ある日の出来事-THE NANAKO'S STORY-

まっく

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15章

2-1=0

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「う…うぅ……」


気が付くと公園に倒れていた。



「お…大野……」

どんだけ周りを見渡しても俺1人…



パーーーン!!!……………



そう…撃たれたんだよな…

あと少しで手が届く時に、左肩を撃たれて落ちていった大野……



なんだよ…これ……



なんで、こんなことになっちまったんだよ……



どうしたら…

どうしたら…

どうしたらいいんだよーーー!!!



本当に俺…
1人になっちまった…



俺は無意識のうちに歩き始めていた。

何も考えられない…
何も考えたくない……



「あら、奈々子、おかえり!ん?…どうしたの?暗い顔して……」

「……………」

無言で自分の部屋に入り、ベッドの布団に潜り込んだ。



大野…  大野……

ダメだ……
何度もあの場面を思いだしてしまう……



寒い…
なんでこんなに寒いんだ……



『大丈夫です。ぼくがいますから…』


嘘じゃねーかよ……


『ななこさんは、ななこさんのままでいいんですよ♪』 


そんな顔で言うんじゃねーよ……


ダメだ…
もう止まらない……



ちくしょー……  ちくしょー……



泣きながら一睡も出来ず、朝を迎えた。





いつもと変わらない1日。


ただ違うのは、帰り道に大野がいなかったことだけ……


やっぱり、いないんだ……



いつも隣を歩いていた奴が、いなくなっただけ…
ただそれだけなのに、なんなんだ…この孤独感……


あいつと何話してったっけ…?
ダメだ…給食の笑顔しが出てこない。


なんだよ…
なんなんだよ……

なんで大野のことばかり考えてんだよ…


いつもヘラヘラしてて、俺の話しを何でも真剣に聞いてくれて、突然、変なこと言い出したりして……


ただそれだけなのに…


胸が痛い…

誰か…  誰か…


俺を1人にしないでくれ……


頼むからいつもみたいに、話しかけてくれ……


大野……


お前は俺の何なんだ……?


なんでいねーんだよ!


ダメだ…
自分に押し潰されちまいそうだ……



コンコン……


「奈々子…ちょっといい…?」

部屋にずっと閉じこもっていると、母ちゃんが入ってきた。


「奈々子…何かあったの…?」

優しく話しかけてくる母ちゃん。

「……あ…うん…まあな……」

「そっか……やっぱりあったか……」

そう言ったっきり、何も聞いてこない。
ずっと側にいるだけ。



何か言いたいけど、張り裂けそうな気持ちの中、なかなか言葉が出て来ない。



「あのさ…あの…」

「なあに…?」

「もしさ…母ちゃんの大切な人が、大変なことになってたら…いや…大切な人って言うか……」

「大切な人かぁ~…例えば私の場合、子どもたちってこと…?」

「いや…そうじゃなくて…もっとこう…なんて言ったらいいんだろ……」

「ん…?家族とかじゃなくて…あっ!好きな人のこと…?」

「いや…好きって言うか…」

俺、何言ってんだ……

「その大切な人が大変なことに巻き込まれてしまったら、どうしたらいいんだろうって……」

「う~ん…奈々子はどうしたいの…?」

「どうしたいかわからないから悩んでんだよ…」

「ううん…違うの。奈々子は助けてあげたいんでしょ。守ってあげたいから悩んでるんでしょ?」

「えっ…」

「大切な人なら絶対に助けるべきよ。絶対にダメだとわかってても助けに行かないと…」

「母ちゃんは助けに行くの?」

「あのね……」

母ちゃんはゆっくりと話し出した。

「明夫さん…奈々子は小さくて覚えてないと思うけど、お父さんのこと……」

俺が2歳の時に亡くなった父ちゃん……

「もう会えなくなって、こんなに時間が経ってしまったのに、未だに後悔してるのね……」

少し悲しそうな母ちゃん。

「治らない病気…絶対に治らないとわかっていても、もっと何か出来なかったのかって、ずっとずっと思ってるのよ」

それは…

「明夫さんに会いたいのよ。ずっとずっと会いたいの。ずっと好きなままなの…愛しているの……」

母ちゃん……

「だから大切な人の為には、出来る限りのことをやるべきなの!会えなくなっちゃうと何も出来なくなるんだから……」

「で、でも…俺が出来ることなんて……」

「奈々子…不安な気持ちはわかるわ……」

俺の目をしっかり見つめる母ちゃん。

「あのね…"2-1=0"なの…明夫さんがいなくなってよく分かった。いなくなったら何も考えられなくなっちゃうの……」

「……………」

「でもね、明夫さんの気持ちは、ずっと私の中で生き続けてるわ。いつも、貴子…何してんだ?頑張れよ…って……」

母ちゃん……

「俺……何か出来るのかな……」

「奈々子!」

俺の両手をギュッと握りしめる母ちゃん。

「あんた、私の子なのよ!何泣き言言ってんのよ!しっかりしなさい!」

「そうか…そうだよな……」

「そうよ!きっとその大切な人も、奈々子を待ってるはず……」

大野の笑顔が頭をよぎる。

「待ってるのかな……」

「大切な人を信じて飛び込んで行きなさい!」

「お…  おう……」

「後悔しないように、全力で行くのよ!」

母ちゃん…
ありがとう。
本当に本当にありがとう。

なんだかさっきまで真っ暗だったのに、大きな光が見えてきた。



コンコン…


「母ちゃーん!中にいるのー?」

六実アニキの声だ。


「いるわよー!どうしたの?」

「なんか大きな声がしたから…」

「今、奈々子と大切なガールズトークをしてるの…」

ガ、ガールズトーク…???

「もう少ししたら終わるから、男の子はあっちに行っておきなさーい!」

「あーい!」



「なんだよ…ガールズトークって…」

「いいじゃないのよ。ガールズトークには間違いないんだから…」

「ガールズトークねぇ……」

「そっ!ガールズトーク♪」


どちらからとなく笑いが込み上げてきた。
なんだよ?ガールズトークって……


そう思いながら心の片隅で、「そうだ…俺って、女なんだよな…」と思う俺がいた。
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