ある日の出来事-THE NANAKO'S STORY-

まっく

文字の大きさ
13 / 24
13章

選択

しおりを挟む
「はぁ…はぁ……ななこさぁぁん…本当にこっちなんですかぁ~?」

「いいから、付いて来て!」


俺と大野は地下道を走っていた。



バシコと爺さんと大量のブラックスーツたちに見送られ、なんとか城の外へ。

緊張しながらなるべく早く城から離れようと小走り。

しかし、爺さんの姿が見えなくなると、あっちこっちからブラックスーツたちが登場。


「うひゃぁぁ!ななこさぁぁん!なんなんですかぁ…これは…」

だよな…やっぱり…

「逃げなきゃ…!大野くん、こっち…」

とにかくブラックスーツのいない方へ猛ダッシュ!

まあ、そうだよな。
あのバシコが簡単に逃がしてくれる訳がない。



どんどん迫って来るブラックスーツの大群。



「さぁ!ここに入って!」

「えっ?マンホール…?ななこさん、何言ってん……」

「いいから早く入って!!!」



ふぅ~……
あぶねー… あぶねー…

地下道のことを知らなかったら、間違いなく捕まってたよ。


とりあえず爺さんの、あの部屋まで行かなくちゃ……


「ななこさぁぁん…もう走れませんよ…」

「もう少しだから頑張って…」


確かこっちの方だったような…
こんなことになるんなら、もっと地下道の地図を見とけば良かった。



「ななこさんってば!もう走れませんよぉぉ…」

よしっ!なんか見覚えのある場所まで来た。

どこだ?扉はどこだ?

「この辺の壁に小さな扉があるから、大野くんも探して…!」

「と、扉ですか?どんな扉なんですかぁぁ?」

「小さな扉よ!よく見て!」

「見てったって、こんなに暗くちゃ…」

とにかく早くみつけないと……


「あ、あったー!」

急いで中に入る。


「な、なんですか?ここは…?」

そうか、大野は初めてだよな。

「ここが博士の隠れ家よ。」

「あっ!牢獄で話してくれた…」


そんなことより…


「な、ななこさん、さっきから何をしてんですか?」

部屋中を探しまくる。

いない…ここにもいない…

僅かな希望だったけど…
やっぱりいねーのかよ……


トミー……


「はぁ……」

一気に襲ってくる絶望感。
体中の力が抜ける。

「な、ななこさん、どうしたんですか?なんか急に元気がなくなって…」

「あのね…  2人しかいないのよ…」

「2人…?」

「私と大野くんしか、いなくなっちゃったのよ…」

「はい!ぼくはここにいますね♪」

満面の笑みの大野。

いやいや、そうじゃなくって…

どうすんだよ…
どうしたらいいんだよ…


「あの~うぅぅ…ななこさん…?」

「どうすんのよ!これからどうしたらいいのよ!」

「ちょ…ななこさん、落ち着いて…」

落ち着けったって、落ち着ける訳ねーだろ!

「と、とにかく深呼吸しましょ!ほら一緒に…スゥ~……」

何言ってんだよ…

「ほらほら、こうやって両手を広げて…」

大野に腕を捕まれ、強引に動かされる。

「はい!スゥ~…ハァ~…」

「スゥ~…ハァ~…」

「そうそう… はい!もう一度…」

あれ…?なんだか落ち着いてきた。

「落ち着きました…かね?」

「あ…あぁ……」

取り乱してごめん。
でも…でも…

なんか気を張らないと、押し潰されちまいそうで…


ゆっくりとした口調で、大野が話し出した。


「うまく言えないんですけど…しょうがないってこと…あると思うんですよね…」

「しょうがないこと…?」

「そう…  しょうがないってこと。どうしても避けられないことってあると思うんですよ」

避けられない……

「避けられないことは、いつまでもどうやって避けようかって考えるより、避けられないなら、どうするべきかを考えないといけない訳で…」

確かに今の状況は、避けられない…

「今からぼくたちが考えなくちゃいけないのは、どうすれば一番いいのかってことで…」

「だからそれが分からないから悩んでるんじゃないのよ!」

「違います。やることは決まってるんですよ。どれをやればいいのかわからないだけなんです…」

決まってる…?


大野は黒板に書き出した。

「1つ目は博士を助けに行く…」

助けに行くたって、どうやって…

「…で、2つ目は2人で3次元に戻る…」

「待って!3次元に戻ったら博士が戻れなくなるじゃないのよ!」

俺たちだけで戻る…?
あんなに頑張ってくれた爺さんを見捨てるのかよ!

「それと……」

それと…???

「……3つ目は、とりあえず3次元に戻り、作戦を立ててから博士を助けに来る…」

そうか!それだ!
それがあった!

「さあ、ななこさん、どれを選びます?ぼくは3しか選びませんけど…ね♪」

ニッコリ微笑む大野。

「じゃあ、爆弾を使わないってことなのね!」

「そう…マシンを破壊したら、博士を助けに来れなくなりますからね♪」

そうか…とりあえず3次元に戻れば、じっくり考える時間もあるし…

ん…?
ちょっと待て…

「でも博士が心配してたように、私と大野くんがカウントしてる時に見つかったらどうするのよ?」

「う~ん…ですよね……」

なんだよ!
そこまでは考えてないのかよ!

ちょっとでも大野を見直した俺が馬鹿だった…

「う~ん…  う~ん…  あっ!」

ん?  なんだなんだ?

「2人で戻らなくても、どちらかが戻れればいいんじゃないですか…?」

「どちらかって…?」

「まず、ななこさんがブランコに乗ってカウントを始めるでしょ。それを見つかったらいけない訳だから、他のブラックスーツたちをぼくの方に引き付けておいて…」

「ちょ、ちょっと…それじゃ、大野くんが…」

「大丈夫!ななこさんが20カウントした時に、ぼくもそこに飛び込みますから…」

いやいや、それ以前に、お前がブラックスーツたちを引き付けるってとこが気になってんだけど…

「大野くんが引き付けるって…」

「ぼく、逃げ足は自信あるんですよ♪」

ニコッ…じゃねーよ。
なんだよ、その逃げ足ってのは…!

「もし、ぼくが捕まっても、ななこさんは戻れるから…」

「私、1人で戻ったって…」

「ななこさんは、戻らないといけないんです!絶対に戻らないといけないんです!」

なんだよ…

「ぼくは捕まっても大丈夫ですから!…って、捕まりたくないですけどね♪」

大野がつかまる…
1人で戻る…

なんだよ… 
なんで急にこんな変な気持ちになるんだよ…

不安…?

いや、これは違う…

怖さ……


「ななこさん……」

大野が俺の前に立ち、両手をそっと掴む。

「大丈夫です。ぼくがいますから…」

大野のまっすぐな瞳。
まただ…  なんだよこの気持ち。

なんで安心していくんだろう…


「さっ、ななこさん。2人で3次元に戻りますよ…いや…絶対に戻りますよ!!!」

こいつウインクしてきやがった。

でも…うん、悪くない。

絶対的な安心感。
うまく説明出来ないけど、こいつに付いていけば、絶対になんとかなるような気がする。


大野くん…
絶対に戻ろうね……



そして俺と大野は、あの公園へ、地下道を走り出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

処理中です...