脚だけでイく変態に愛され契約中~週一回、俺の脚は売られる~

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

文字の大きさ
13 / 22

十三話 誘いに乗る

しおりを挟む
 どんなチャンスも逃がさないという雨下の言葉は、やはり彼の嗅覚が優れていることの裏付けなのだろう。

 一週間前だったら、俺は笑い飛ばしているか、ヤツの脛を蹴りあげていたはずだ。

「―――すごいマンション、ですね……」

 結果として俺は今、雨下のマンションに居る。今日、公共料金を支払ったせいで、財布の中は空っぽだった。給料日までの八日間、水でも飲んで耐えようと思っていたくらいだ。

「ここは住んでるマンションの中では、狭い方だよ」

「住んでないマンションなんかあるのかよ」

「投資でね」

「ああ―――……」

 なるほど。確かに、投資でマンションを転がすとか、聞いたことがある。それで、問題が起きているとも。雨下のことだから、きっとタイミング良く売りさばいて、損などしないのだろうな。

「なにか飲む? ワインでも、シャンパンでも。ビールもあるよ?」

「……強いの」

 酔わなければ、逃げたくなるかもしれない。そう思って、口にした。雨下がニッコリと笑う。

「じゃあ、バーボンにしようか。飲んだことは?」

「……ない」

 バーボンが何なのかも、よくわかっていない。ウイスキーとは違うのだろうか。

 雨下が琥珀色のバーボンを、クリスタルグラスに注いだ。バーボンを注いだ箇所から、ゆっくりと氷が溶けて、もやを作っている。

「良い薫り……」

 独特ながら、深い、良い薫りがした。

「ゆっくり味わうのが良いんだ。こっちへどうぞ」

 促されるままに、ソファに腰かける。身体が沈むほど柔らかなソファに、驚いてふらついてしまった。

 傾ぐ身体を、「おっと」と雨下が支える。雨下の身体から、香水の香りが仄かに漂った。

 雨下のシャツ越しに触れた肉体は、妙に生々しさがあって、思わず身を固くする。

(っ……身体を売るわけじゃないのに)

 雨下が望んだのは、俺の脚だけだ。セックスするわけでもないのに、やけに緊張する。

 グラスを呷り、一気に飲み干す。喉を焼くようなアルコールの熱さに、クラクラした。

「……それで、俺は、何をすれば良い?」

 覚悟を決めて、そう問いかける。雨下の表情が、ほんの一瞬。わからないほど一瞬だけ、抜け落ちて見えた。

 雨下の手が伸びる。頬から耳、髪へと指が伸びるのを、振りほどけないまま、されるがままになる。

(っ……)

 ドキリ、心臓が脈打つ。雨下の綺麗な顔が、俺を見る。

 俺は無理矢理に視線を逸らし、雨下の顔を押しのける。

「脚だけって、言ったでしょ」

「ああ、うん。そうだね」

 名残惜しそうに頬に指を這わせながら、雨下の手が離れていく。その様子に、ホッと息を吐いた。

「まあ、僕の希望は知っての通りだよ。どうする? もう、しようか?」

「……」

 雨下の『しようか』という言葉が、酷く淫靡に感じた。無意識に脚をモゾと動かすと、雨下の視線が足元に落ちる。口許が笑みを浮かべるのを見て、少し憎らしく思えてしまった。

「あの、汗とか……抵抗あるんだけど……」

 綺麗な足か? と問われたら、自信はない。悪臭はないと思っているが、一日働いた脚である。

「ああ……。じゃあ、シャワー先に使う? 僕は抵抗ないんだけど……」

「シャワー借ります!」

 反射的にそう言って、案内されるままにシャワールームに駆け込む。

 雨下のマンションのバスルームは、想像通り――よりも格段に、豪華な造りだった。

 せっかくだからゆっくりしたら。という雨下に言われるまま、ミストサウナを浴びる。

「……」

 湿度の高い浴室で、ぼんやりしながら、冷静さが戻ってくる。

(……先にシャワー浴びるって、なんか、もう)

 いけないことをしている気がする。心臓が鳴り止まない。

「ハァ……」

 何をされるんだろう。また、舐められるんだろうか。

 ぞくん。背筋が震える。

 赤い舌が、俺の脚を這うのを想像して、腹の奥がキュンと疼いた。

(……ヤバそう)

 ハァと、溜め息を吐く。なんで、こんなことに乗ってしまったのか。

「……仕方ない」

 契約は、契約だ。

 どうせなら、風呂代も浮くと考えれば良い。そのくらい図太くなければ、やっていられないのだから。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

陥落 ー おじさま達に病愛されて ー

ななな
BL
 眉目秀麗、才ある青年が二人のおじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全九話。  国一番の璃伴士(将棋士)であるリンユゥは、義父に温かい愛情を注がれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。  そんなある日、一人の紳士とリンユゥは対局することになり…。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...