトルバスターズ!は青春だ!」 「全力で遊ぶぞ!」
僕たちは、ゲームのテーマを叫びながら、現実のビーチで汗まみれになった。
誰から見ても滑稽だったかもしれない。
しかし、僕たちにとっては、これこそが最高の「聖地巡礼」であり、最高の「現実の解放」だった。
汗と砂を吸い込みながら、夢中になったビーチバレーは徐々に熱を帯びていった。
バーベキューで火照った体を冷やそうと、釣りも楽しんだ。釣ったのは小さな魚だったが、それすらも僕たちにとっては最高の獲物だった。
最高の仲間たちと最高のシチュエーション。
この夏は、僕の記憶の中で永遠に色褪せることのない、鮮やかな金色に輝いていた。
しかし、最高の思い出には、いつも少しの切なさがつきものだ。
激しいスパイクの応酬の最中、友達が渾身の力を込めて打ち込んだスパイクが、ビーチボールを高く、高く打ち上げた。
そのボールは、僕たちの遊んでいた砂浜を大きく越えて、そのまま勢いを失って波打ち際へと落下した。
「ああ、やばい!」
僕たちは慌てて海に入ろうとしたが、その時すでに、波は特典のビーチボールを捉えていた。
波に乗って、ボールは遠くへと運ばれていく。
リトルバスターズのキャラクターが描かれたビーチボールが、夏の太陽の下でキラキラと輝きながら、そのまま大海原へと消えていく。
特典は、特典ではなくなった。
笑いながらも、僕たちの胸の奥には、小さな寂しさが残った。
それは僕たちの夏を連れて、海の向こうへ消えていった。
切ないけれど、後悔はなかった。
「これでいい。全力で遊ぶのが恭介流だ!」
僕たちは流されていくビーチボールに手を振り、その後に残ったフロートマットとうきわだけを丁寧に回収した。
この日、僕たちは Key のゲームが提供してくれた「青春のテーマ」を、現実の海で完璧に体現することができたのだ。
これが、僕の2007年真夏の思い出だ。僕たちの夏はまだ終わらない。
次の真夏の祭典、コミケへとまた向かうのだ。
僕の中に新しいエネルギーを生んでいた。
僕たちはもはや、ただ受け取るだけの消費者ではない。
自分たちの熱狂を形にし、創造し、そして何より、現実世界で共有し、楽しむことができる世代なのだ。
そんな熱い夏、僕の原点であるクリエイターズブランド、『Key』から、
待望の新作、『リトルバスターズ!』の発売日を告げる報せが届いた。
Key作品は、僕にとって特別な存在だ。
それは僕らの世代が失いかけた学生時代の輝きを追体験させてくれる、最高の物語だった。
この頃、ゲーム特典の熱狂的な店舗特典文化があった。
ソフマップ、とらのあな、ゲーマーズ、メッセサンオー、ヨドバシカメラなど、各店舗が競い合って魅力的な特典を用意しており、ファンはどの店舗で購入するかを真剣に悩んだものだ。
僕が選んだのは、ソフマップの店舗特典だった。
特典はなんと、夏の解放感に溢れるビーチセット(ビーチボール、うきわ、フロートマット)だ。
他の店舗の美麗な特典も魅力的だったが、僕はこのビーチセットにKeyからのメッセージを感じた。
飾るための特典ではない。
「青春の続きは、現実で始めろ」という声が聞こえた気がしたのだ。
熱狂はPCの中だけではない。
僕は、この特典をただ押入れの奥にしまうのではなく、全力で使うことを選択した。
熱狂は創造だけではない、共有し、現実を楽しむためのものだ。
こうして特典を手に入れた僕たちは、この夏を最高の舞台にすることを決めた。
『リトルバスターズ!』の物語のエンディングの重要な要素は、修学旅行のやり直しとして海へ向かうシーンだ。
僕らの青春も、今、まさにこの場所で熱く燃えている。
ならば、僕たち自身も海へ向かうべきだろう。
僕はすぐさま、コミケやアニソンライブで共に過ごした、最も熱量の高い仲間たちに声をかけた。
行き先は、夏の解放感に溢れる江の島だ。
週末、僕たちはトヨタ ハイエースにバーベキュー用品と、もちろん、ソフマップ特典のビーチセットを詰め込んだ。
目指すは、夏の熱狂をすべて受け止めてくれるビーチだ。
東京都内の仲間たちを拾い、海を目指して東名高速道路を南下する。
渋滞に巻き込まれる時間帯もあったが、車内はすでに熱狂の坩堝と化していた。
車の音楽は、当時の僕たちの「サウンドトラック」だ。
カーオーディオから大音量で流れるのは、当時を象徴するアニソンばかりだ。
