脚だけでイく変態に愛され契約中~週一回、俺の脚は売られる~

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

文字の大きさ
27 / 28

二十七話 二人だけの世界

しおりを挟む
「っ……、雨下……」

 たっぷり数十秒の時間を使って、ようやく絞り出せたのはその言葉だった。俺の手は震えて、キーホルダーを持った手がカチャと金属音を鳴らす。

 この男に特別扱いされることの嬉しさと、戸惑い。

 どう反応して良いのか、なんと返したら良いのか解らずに、口ごもる。

 雨下はそんな俺の様子を見越したように微笑むと、店の奥へと誘う。奥まった箇所にあったのは、ゆったり寛げそうなスペースに置かれた、品の良いソファ。向かいには鏡が置かれており、足元には踏んだらどこまでも沈み込みそうな、柔らかなラグが敷かれている。

「座って」

 促されるままに、ソファに座る。身体を包み込まれているかのような感覚になるソファだった。

「このフィッティングルームは、VIP専用だから」

「VIP……?」

 雨下がゆっくりと、豪奢なカーテンを閉める。クスリ、笑いながら、俺の握ったキーホルダーを指した。

「この『マスターキー』を持っている人。かな」

「―――」

 それ、は。

 実質、このフィッティングルームは、俺専用ということになる―――のだろうか。

 戸惑う俺の前に、恭しく、傅くようにして、雨下が膝を着いた。

 俺の靴を、ゆっくりと脱がせていく。

「雨下……」

 ハァ。吐息が漏れる。雨下の指が、踵を滑る。

 雨下は足の裏から指先まで、揉むように触れてから、頭を垂れるようにして。

 爪先に、キスをした。

「―――っ、雨下……」

「僕の『ミューズ』」

 雨下が囁きながら、足の甲に舌を這わせた。赤い舌が、ゆっくりと皮膚をなぞる。

「――ふ、んっ……」

 雨下の視線が、俺を見る。その視線に、甘く溶かされてしまいそうだ。

「う、かっ……、それっ……」

 ゾクゾクと、背筋が震える。

 俺の身体は、雨下の手の気持ち良さを知っている。足を愛撫される快感を、覚えてしまっている。

 ハァ、と息を吐いて、雨下を見る。

 俺はもしかしたら、自分で思っているよりも欲望に忠実な顔をしているのかもしれない。

 雨下の喉が鳴った。

「それ……ヤバい……から……」

 雨下がソファに座る俺に、覆い被さるようにして寄りかかる。

 ドクン。

 心臓が鳴る。

 雨下の顔が、近くなる。

 前髪が触れる。

 鼻先が擦れる。

「雨下……」

 名前を呼んで小さく開いた唇に、雨下のそれが重なった。

 舌が、捩じ込まれる。熱い舌が絡み付くと同時に、俺は雨下の首に腕をまわした。

 ちゅ、くちゅ。と、濡れた音が響く。

 雨下にのし掛かられ、ソファが沈み込んだ。

 上口蓋を舐められ、舌を擦られる。唾液が唇から零れ、銀の糸が垂れる。

 荒い呼気が、互いの間に吐き出される。

 雨下の手が、太股をなぞった。

「ふ、んっ……、んぅ……」

 夢中で、雨下の唇を吸った。

「ハァ、っ……」

 雨下の指が、腰の隙間から直接肌へと滑り込んで来た。敏感な腰から上へと這い上がり、胸を撫でられる。

 びくん。身体が跳ねる。

 雨下の指は曖昧に胸部を撫でて、また腰へと戻り、背中を這っていく。

「っ、ん……、雨下……っ」

 吐息とともに、名前を吐き出す。

 雨下の唇が離れ、濡れた唇がそのまま首筋に吸い付く。

「あ―――、ハァっ……」

 何度も。首筋にキスされ、背筋を逸らせる。

 雨下の手にまさぐられ、上着は殆どはだけていた。外気にさらされた皮膚が粟立つ。

「縁くん―――……」

 雨下がケダモノのような視線で、俺の瞳を覗き込む。俺はぐっと、なにか込み上げる衝動を堪えた。

 雨下の手が、ズボンのボタンを外す。ファスナーを下ろす音が、やけに大きい。

 ドクン。ドクン。

 心臓の音が、耳の傍で聞こえる気がした。

「―――う、か……っ」

 ズボンを太股まで下ろされた、その時だった。

「オーナー。すみません、お電話です」

 カーテン越しに、事務的な声がかけられる。雨下の手が、ビクリと震え、停止した。

 互いに、一瞬見つめあった。

 ドクドクと鳴る心臓とは裏腹に、頭が急速に冷えていく。吐息を吐き出し、若干の名残惜しさを感じさせる手付きで頬を撫でて、雨下が立ち上がった。

「今いくよ」

 俺ははだけた前を合わせながら、視線をさ迷わせた。雨下は乱れた髪を軽く撫で付けながら、チラリとこちらを見る。

 ザワザワと、胸がざわめく。

 カーテンの隙間から、雨下がフィッティングルームを抜け出ていく。

―――一瞬。ここがフィッティングルームだということを、忘れていた。

 世界でここだけが切り離されていたような気持ちになって、雨下の背中にすがり付いた。

(あのまま、声がかからなかったら)

 二人は、どうなっていたのだろうか。

 甘い妄想が、ザワザワと胸を占めていく。

 溜め息を吐き出して、俺は乱れた服を整えたのだった。







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

陥落 ー おじさま達に病愛されて ー

ななな
BL
 眉目秀麗、才ある青年が二人のおじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全九話。  国一番の璃伴士(将棋士)であるリンユゥは、義父に温かい愛情を注がれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。  そんなある日、一人の紳士とリンユゥは対局することになり…。

処理中です...