画廊寄武等とyouれい!

須江まさのり

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第三章『画廊寄武等とYouしょく!』

61.何やってんの……?

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『あれ何この挿絵!? こんな話の流れだったっけ?』

 ふと気が付くと僕は、馬乗りになった〝あーちゃん〟が繰り出す拳の猛攻に晒されていた。

『な、なんで!?』

 確か、プンスカと可愛く怒っている女子との可愛いじゃれ合いのシーンだったはずだが、いつの間にか単なる拳の暴力へと変わっていることに驚愕しながらも、なぜそうなったのかを考えてみると、ふとその原因らしき記憶が甦る。

 「もーサイテー!! あたしの前で他の女の事なんか考えないでよ! めっ! めっ!!」

 と、可愛らしくポカポカ殴りつけてきた彼女に対し、その時に僕が言った言葉がどうやら原因らしい。

「なんで君は怒ってんだ? 脈略無さすぎだろ!」

 そう真顔で訊ねると同時に、あーちゃんの怒っている顔から戯れの要素が消えて激怒そのものへと変わった。

「そこはツッコミ入れるトコじゃねーだろ!! 鈍感にも程があるわ!!」

 という感じで、コミュニケーションとしての殴る行為が、凶悪な攻撃手段としての拳の行使へと変化したのだ。

「はぐっ! おごっ! ぐっはっ!!」

 物理的なマウントポジションから繰り出される彼女の攻撃は、まるで格闘家のような威力そのもので、その勢いはもう、いかに不死身であろうとも殺されてしまうのではないかという、そんな凄まじさだった……。

「くぅ!」

 身の危険を感じ必死でガードしようとする僕だったがそれは思い留まる。

 なぜなら僕のこの右手にはブラジャー様が握られているからだ。となれば、それを守るのが最優先である。残った左手もそちらの防御に回すしかない。

「ぐふぅ!」
 自分自身の防御が出来ない僕の体に、あーちゃんの拳が次々とねじ込まれ続ける!

「ごほっ!」
 その拳は石のように固く、更に速さが増し、次第に攻撃力が上がってゆく!

「おぶうぅ!」
 その威力は、たまたま上手くガードした僕の腕ごと破壊する威力で。

 そんな猛攻は、

「あー、ちゃん! なに、を、怒って、いる、のか、知ら、ないが、忘れて、くれ! ごめ、ん! あや、ま、るか、ら! お、お、願い、し、ます!」

 その拳を受ける度に言葉を詰まらせながらやっとのことでそう言い切るまで、その攻撃は終わらなかった。

――つーかあんたら何やってんの?

 そんな声が聞こえたのは空耳だったのか心の中だったのかも判断が出来ないほど、意識が定かではない状態の中、あーちゃんのとぼけた声が聞こえた。

「あ、あたしってばなんて事を!? タケトがボロボロじゃない?」

 猛攻がようやく止まってくれたのを感じ取った僕は、体中の痛みを無視して速やかに土下座の体勢を整えていた。

「な、なんだか知らないけどごめんなさい! なんか、すいませんっ!! 僕はどうなっても構わないので、どうかこのブラジャー様にだけは手を出さないでください!!」

 必死の土下座をする僕を、あーちゃんはきょとんとした表情で見下ろしながら、ぽつりと尋ねる。

「んー? なんで謝ってんの?」

「え? いや、なんだか怒らせてしまったようだったから……」

「へー。そうなんだ? 何か嫌な思いをしたみたいだけど、記憶から消しちゃったからもう平気だよ」

「……はぁ?」

 突然の豹変の連続に、訳が分からず呆けてしまっていた僕に彼女は得意げなポーズを取ってみせる。

「こうやって記憶の操作も自由自在だから、あたしはいつでもストレスフリー。イエイ!」

 得意げに主張する彼女に、僕は愚痴っぽく呟く。

「そんなことが可能だっていうなら、怒りを発散する前に忘れてくれりゃよかったのに……」

「何が? 一体どういう意味? んん……?」

 恨みがましい僕をよそに、彼女は全てを忘れ尽したことすら忘れているかのように既に罪の意識など欠片も無いようだった。

「まあいいさ。さっきの話で何か君を怒らせてしまうようなことを言ったみたいだから、それは謝ておこう」

「に? 何か話、してたっけ?」

「てかそれ忘れ過ぎだろ!!」

 突っ込みながらも、途方もない脱力感に包まれるのだった。

「……君の人生、それでいいのか……?」

「ふに? 何が?」

「まあ、君がいいのなら、それでいいんだが……」

 とりあえず一息ついて、体のダメージを回復させてから僕は言葉を続ける。

「……もういいや。最初の予定通りにもう寝よう! 僕は床で寝るから君はベッドを使うといい」

 あーちゃんとの会話に疲れはてた僕は、そう言ってふて寝をするように床に横たわると、すぐに眠りに落ちかけていた。

 そんな僕の寝姿を、複雑な気持ちで見つめているらしきあーちゃんの呟く声が聞こえる。

「あれ? ここって、ちょっぴりエッチなやり取りや駆け引きとかを二人で繰り広げる、そんなシチュエーションじゃなかったっけ? えーと……」

 と、首をひねっていたようだ。

「っていうか、可愛らしい女の子と部屋で二人っきりっていう、そんなシチュエーションで、何の感情も抱かない男子って何よ? こつんっ!」

 そう言いながら、僕の頭をグーで殴るあーちゃん。

 声を聞いた限りではその殴り方は〝ぽこっ!〟という擬音が相応しい、そんな可愛い殴り方のはずだが、実際にこちらが感じたのは〝会心の一撃〟のような豪快な音と衝撃で、僕の意識はまどろみ状態から一気に意識不明の状態に陥ってしまっていた。

「いっけない、ついつい加減を間違えちゃった。まあ、すぐ治るからいいんだけどね」

 薄れゆく意識の中でそんな声が聞こえた気がするが、もう起きる気も無い僕はそのまま眠りに入る。

「っていうか起きなさいよ? そして、ベッドの上で可愛い女の子と二人きりというそんなシチュエーションにドギマギするっていうのが、今のタケトの役割りなんじゃないの?」

 と、今度はきちんと手加減をしてこちらの頬を何度か叩いているようだったが、既に眠りに落ちている僕には、その言葉は聞こえていてもその意味を認識してなどはいない。

 寝ると念じれば、何があっても眠り続けられる。

 それは、〝あーちゃん〟の十八番と言ってもいい得意技で、その能力もちゃんと共有されているようだ。

 そんな中、彼女は語り続ける。

「ふぅん……。もう、あたしとの契約の力を使いこなしてるって訳ね。こんなにも早くその力を自分の物にし始めてるなんて、ちょっと想定外かも」

「……でも、そんなあなただからこそ……あたしはあなたを選んだんだよ」

『やっと見つけたあたしの同類。

 なんだかわからない力をその魂に秘めてる男。

 なんだかわからない存在のあたしにはきっとぴったりの存在ね。

 そう思ったから、あたしはあなたに力を与えたのよ』

「だから今はあたしの夢でも見て、早くあたしを好きになってね」
                                                            
 僕はその言葉の意味を理解することも無いままに、夢の中へと意識を移してゆく。

 ただ僕は、そんな暗示のような言葉に影響を受けることなど無いままに、全く別の夢を見ることになるのだった。
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