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第一章 輪廻の滝で
1:急な結婚話
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「えーっと……。どういう事ですか? お父様」
それは朱に染まった葉が風に揺られ、はらはらと落ちる光景をよく目にするようになった秋の終わりの頃。ある晴れた日のこと。
アイシャはその群青の瞳を大きく見開き、困惑した様子で向かいに座る父母を見た。
燦燦と降り注ぐ朝日が食堂のテーブルを照らす穏やかな朝食の席で、とても軽く、本当に空気よりも軽く、当たり前のように放たれた父の一言がどうしても理解できないのだ。
父であるブランチェット伯爵は頬杖をつき、珍しく素直に聞き分けないアイシャに面倒くさそうな視線を送る。
「だから、お前はベアトリーチェの代わりに北部のアッシュフォード家に嫁ぐことになったと言っているのだ。可愛い妹のためなのだ、わかるだろう?」
『ベアトリーチェのために』。その言葉がアイシャの心を抉った。日頃からよく聞いてきた言葉なのに、今日はやけに痛く感じる。
ふと、隣の席を見ると銀髪に碧眼の、天使のような風貌をしたベアトリーチェがバツの悪そうな顔をして俯いていた。
自分の燻んだ銀髪とは違う、白に近い銀色の髪にできた天使の輪っかが無性に腹立たしく思えたアイシャは、隣から微かに聞こえた『ごめんなさい』を無視した。
いつもなら背中をさすって優しく『大丈夫だ』と言ってやるところだが、今はそんな余裕などない。
「……アッシュフォードって、あのアッシュフォードですか?」
「ああ、そうだ」
「……信じられない」
アイシャは顔を伏せ、ドレスの裾をキュッと握った。
彼女の嫁ぎ先として挙げられた場所は帝国の最北端の地、アッシュフォード。数年前、魔族との戦争で戦地となり今はまだ復興途中のど田舎。寒さの厳しい痩せた農地しかない場所だ。
そしてその土地を治める男はイアン・ダドリー・アッシュフォードという元平民。傭兵の身でありながら、先の戦争で大きな功績を挙げ、男爵位とアッシュフォードの地を与えられた男だ。
真っ黒な髪と鋭い眼光を放つ金色の瞳は彼こそが魔族ではないかと思わせるほどに恐ろしく、性格は戦場で嬉々として敵の首を狩るほどの戦闘狂。血を浴びたいから戦争に参加したという噂すらある。
はっきり言って、皇帝の寵臣であるブランチェット伯爵家の娘の嫁ぎ先としては不足がありすぎる人物だ。
(そんな男からの求婚など、伯爵家ならば簡単に断れるはずなのに……)
断れないということは、つまり……。
「陛下のご命令で?」
アイシャの問いに、伯爵は額を押さえて頷いた。
「『先の戦における彼の功績を考えると、褒美として与えられた爵位と領地は貧相すぎるのではないか』、との声が軍部の方から上がってきていてな」
「けれど、宮中では必要以上に爵位や領地を与えることに否定的な人が多いらしいの。それで代わりにと言ってはなんだけど、若く美しい娘を送ってやることになったわけなのよ。平民に美しく高貴な貴族令嬢など、十分すぎる褒美でしょう?」
「陛下としては元平民の男に対してもきちんと褒美を与えることで、懐の深さを見せたいのだろうが」
「それなら自分の娘を差し出すべきでしょうにねぇ」
「本当だよ、まったく。娘が二人もいるのだから」
「まあ、聞いた話では皇后陛下がベティを推薦したそうだけれど。よほど自分の娘を差し出したくなかったのね」
「皇后の仕業か。恐ろしいな、あの女は」
ことの経緯を話しながら憤る父と母。自分とはあまり似ていない、二人の顔が歪む。
皇后の娘の代わりに自分の娘を差し出さねばならないことを怒っているのは確かなはずなのに、アイシャには何故かその話が自身の子ことは思えない。
