画廊寄武等とyouれい!

須江まさのり

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第二章 『画廊寄武等とyouじん!』

43.闘いのゆくえ

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 宙に浮いている死神は、まさに死んだような目で何ともなしに辺りを眺めている、そんな様子に見えた。

 その視線の先が気になって見てみると、そこには胸のあたりから上半身と泣き別れになったアリアさんの下半身があった。

 その、胸から下の胴体が残っている三分の二ほどの体は、どうやって立ち上がったのかは分からなかったが、その足で辺りを確認するかのように地面を探り探りという感じで歩いている。

――なんだそれ? そっちも動けるのかよ?

 死神も同じような感想を抱いていたのだろう、ゲンナリとした虚ろな表情でそれを眺めている。

 そんなアリアさんの下半身はテレパシー的な力による操作ではなく、自律的に動いているのだろうか。そんな手探りならぬ足探りで、地面に突き立てられていたロングソードに辿り着きそれに触れると、そこから一歩ほど後ずさってから振り子のように右足を振り始めていた。

 その挙動から推察するに、前にある剣を蹴り飛ばすための素振りをしているような、そんな動きに思える。

 その先には、真剣白刃取りをしているアリアさんの上半身と、それをそのまま力任せに斬り落とそうとしている仮面の男が居るからだ。

――両手が塞がっているから、その膠着状態を打破するためにあの剣を蹴り飛ばそうとしているってわけなのか……。

 視覚情報が無く、そのロングソードのある場所も足探りで探していたのに、あの女神さんの居場所はどうやって知る事が出来たのだろう。

 その場所を知らせるためにアリアさんが無駄話をしていたのか、とも思ったがよくよく考えたら頭部が無いのだから聴覚も無い筈で、音で場所を感知できるわけもない。まあ、それを言ったら、頭部が無い状態で元気に自立行動出来ている時点でおかしいのだが……。

 結局、神だから何でもできる、で済ませるしかなさそうだ。

 それはともかく、イメージが固まったのかその下半身は最後に剣の位置を確かめるように軽く足で触れた後、その足を後ろに大きく振りかぶる。

 というか、そんな面倒な手順を踏まなくとも、そのまま仮面の男に背後から飛び蹴りでもしたほうが効率が良いような気もするが……。

 とはいえそれを意見するわけにもいかないだろう。そんな声を掛ければ、返ってその行動が相手に知られてしまうからだ。そうなってしまうと、それこそ目も当てられないので黙って見ているしかないのだ。

 ただ、宙からそれを見ていた死神のほうは僕とは逆にそれを阻止するべき立場だ。例え全てを諦めているのだとしても何もしないというわけにはいかないのだろう。ゲンナリとした様子ながらも、何かの呪文を唱えるようなしぐさをみせる。

 それを見てとった僕は、咄嗟に声を上げていた。

「気を付けろ、死神が何かしようとしているぞ!!」

「あん?」

 ただ、そんなこちらの助言を台無しにするかのように、そう答えたアリアさんが視線を向けた先は死神の居る空中ではなく、声を上げた僕のほうだった。

――こんな所で無駄に天然ボケを披露しないでほしいんだが!?

 そんなイラつきを覚えながらも「いや、こっちじゃなくてあっちを見ろ、あっち!」と指差すが、それも既に手遅れだった。

「……!」

 その声は聞き取れなかったが、死神が片手で印を結ぶように立てていた二本の指に弾けるような光を発生させる。それは見るからに何らかの攻撃魔法を発動させているようだった。

 とはいえ僕の素人目線から考えても、それがアリアさん相手に通用するとも思えなかった。それはそうだろう。先ほども大地を揺るがすような大雷ですら全く通用しなかったのに、そんな詠唱時間もほとんどない手のひらサイズの攻撃では蚊が刺した程度のダメージも与えられないのは明らかだ。

 死神はもう全てを諦めつつも、まだ抗おうとあがいている仲間への義理立てのような感覚で形だけ援護はしておこうという、そんな投げやりな考えで適当に放っただけなのだろうと、そう思えた。

 ただ僕は重要な事を忘れていた。

 その放たれた攻撃魔法、それはあの女神様が苦手としている電撃属性だった事をだ。

 それは一瞬の出来事だった。

 だが、死神の放ったソフトボール程度の大きさのそれを、アリアさんは躱す事も出来ずにもろに受けてしまう。

「きゃびっ!?」

 と軽く悲鳴をあげた彼女自体にはダメージは無かったようだが、ただその攻撃で体が反射的にビクリと反応した。

 もしそれが他の属性の魔法であったなら、それからの展開は変わっていなかったのかもしれない。

 だがその時放たれた電撃は、相手の刀の刀身を挟んでいたアリアさんの両手の力を僅かに緩ませる結果をもたらしていた。

「ぬおおおおおおおっっ!!」

 それまでガッチリと固定されていた力が緩んだその時、仮面の男は巻き沿いで自身にも降り掛かってしまっていた電流のダメージを無視しながら力を込め続け、ついにはその刃を、そのまま地面に向かって押し斬る事に成功するのだった。
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