2 / 19
2
しおりを挟む
佐伯涼太先輩。私の一学年上の、中学時代と、高校に進学してからの先輩。幼い頃から星に興味のあった佐伯先輩は、中学時代と、高校に入ってからも天文部に所属している。小学校、中学校、高校と吹奏楽部に所属している私は、中学二年の夏休みのある時部活動で学校に来ていて、私が吹いているトランペットで、同じパートを何回も間違えた事を顧問の秋月先生に叱責され落ち込んでいた。そんな時、同じく部活動で学校に来ていて、その事を知った佐伯先輩が、私を訪ねてきてくれた。佐伯先輩とは同じ文化部で、私が一年の時に文化祭で知り合ってから、親しい間柄だった。
「池澤、今日の夜に、ちょっと学校に来ないかい?」
私を苗字で呼ぶ先輩。夜に学校に行くというのが不安だったけれど、先輩の優しい眼差しとその声に導かれて、私はその夜八時頃に、何とか学校に赴いた。その日は、夏の夜空が綺麗に見える晴天で、学校に行くと佐伯先輩が待っていてくれた。
「池澤、今日の夜空を見てごらん」
「うわぁ!」
その日の夜空は、一言では言えない程、星々が綺麗で、街の学校からでも星の輝きが見事に煌めいて見える。私は感嘆の声を上げ、満天の夜空に溜め息を漏らした。
「――綺麗……」
「だろ?」
そう言うと先輩は、夏の夜空について語り出した。
「夜空にうっすら白く輝く天の川があるだろ?その中に明るい五つの星が十字架の形に並んでいるのが、夏の星座の代表格のはくちょう座。このはくちょう座の一等星デネブから、天の川に沿って南に目を向けて見えるのが、わし座の一等星アルタイルとこと座の一等星ベガだよ。この三つの一等星を結んだのが夏の大三角形って言うんだ。そして七夕伝説の織姫星と彦星は、アルタイルとベガだって言われているんだ」
「うん、――素敵――」
私が感動していると、先輩は私を慰め話しかけてきてくれた。
「池澤、演奏少し間違えても、またいつか上手くやれればいいさ。星空は、こんなにも壮大で、魅力的なんだ。池澤もいつか吹奏楽で十分に上手くやれるよ。だから、元気を出して――」
佐伯先輩は、そう言ってくれた。私はそんな佐伯先輩を見る眼差しが、日中とは違っている。そんな事を後から意識した。
そして私達は、夜空を見上げ星々を観察すると、夜九時頃までには別れ、家に帰った。夜に帰り、両親は私を心配していたが、学校に用事で行ったの、と何度も話をして、その場は何とか収まった。
帰ってきてから、お風呂に入ってパジャマに着替え、ベッドに横になると、佐伯先輩の優しい声と笑った顔が脳裏に焼き付いて離れなかった。私を心配してくれて、吹奏楽部で頑張ってと元気付けてくれた先輩。そして、夜空の星々はとてもロマンチックな思い出として残り、私の心に温かさをくれる。
「――佐伯先輩――、――ありがとう――」
その夜、私は先輩を想い、眠りに就いた。
「池澤、今日の夜に、ちょっと学校に来ないかい?」
私を苗字で呼ぶ先輩。夜に学校に行くというのが不安だったけれど、先輩の優しい眼差しとその声に導かれて、私はその夜八時頃に、何とか学校に赴いた。その日は、夏の夜空が綺麗に見える晴天で、学校に行くと佐伯先輩が待っていてくれた。
「池澤、今日の夜空を見てごらん」
「うわぁ!」
その日の夜空は、一言では言えない程、星々が綺麗で、街の学校からでも星の輝きが見事に煌めいて見える。私は感嘆の声を上げ、満天の夜空に溜め息を漏らした。
「――綺麗……」
「だろ?」
そう言うと先輩は、夏の夜空について語り出した。
「夜空にうっすら白く輝く天の川があるだろ?その中に明るい五つの星が十字架の形に並んでいるのが、夏の星座の代表格のはくちょう座。このはくちょう座の一等星デネブから、天の川に沿って南に目を向けて見えるのが、わし座の一等星アルタイルとこと座の一等星ベガだよ。この三つの一等星を結んだのが夏の大三角形って言うんだ。そして七夕伝説の織姫星と彦星は、アルタイルとベガだって言われているんだ」
「うん、――素敵――」
私が感動していると、先輩は私を慰め話しかけてきてくれた。
「池澤、演奏少し間違えても、またいつか上手くやれればいいさ。星空は、こんなにも壮大で、魅力的なんだ。池澤もいつか吹奏楽で十分に上手くやれるよ。だから、元気を出して――」
佐伯先輩は、そう言ってくれた。私はそんな佐伯先輩を見る眼差しが、日中とは違っている。そんな事を後から意識した。
そして私達は、夜空を見上げ星々を観察すると、夜九時頃までには別れ、家に帰った。夜に帰り、両親は私を心配していたが、学校に用事で行ったの、と何度も話をして、その場は何とか収まった。
帰ってきてから、お風呂に入ってパジャマに着替え、ベッドに横になると、佐伯先輩の優しい声と笑った顔が脳裏に焼き付いて離れなかった。私を心配してくれて、吹奏楽部で頑張ってと元気付けてくれた先輩。そして、夜空の星々はとてもロマンチックな思い出として残り、私の心に温かさをくれる。
「――佐伯先輩――、――ありがとう――」
その夜、私は先輩を想い、眠りに就いた。
1
あなたにおすすめの小説
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました
さくら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。
裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。
「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。
恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……?
温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。
――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!?
胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!
契約結婚!一発逆転マニュアル♡
伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉
全てを失い現実の中で藻掻く女
緒方 依舞稀(24)
✖
なんとしてでも愛妻家にならねばならない男
桐ケ谷 遥翔(30)
『一発逆転』と『打算』のために
二人の契約結婚生活が始まる……。
その溺愛も仕事のうちでしょ?〜拾ったワケありお兄さんをヒモとして飼うことにしました〜
濘-NEI-
恋愛
梅原奏多、30歳。
男みたいな名前と見た目と声。何もかもがコンプレックスの平凡女子。のはず。
2ヶ月前に2年半付き合った彼氏と別れて、恋愛はちょっとクールダウンしたいところ。
なのに、土砂降りの帰り道でゴミ捨て場に捨てられたお兄さんを発見してしまって、家に連れて帰ると決めてしまったから、この後一体どうしましょう!?
※この作品はエブリスタさんにも掲載しております。
ある日、憧れブランドの社長が溺愛求婚してきました
蓮恭
恋愛
恋人に裏切られ、傷心のヒロイン杏子は勤め先の美容室を去り、人気の老舗美容室に転職する。
そこで真面目に培ってきた技術を買われ、憧れのヘアケアブランドの社長である統一郎の自宅を訪問して施術をする事に……。
しかも統一郎からどうしてもと頼まれたのは、その後の杏子の人生を大きく変えてしまうような事で……⁉︎
杏子は過去の臆病な自分と決別し、統一郎との新しい一歩を踏み出せるのか?
【サクサク読める現代物溺愛系恋愛ストーリーです】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる