ある日の出来事-THE NANAKO'S STORY-

まっく

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23章

別れ

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3人はブランコを見つめていた。


ドーーーーン!!!


「終わったな………」 

「あぁ……終わった………」


寂しいような、スッキリしたような…
すげー変な感じ………



長い沈黙のあと、ゆっくりと博士が話し出した。


「なんかうまく言えんが、本当にすまんじゃった!」 

2人に深く頭を下げる。 

「いやいや…博士。博士は何も悪くなんか…」 

「そうですよ!本当に偶然の出来事だったんですから…」 

「いやいや…そもそも、わしが、こんな物を作ってしまったから…」 

何回も頭を下げる。 

「ちょ、やめて下さい!せっかくこうやって、3人無事で戻って来れたんだから…」 

「わしは間違っておった…自分の欲で研究を続け…いやぁ~…いかんいかん…これからは、もっと人々の役に立つものを作っていこうと思う。」 

「ディメンジョンマシンだって、もっと研究すれば、役に立つかも…」 

「2人をこんな目に合わせたのにか…?」 

そう言われると………

「そうだ!今回のことをずっと忘れないためにも、これから作っていくものには、何か印を…」 

「印…?マークですか…?」 

「いやいや、マークとかじゃなくて…そうじゃ!奈々子さんと大野くんとわしで…」 

3人で…? 

「う~ん…奈々子…ななこ…NANAKO…  あっ!これじゃ!」 

名前…? 

「奈々子さんがN、大野くんがO、で、わしがダイリックじゃからD!」 

????? 

「NOD…『ノッド』ってどうじゃ?」 

「いきなり、どうじゃと言われても…」 

「いや、気に入った!『ノッド』これにしよう!」 

「あのぉ~…なんかよくわからないですけど、いいと思います!」 

わからないけどって、なんだよ! 

「じゃろ!そうじゃろ!よしっ!これからはこの名前でやっていく!よぉーし!やる気が出てきたぞぉー!!!」 

「ノッドかぁ…」 

なんかわからないけど、自分の名前が入ってるだけで、なんか嬉しくなってくる。 

「よしっ!研究所に戻って、すぐに始めないと…」 

「ちょっと…もう、行っちゃうんですか?」 

「わしはな、思ったら、すぐに始めないと、気が済まんのじゃ!じゃあ、またな!」 

手を振りながら、走って行く博士。 

「ちょっと…!」 

「あ、ぼくが引き留めてきます!」 

博士を追って行く大野。 

も~う…
あの爺さんらしいったら、らしいんだけど…
落ち付きがないって言うか、なんて言うか…

にしても、ホント不思議な爺さんだったなぁ…
いきなり銃を持って現れて、マンホールに連れ込まれて… 

大野を助けに行く時だって、あれ、絶対、勢いで行動してたんだよな。
結局、捕まっちゃったしさ………


ん…?
戻って来ないぞ… 

何してんだ…? 

あっ!
ひょっして、俺のことを大野に… 

ヤバい!!!


タッタッタッタッ………


あれ…?どこだ…?
いねーぞ………


タッタッタッタッ………


あっ!あの人影は…


近付いて行く。


「おーい!何してんのよぉー!なかなか帰って来ないから…」 

えっ…お、大野………… 

倒れている博士の横に大野が立っている。 

「お…大野くん…?」 

なんだ…?
なんで博士が倒れてんだよ! 

「ななこさん……」 

な、なんだ…
大野の様子が……… 

「あの………」 

近付いてくる大野。 

なんだよ…
なんなんだよ……… 

思わず後退りしてしまう。 

「大野…く…ん…?」 

まさか…
まさかだよな……… 

おい!何か言えよ! 

「………見ちゃいましたか…?」 

な、何をだよ…
本当に大野が博士を………

「お、大野くん…博士に何をしたの!?」 

「ななこさん………ちょっと聞い………」 

ダッ! 

逃げなきゃ!
大野から逃げなきゃ! 

「ななこさん!聞いて下さい!」


タッタッタッタッ……… 

なんでだよ…
なんで…なんで大野が……… 


ガシッ! 


「ななこさん!」 

「はなして!はなせ!」 

「ななこさん!聞いて下さい!」 

「博士に何をしたのよ!」 

「違うんです!ちょっと聞いて下さい!」 

「聞けるかよ!」 

「ななこさん!大切な話しがあるんです!お願いだから!」 

「はなせったら!」 

「ななこさんには、ちゃんと話しがしたいんです!」 

「話しなんかない!」 

「聞いて下さい!!!」 

大野に両手を捕まれる。 

大野の真剣な顔… 

なんだよ…
なんで、そんな顔してんだよ………


「とにかく落ち着いて!何もしませんから!」

「ほ、本当に、何もしないんだな…?」 

「絶対にしません!」 

「じゃあ博士は、何で、倒れてたんだよ!」 

「それも、ちゃんと説明します!」 

「やっぱりお前がやったんじゃないかよ!」 

「ななこさん!もう時間がないんです!」 

時間…??? 

「聞いて下さい!!!」 

両手をぎゅっと握られる。
真剣な顔。
真っ直ぐ見つめて来る目。 

大野のこんな顔、初めて見た。 

「聞いてくれますね………?」 

「……………」 

「大切な話なんです。」 

「………わかったよ。」 

「ちょっと公園に戻りましょうか。」 

大野のあとをついて行く。 

なんだ、この変な気持ちは… 

大野から逃げたいのに、逃げたくない俺がいる。
話しを聞きたくないのに、聞かないといけないと思う俺がいる。 

なんなんだ…?