アイシャは二人の話を聞きながら、内圧を下げるようにゆっくりと息を吐いた。
「……しかし、それで何故私なのです?陛下は皇女殿下の代わりに、若く美しい娘としてベアトリーチェをお選びになられたのでしょう?なのに何故私が代わりに行くのですか?そもそも、ベアトリーチェの代わりに姉を送ることを陛下は許可されたのですか?」
「陛下にはまだ伝えていないが、問題はない。我がブランチェット伯爵家の娘が嫁いだという事実が何よりも重要なのだから。それに、わかるだろう?アイシャ。ベティは生まれた時から体が弱く繊細なんだ。あそこは年中寒くて土地も痩せている上に、魔族領も近い危ない場所だ。何が起こるかわからない。暖かく豊かな伯爵領で生活してきたベティをそんな場所に送っては可哀想だ」
「……はい?」
一瞬、何を言われているのかわからなかった。
それはつまり、私は可哀想ではないと、そう言いたいのか。私だってあんなところになど行きたくないのに。
アイシャは喉まで出かかった当然の疑問を何とか呑み込んだ。
たしかに、妹のベアトリーチェは生まれた時から体が弱い。けれど弱いと言っても風邪をひきやすいという程度のものだ。
北部に行けないほどではないだろうに。
(……いや。でも、風邪も拗らせれば死に至ることもあるものね)
アイシャは首を振り、心の中でそう自分に言い聞かせた。
父のこの提案は何か事情があるのだと、そう信じて。
「あー……、えっと、もしかして主治医がベアトリーチェの体は北部の気候に耐えられないと言っているのですか?」
「……さあ?」
「さあ、って……。ではどうして……」
「さっきから何なんだ、アイシャ。もしやお前はベティをあんな場所に送りたいのか?」
「でも、あの……。それが陛下の命令ならば仕方がないと思うのですが……」
「まあ!なんて冷たい子なの!ひどいわ!」
「なぜそんなことを言うんだ、アイシャ!」
皇命ならば仕方がない。身分制度とはそういうものだ。当然のことを言っただけなのに、母は『ひどい子だ』と目に涙を浮かべ、父は軽蔑するような視線をアイシャに送った。
何故なのだろう。何故、そんな目で見られなければならないのだろう。胸が痛い。
「ひ、ひどいと言われましても……。あんな場所、と称されるところになど、私だって行きたくありませんわ」
「わがままを言うんじゃない、アイシャ。家のために婚姻を結ぶのは貴族の娘に生まれた者の義務だ」
当然のように冷たく言い放つ父。アイシャはとうとう堪えきれずに、机を叩いて立ち上がった。
「で、では!なぜベアトリーチェはその義務を果たさなくても許されるのでしょう?ベアトリーチェがイアン・ダドリーの元に嫁がないのは義務違反ではないのですか!?」
「だからベティは体が弱いからと……」
「体が弱いと言っても、北部に行けないほどではないのでしょう?そもそもベアトリーチェに来た縁談なのに、なぜ私に押し付けて……、しかもそれに従うことが義務みたいにおっしゃるのですか!?あまりにも理不尽ではないですか!」
「……っ!屁理屈を言うな!そういう話をしているのではない!」
「ではどういう話なのですか!」
「ええい!うるさい!お前はいつからそんなに性悪になったんだ!一度部屋で頭を冷やしてこい!」
「ねえ、アイシャ。どうしてそんな言い方をするの?今日の貴女は貴女らしくないわ。いつもは妹のために尽くしてくれる優しいお姉さんなのに」
「……ハハッ、私らしい?優しいお姉さん?」
アイシャは母の言葉を鼻で笑った。
アイシャが妹に優しいのはそうであることを強要されてきたからだ。
ベアトリーチェが欲しがっているから、と亡き祖母が買ってくれたお気に入りのクマのぬいぐるみを譲よう言われた時も、体が弱いベアトリーチェが参加できないからと楽しみにしていた舞踏会を欠席させられた時も、『嫌だ』なんて言おうものなら激しく叱責された。