切ないメロディで青春の焦燥感を煽る『アンインストール』。
そして、僕たちの世代の「熱くなれ」という叫びそのものの『空色デイズ』。
『リトルバスターズ!』の主題歌や、当時アニメ界隈で有名だった名曲『もってけ!セーラーふく』を、僕たちは車内で大合唱した。
深夜のPCの前でヘッドホン越しに聴いていた音楽が、真昼の太陽の下、最高の仲間たちと共有される。この瞬間こそが、僕たちが長年培ってきた「オタク文化」の価値を現実が証明しているように感じられた。
それは、まさに僕たちの青春の真っ只中だった。
そして、2時間のドライブを経て、僕たちは遂に真夏の光に照らされた江の島のビーチに到着した。海辺の熱狂は、すぐに僕たちを包み込んだ。
アスファルトの熱気、潮の匂い、そして人々の明るいざわめき。
すべてが、僕たちが慣れ親しんだ深夜アニメの静寂とは対極にあった。
車から荷物を下ろし、まずはバーベキューの準備だ。
「さあ、バーベキューを始めるぞ!」
僕たちが目指したのは、グルメ番組に出てくるような彩り豊かなバーベキューではない。
僕たちの合言葉は「野菜はいらない、肉と魚介類があればいい」。
用意したのは、厚切りのステーキ肉、巨大なソーセージ、そして海で食べるための大ぶりのエビとホタテ。
サイドメニューとして、炭火で焼くのはバターを乗せたアルミホイル包みのじゃがいもだけだ。
野菜の色は一切ない、茶色と赤と白だけの豪快な食材が網の上に乗せられる。
それは、僕たちの文化が持つ「質実剛健で熱量優先」の精神を体現した、
最も純粋な「男のバーベキュー」だった。火の番をしながら、僕たちは他愛もない話をした。
次のコミケの作戦、新作アニメの展開予想、そして尽きることのないゲームの話題。
僕たちの居場所は、間違いなくこの海辺の小さな煙の中にもあった。
腹を満たし、夏のエネルギーをチャージすると、僕たちは遂に特典の出番だと悟った。
「特典を使うぞ!」
僕は車からソフマップ特典のビーチボールとフロートマットを取り出した。
リトルバスターズのキャラクターがプリントされたビーチボールは、真夏のビーチという最高の舞台で、その存在感を放った。
僕たちは早速、そのビーチボールを使ってビーチバレーを始めた。
「リトルバスターズ!は青春だ!」 「全力で遊ぶぞ!」
僕たちは、ゲームのテーマを叫びながら、現実のビーチで汗まみれになった。
誰から見ても滑稽だったかもしれない。
しかし、僕たちにとっては、これこそが最高の「聖地巡礼」であり、最高の「現実の解放」だった。
汗と砂を吸い込みながら、夢中になったビーチバレーは徐々に熱を帯びていった。
バーベキューで火照った体を冷やそうと、釣りも楽しんだ。釣ったのは小さな魚だったが、それすらも僕たちにとっては最高の獲物だった。
最高の仲間たちと最高のシチュエーション。
この夏は、僕の記憶の中で永遠に色褪せることのない、鮮やかな金色に輝いていた。
しかし、最高の思い出には、いつも少しの切なさがつきものだ。
激しいスパイクの応酬の最中、友達が渾身の力を込めて打ち込んだスパイクが、ビーチボールを高く、高く打ち上げた。
そのボールは、僕たちの遊んでいた砂浜を大きく越えて、そのまま勢いを失って波打ち際へと落下した。
「ああ、やばい!」
僕たちは慌てて海に入ろうとしたが、その時すでに、波は特典のビーチボールを捉えていた。
波に乗って、ボールは遠くへと運ばれていく。
リトルバスターズのキャラクターが描かれたビーチボールが、夏の太陽の下でキラキラと輝きながら、そのまま大海原へと消えていく。
特典は、特典ではなくなった。
笑いながらも、僕たちの胸の奥には、小さな寂しさが残った。
それは僕たちの夏を連れて、海の向こうへ消えていった。
切ないけれど、後悔はなかった。
「これでいい。全力で遊ぶのが恭介流だ!」
僕たちは流されていくビーチボールに手を振り、その後に残ったフロートマットとうきわだけを丁寧に回収した。
この日、僕たちは Key のゲームが提供してくれた「青春のテーマ」を、現実の海で完璧に体現することができたのだ。
これが、僕の2007年真夏の思い出だ。僕たちの夏はまだ終わらない。
次の真夏の祭典、コミケへとまた向かうのだ。
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