「このベンチにすわりましょう。」 

薄暗い公園のベンチに座る2人。


無言の時間が流れる。


言葉が出ない。
なんか喋ってしまうと、何かが壊れてしまうようで………


大野…
何で、黙ってんだよ。 

心が押し潰されそうだ。


「あのですね………」 

「うん………」 

「まず、博士が倒れているのは、確かにぼくがやりました………」 

「……………」 

「で、でも、ただ眠っているだけで、命に別状はありません。少しの間、眠ってるだけです。」 

「なんでそんなこと………?」 

「それは………」 

「………うん」 

「博士の記憶を消したのです………」 

「き…記憶!お前、何言って………」 

「だから、ちゃんと聞いて下さい!大切な話しなんです!」 

「だって………」 

「ぼくは、この世界の人間じゃないんです。」 

………!!! 

「お…お前も、他の次元から………」 

「違います!ぼくは、未来から来たんです!」 

「おいっ! ふざけんなよ!そんなことある訳………」 

「お願いですから聞いて下さい!もう時間がないんです!ななこさんには、ちゃんと説明したいんです!お願いだから……」 

大野の必死な眼差しに圧倒される。 

「7次元のことも、最初は信じられなかったでしょ!でも、本当だった。ぼくの話しも本当なんです!信じて下さい!」 

「そうだよな。本当に起きたんだよな………」 

「だから、ぼくが未来から来たのも、本当なんです!信じて下さい!」

「……………」 

「これからどんどん少子化が進み、労働人口が減り、ぼくの時代では、ぼくの年齢でも働くようになってるんです。」 

「未来って、この3次元の未来の話しなのかよ!」 

「そうです。ぼくは、この世界の未来から来たんです。」 

「未来………」

必死に自分に信じ込ませる。 

「ぼくは未来の世界の警察で仕事をしていて、今回、ダイリック博士の救出命令が出たんです。」 

「お前、警官なのかよ……」 

「はい。まだ警察に入ったばかりですが…」 

凄いな…
俺と同じ歳で、もう働いてんのかよ。 

「ダイリック博士は、今回の出来事がきっかけとなり、これから重要なシステムを開発するんです。ぼくの暮らす未来では、制御系の機械の80%以上に使われていて、人々の暮らしに絶対に必要なシステムなんです。」 

確かに爺さん、これから人々の役に立つものを作るって言ってたな… 

「だから、ダイリック博士の救出のために、ぼくが派遣されたんです。」 

「お前1人だけで…?」 

「今回のような、タイムパトロールの基本は、その時代の歴史になるべく影響しないように1人で行動するんです。」 

「へぇ~…そうなんだ。」 

「だから任務が終わると、ぼくが関わった記憶などを消さなければいけない。」 

「だから、博士は…」 

「そうです。今回の件に関する最小限の記憶を削除させて貰いました。」 

「ん…?記憶…?」 

俺の記憶……… 

「ちょっと…記憶って………」

大野の記憶… 

「今回の記憶って…お前との記憶は……」 

あれ…
頭が混乱してきた……… 

「だって、ずっと一緒に帰っていたし…色んな話しをしたし…」 

「……………」 

「あれ…?ちょっと待て…訳がわからなくなってきた………」 

だって、大野との記憶は、今回よりも、ずっと前から……… 

あれ…?
いつだ………? 

大野………
わからない…………… 

「それは………ぼくがインプットした記憶です。」 

「えっ…………?」 

「今回の任務のために、ぼくが作ったんです………」 

「ちょ、ちょ… 何だよ… 何なんだよ………」 

心が…
心が崩れそうだ……… 

違うだろ…
大野はずっと前から… 

だって… だって……… 

くそみたいな毎日。
何をしてもダメな俺。 

いつも笑わせてくれて。
いつも励ましてくれて。 

「ななこさん………」 

「嘘だろ…おい!嘘だと言ってくれよ!」

「……………」 

なんだよ… なんだよ…
なんなんだよーーー!!! 

何を言っても聞いてくれた大野。
いつも一緒にいてくれた大野。 

「だって… だって………」 

「ななこさん………ごめんなさい…」 

あやまるなよ!
嘘だと言ってくれよ! 

「違う……… 違う……… 絶対違う………」 

「……………」 

「じゃあ… じゃあ… お前が、俺のことを思ってくれてるってのも、嘘なのかよ?」 

「そ…それは………」 

「違う!絶対違う!」 

「ななこさん………」 

「だって…だって…じゃあ、俺の今の気持ちは何なんだよ!この今の気持ちは!」 

大野の作った記憶なんかじゃない。
今、この今の気持ち。 

「俺は… 俺は………」


ピー! ピー! ピー! ピー!


「ななこさん………もう戻らないと…」 

「ちょっと、まだ、話が………」 

「もう時間がありません!」 

「まだ言わなくちゃいけないことが…」 

「このままじゃ、強制削除されてしまいます!全ての記憶が消されちゃいます!ななこさんは…ななこさんは、ぼくの手で、ぼくがやりたいんです!」

「強制削除って…」 

「さあ…この光を見つめて………」 

うっ…体の力が……… 

「記憶… 大野との記憶… この大切な記憶だけは消さないで………」 

「ななこさん、しょうがないんです………」 

「だって……… だって……… 俺はお前のこと………」 

そっと抱き締められる。 

暖かい……… 

「言わなくてもわかってます。」 

「………だったら、消さないで……… お願いだから………」 

どんどん意識が無くなっていく。 

「………だって………俺は………」 

奈々子の耳元でささやく。 

「ななこさん………ぼくも愛してます。」 

「………お………おお………お…お…の…く…ん………」 

大野の顔がぼやけてきた。 

嫌だ… 大野……… 

「………いか………ない………で………」


消え行く意識の中、大野の声が頭の中に響く。 

「………さん… たくさんの愛をありがとう………」
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