お姉ちゃんでしょう、我慢しなさい。
お前は健康な体じゃないか。
お前はベアトリーチェより恵まれているのに、わがままだ。
病気の妹が可哀想だとは思わないのか。
など、と。
(可哀想だなんて……、思えないわ)
この家では、いつもベアトリーチェばかりが優先される。少し体が弱いだけのくせに、この家のすべてが彼女を中心にして回っている。おかげで誰もアイシャを気にかけることはない。
それなのに、可哀想だなんて思えるはずがない。
アイシャは奥歯を強く噛んだ。ギリっと歯が擦れる音が微かに響いた。
「お、お姉さま……。ごめんなさい!私のせいで……」
この重々しい空気に耐えられなかったのか、ベアトリーチェは目に涙を浮かべてアイシャのドレスの袖を掴んだ。
彼女の澄んだ碧の瞳が涙で揺れる。だが、アイシャの心は何も感じない。罪悪感など、感じるはずもない。
ベアトリーチェは『ごめんなさい』と、そういえば何でも許されると思っているのだろう。本当に悪いと思っているのなら、ここで『予定通り、自分が嫁ぎます』と言うべきではないのだろうか。彼女自身が嫁ぎたくないとしても、せめて一言、『姉に押し付けるのはおかしい』と言うべきではないのだろうか。
この親はベアトリーチェの言葉なら聞いてくれるのに。
アイシャはぐっと眉間に皺を寄せ、さりげなくベアトリーチェの手を払った。
「ベティ、あなたは悪くないのよ。泣かないで」
「そうだぞ、お前が謝ることはない。アイシャがこんなことを言うのは、突然のことで動揺しているだけだから」
「アイシャ、あまり妹に心配をかけるものではないわ。とりあえず、婚姻の日までまだ時間はあるから少し頭を冷やしなさい」
肩を震わせてポロポロと涙を流すベアトリーチェを抱きしめる父と母。
これはなんて言う名の茶番ですか?、なんて嫌味が口から出そうで、アイシャはスッと席を立ち、食堂を出た。
ああ、胸が張り裂けそうだ。
それは朱に染まった葉が風に揺られ、はらはらと落ちる光景をよく目にするようになった秋の終わりの頃。ある晴れた日のこと。
アイシャはその群青の瞳を大きく見開き、困惑した様子で向かいに座る父母を見た。
燦燦と降り注ぐ朝日が食堂のテーブルを照らす穏やかな朝食の席で、とても軽く、本当に空気よりも軽く、当たり前のように放たれた父の一言がどうしても理解できないのだ。
父であるブランチェット伯爵は頬杖をつき、珍しく素直に聞き分けないアイシャに面倒くさそうな視線を送る。
「だから、お前はベアトリーチェの代わりに北部のアッシュフォード家に嫁ぐことになったと言っているのだ。可愛い妹のためなのだ、わかるだろう?」
『ベアトリーチェのために』。その言葉がアイシャの心を抉った。日頃からよく聞いてきた言葉なのに、今日はやけに痛く感じる。
ふと、隣の席を見ると銀髪に碧眼の、天使のような風貌をしたベアトリーチェがバツの悪そうな顔をして俯いていた。
自分の燻んだ銀髪とは違う、白に近い銀色の髪にできた天使の輪っかが無性に腹立たしく思えたアイシャは、隣から微かに聞こえた『ごめんなさい』を無視した。
いつもなら背中をさすって優しく『大丈夫だ』と言ってやるところだが、今はそんな余裕などない。
「……アッシュフォードって、あのアッシュフォードですか?」
「ああ、そうだ」
「……信じられない」
アイシャは顔を伏せ、ドレスの裾をキュッと握った。
彼女の嫁ぎ先として挙げられた場所は帝国の最北端の地、アッシュフォード。数年前、魔族との戦争で戦地となり今はまだ復興途中のど田舎。寒さの厳しい痩せた農地しかない場所だ。
そしてその土地を治める男はイアン・ダドリー・アッシュフォードという元平民。傭兵の身でありながら、先の戦争で大きな功績を挙げ、男爵位とアッシュフォードの地を与えられた男だ。
