ダーク・プリンセス

ノリック

文字の大きさ
42 / 45
「始まり、そして旅立ち」1

奪還6

しおりを挟む

* * *



「――なんじゃなんじゃ、侵入者じゃと!」

 ――黒球研究室。エニグマ博士は〈研究所〉に流れる侵入者の警戒警報に驚いていた。研究の邪魔になると邪険になる。

「侵入者など排除してしまえ!……まったく、黒衣の男などは何をやっているんじゃ」

「私なら、ここにいる」

「――こ、黒衣の男!」

 侵入者を気にする博士が黒衣の男の名を口にすると、もう既にどこからか黒衣の男が黒球研究室の中に入ってきていた。黒衣の男は腕を組み足を軽く曲げ壁にもたれかかっている。

「侵入者の排除という事なら任せておけ。今は研究所の奥への扉を閉めているが、もしもの時は私が参戦する」

「むぅ」

「その娘だが、娘の体には気を付けておくのだな」

 黒衣の男はそう言うと、研究所のどこかに消えていった。

 エニグマ博士はミシェルを見ると、何か思うところがあるのか一度黙ってから、喋り出した。

「――こんな娘のどこにあの黒球を動かす要素があるのかのう……ふふふ、ふっふふっふふふ」

 エニグマ博士はそう言って、不気味に笑い出すと研究用の資料を読み漁り始める――。



* * *



「これで何とかする!私に任せておくんだ!」

 ジョニーは背負っていたバッグからなんと機械に使う工具を取り出す。すると要塞の中の奥の扉に使われている部品を解体し始める。

「扉の部品を解体して、この扉を開ける!」

 ジョニーは熱心に扉の部品を解体している。ビルとニッシュは呆気にとられていたが、やがて感心し始めた。

「――そんなことが!」

「まぁ、さすが父ちゃんだな」

 ジョニーは手や体を動かし工具を使いながら「これはこう、これはこう」などと言って部品を解体する。

やがてジョニーは解体が扉のコンピューターの心臓部に達するとこう呟いた。

「プログラムキーが設定されているようだな。パスワードが設定されている」

 ジョニーはそう言ってしばらく考えると、ビルとニッシュにあることを言う。

「パスワードを攻略するのは時間がかかるから、扉の部品をもっと直接解体して……」

 ジョニーはそこまで喋って金属製のレイピアを手に取り、こう言った。

「このレイピアで直接扉を叩いて開ける!」

 ビルとニッシュはジョニーの言った事に唾を飲み込んだ。この人の言う事は大胆でいて、挑戦的だが頼りになる。

 ジョニーは扉を開閉するための箇所を直接工具で解体できるだけ解体した。そして金属製のレイピアを手に取る。

「ビル、ニッシュ、離れていなさい。ここは私一人で何とかする!」

 ジョニーはそう言うと、呼吸を整え、「コォオォー!」と息を吸って吐き、レイピアをぶんぶんと回すと右手に持ち構え出した。そして、

「セイヤァ!」

 と扉に向かって両手も使い、金属製のレイピアに全身の力を加えて強烈な突きを放つ。

 ゴォオォォォォン!

 扉は金属の鈍い轟音を立てる。それはまるで研究所の隅々まで響くようだ。

「凹んだ!」

「行けぇ、父ちゃん!」

 扉はジョニーの強烈な突きによって、真ん中に大きな凹みができる。ジョニーは更に突きを入れて、扉を開けようと試みる。

「ハァッ!ハァッ!セイヤァ!」

 ゴォオォォン!ゴォオォォン!ゴォオォォォォン!

 ジョニーは扉に向け強烈な突きの連撃を浴びせる、そして、

 グワァアァァァァンッッ!ゴンッ!

 扉はその頑丈な金属が疲労に耐えられなくなると、ジョニーが突きを放つ方向に倒れていった。ジョニーはついに扉を壊して開けてしまった。

「よし、開いた!」

「凄い!」

「よっしゃー!さすがだぜ!」

「ここからは、また闘いが始まるかもしれない。だが、必ずミシェルを助けるぞ!」

 ジョニーの声掛けにニッシュとビルが「はい!」「おう!」と答える。

 三人は研究所の奥に歩みを進める。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ

みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。 婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。 これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。 愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。 毎日20時30分に投稿

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

処理中です...