真っ黒な髪と鋭い眼光を放つ金色の瞳は彼こそが魔族ではないかと思わせるほどに恐ろしく、性格は戦場で嬉々として敵の首を狩るほどの戦闘狂。血を浴びたいから戦争に参加したという噂すらある。
はっきり言って、皇帝の寵臣であるブランチェット伯爵家の娘の嫁ぎ先としては不足がありすぎる人物だ。
(そんな男からの求婚など、伯爵家ならば簡単に断れるはずなのに……)
断れないということは、つまり……。
「陛下のご命令で?」
アイシャの問いに、伯爵は額を押さえて頷いた。
「『先の戦における彼の功績を考えると、褒美として与えられた爵位と領地は貧相すぎるのではないか』、との声が軍部の方から上がってきていてな」
「けれど、宮中では必要以上に爵位や領地を与えることに否定的な人が多いらしいの。それで代わりにと言ってはなんだけど、若く美しい娘を送ってやることになったわけなのよ。平民に美しく高貴な貴族令嬢など、十分すぎる褒美でしょう?」
「陛下としては元平民の男に対してもきちんと褒美を与えることで、懐の深さを見せたいのだろうが」
「それなら自分の娘を差し出すべきでしょうにねぇ」
「本当だよ、まったく。娘が二人もいるのだから」
「まあ、聞いた話では皇后陛下がベティを推薦したそうだけれど。よほど自分の娘を差し出したくなかったのね」
「皇后の仕業か。恐ろしいな、あの女は」
ことの経緯を話しながら憤る父と母。自分とはあまり似ていない、二人の顔が歪む。
皇后の娘の代わりに自分の娘を差し出さねばならないことを怒っているのは確かなはずなのに、アイシャには何故かその話が自身の子ことは思えない。
アイシャは二人の話を聞きながら、内圧を下げるようにゆっくりと息を吐いた。
「……しかし、それで何故私なのです?陛下は皇女殿下の代わりに、若く美しい娘としてベアトリーチェをお選びになられたのでしょう?なのに何故私が代わりに行くのですか?そもそも、ベアトリーチェの代わりに姉を送ることを陛下は許可されたのですか?」
「陛下にはまだ伝えていないが、問題はない。我がブランチェット伯爵家の娘が嫁いだという事実が何よりも重要なのだから。それに、わかるだろう?アイシャ。ベティは生まれた時から体が弱く繊細なんだ。あそこは年中寒くて土地も痩せている上に、魔族領も近い危ない場所だ。何が起こるかわからない。暖かく豊かな伯爵領で生活してきたベティをそんな場所に送っては可哀想だ」
「……はい?」
一瞬、何を言われているのかわからなかった。
それはつまり、私は可哀想ではないと、そう言いたいのか。私だってあんなところになど行きたくないのに。
アイシャは喉まで出かかった当然の疑問を何とか呑み込んだ。
たしかに、妹のベアトリーチェは生まれた時から体が弱い。けれど弱いと言っても風邪をひきやすいという程度のものだ。
北部に行けないほどではないだろうに。
(……いや。でも、風邪も拗らせれば死に至ることもあるものね)
アイシャは首を振り、心の中でそう自分に言い聞かせた。
父のこの提案は何か事情があるのだと、そう信じて。
「あー……、えっと、もしかして主治医がベアトリーチェの体は北部の気候に耐えられないと言っているのですか?」
「……さあ?」
「さあ、って……。ではどうして……」
「さっきから何なんだ、アイシャ。もしやお前はベティをあんな場所に送りたいのか?」
「でも、あの……。それが陛下の命令ならば仕方がないと思うのですが……」
「まあ!なんて冷たい子なの!ひどいわ!」
「なぜそんなことを言うんだ、アイシャ!」
皇命ならば仕方がない。身分制度とはそういうものだ。当然のことを言っただけなのに、母は『ひどい子だ』と目に涙を浮かべ、父は軽蔑するような視線をアイシャに送った。
何故なのだろう。何故、そんな目で見られなければならないのだろう。胸が痛い。
「ひ、ひどいと言われましても……。あんな場所、と称されるところになど、私だって行きたくありませんわ」
「わがままを言うんじゃない、アイシャ。家のために婚姻を結ぶのは貴族の娘に生まれた者の義務だ」
当然のように冷たく言い放つ父。アイシャはとうとう堪えきれずに、机を叩いて立ち上がった。
「で、では!なぜベアトリーチェはその義務を果たさなくても許されるのでしょう?ベアトリーチェがイアン・ダドリーの元に嫁がないのは義務違反ではないのですか!?」
「だからベティは体が弱いからと……」
「体が弱いと言っても、北部に行けないほどではないのでしょう?そもそもベアトリーチェに来た縁談なのに、なぜ私に押し付けて……、しかもそれに従うことが義務みたいにおっしゃるのですか!?あまりにも理不尽ではないですか!」
「……っ!屁理屈を言うな!そういう話をしているのではない!」
「ではどういう話なのですか!」
「ええい!うるさい!お前はいつからそんなに性悪になったんだ!一度部屋で頭を冷やしてこい!」
「ねえ、アイシャ。どうしてそんな言い方をするの?今日の貴女は貴女らしくないわ。いつもは妹のために尽くしてくれる優しいお姉さんなのに」
「……ハハッ、私らしい?優しいお姉さん?」
アイシャは母の言葉を鼻で笑った。
アイシャが妹に優しいのはそうであることを強要されてきたからだ。
ベアトリーチェが欲しがっているから、と亡き祖母が買ってくれたお気に入りのクマのぬいぐるみを譲よう言われた時も、体が弱いベアトリーチェが参加できないからと楽しみにしていた舞踏会を欠席させられた時も、『嫌だ』なんて言おうものなら激しく叱責された。
お姉ちゃんでしょう、我慢しなさい。
お前は健康な体じゃないか。
お前はベアトリーチェより恵まれているのに、わがままだ。
病気の妹が可哀想だとは思わないのか。
など、と。
(可哀想だなんて……、思えないわ)
この家では、いつもベアトリーチェばかりが優先される。少し体が弱いだけのくせに、この家のすべてが彼女を中心にして回っている。おかげで誰もアイシャを気にかけることはない。
それなのに、可哀想だなんて思えるはずがない。
アイシャは奥歯を強く噛んだ。ギリっと歯が擦れる音が微かに響いた。
「お、お姉さま……。ごめんなさい!私のせいで……」
この重々しい空気に耐えられなかったのか、ベアトリーチェは目に涙を浮かべてアイシャのドレスの袖を掴んだ。
彼女の澄んだ碧の瞳が涙で揺れる。だが、アイシャの心は何も感じない。罪悪感など、感じるはずもない。
ベアトリーチェは『ごめんなさい』と、そういえば何でも許されると思っているのだろう。本当に悪いと思っているのなら、ここで『予定通り、自分が嫁ぎます』と言うべきではないのだろうか。彼女自身が嫁ぎたくないとしても、せめて一言、『姉に押し付けるのはおかしい』と言うべきではないのだろうか。
この親はベアトリーチェの言葉なら聞いてくれるのに。
アイシャはぐっと眉間に皺を寄せ、さりげなくベアトリーチェの手を払った。
「ベティ、あなたは悪くないのよ。泣かないで」
「そうだぞ、お前が謝ることはない。アイシャがこんなことを言うのは、突然のことで動揺しているだけだから」
「アイシャ、あまり妹に心配をかけるものではないわ。とりあえず、婚姻の日までまだ時間はあるから少し頭を冷やしなさい」
肩を震わせてポロポロと涙を流すベアトリーチェを抱きしめる父と母。
これはなんて言う名の茶番ですか?、なんて嫌味が口から出そうで、アイシャはスッと席を立ち、食堂を出た。
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