視える私と視えない君と

赤羽こうじ

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真相

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 部屋を出て、笑みを浮かべながら意気揚々と歩く志穂に叶が声を掛ける。

「志穂さんここからどうするつもりですか?」

「私は外に出て三条さんにお話聞きに行くから、鬼龍ちゃんは出来れば残って悪党共を見張っててくれない?」

「なるほど、わかりました。気を付けて下さいね。何かあったらすぐに連絡しますから」

 叶が声を掛け終わる頃には志穂は階段に向かって振り返り歩き出していた。

 残された叶は見張りを任されたものの、誰をどう見張ればいいのかと少し頭を悩ませる。

「ふぅ、とりあえず幸太君誘って朝食でもいただこうかな」

 一人呟き、幸太の部屋の前に立つと軽く扉をノックする。するとすぐに幸太が顔を覗かせた。

「叶さん」

 顔を出し、すぐに満面の笑みを浮かべる幸太を見て、叶も思わず破顔してしまう。

「とりあえず朝ごはん食べようか」

 叶の言葉を聞き、笑顔で頷き幸太も部屋から出てくる。二人並んで階段を降り、食堂へと入ると二人に気付いた西園が駆け寄って来た。

「あっ、ちょうど朝食の準備が整った所です。さぁお席へどうぞ」

「ありがとう、池江さんはまだ三条さんの捜索かしら?」

「あっ、いえ、池江は先程戻りまして今支度中です」

「ああ、そう」

 素っ気なく返事を返すと幸太と共に席に着き腰を下ろした。

 池江さんが捜索に手を取られてたら逆に西園はこちらの世話で動けないかと思ったけど、そう上手くは行かないかぁ――。

 叶が頬杖をつきながら軽くため息を漏らすと幸太が心配そうに顔を覗き込む。

「叶さん?何かあった?」

 不意の問い掛けに慌てて笑顔を作る。

「えっ?ううん、何もないよ。どうした?」

「あっ、いや、なんか少し難しそうな顔をしてたからさ」

 幸太に言われ少し苦笑しながら眉間に寄った皺を伸ばすように指でなぞって微笑みかける。

「ごめんごめん。これでいつもの綺麗な顔になったかな?」

「大丈夫、叶さんはどんな顔してても綺麗だから」

 恥ずかしげもなくそう言ってのける幸太だったが、叶の方が思わず頬を赤らめる。

「そう言ってくれるのは有り難いけど、今のは笑ってくれなきゃ私がかなり痛い奴になるでしょ」

 そう言って笑うと幸太もようやく笑っていた。

「朝から仲が良いね。邪魔しちゃ悪いかな?」

 そう声を掛けられ声のした方に視線を向けると、そこには柔和な笑みを浮かべた嵯峨良が立っていた。

「嵯峨良さんおはようございます。大丈夫ですよ、早く座って下さい」

 叶が促すと嵯峨良も軽く会釈しながら椅子に腰掛けた。

 暫くすると義人や朱里に華月、それに貴之夫妻や義将会長も続々と食堂に姿を現し、最後に神谷崎が姿を見せる。
 徐々に騒々しくなる食堂に少し遅れて池江が姿を見せると、ティーポットを持ち叶達の元へと歩いてやって来た。

「遅くなりました、すいません」

 丁寧に頭を下げながら池江が全員の前に置かれたティーカップに紅茶を注いでいく。
 紅茶の優しい香りが漂う中、叶が池江に語り掛ける。

「大丈夫ですよ池江さん。三条さんの手掛かりみたいなのは見つかりました?」

「いえ、まだ何も見つかっておりません。残ってる者達だけでは皆様に御不便をお掛けするかもしれませんので一旦捜索は中断して、私と堀も戻って参りました」

「そうですか。池江さんも堀さんも大変でしょうから、お昼から皆で捜索にあたりましょうか?それまではお二人共通常業務をされながら少し休憩もした方がいいんじゃないですか?私達もその方が安心ですし」

「ありがとうございます。鬼龍様の御提案、堀に相談させていただきます」

 池江は丁寧に頭を下げると踵を返し、ゆっくりと歩いて行く。

 これで上手くいけばお昼までは全員屋敷に留まらせる事が出来る。後はあの三人が変な動きをしないか上手く監視しなきゃ――。

 離れたテーブルにいる神谷崎と朱里達を見つめながら目の前に運ばれて来る朝食にゆっくりと手を伸ばしていく。

 やがて朝食が終わりまず嵯峨良が席を立つと幸太が不意に問い掛ける。

「叶さんはもうちょっとゆっくりする?」

「そうね、とりあえず食後の珈琲をゆっくり飲もうかなって」

「そっか、俺はちょっと外で煙草吸って来てもいいかな?」

「ああ、OK。幸太君、スマホだけはちゃんと持っててね」

 叶の言葉に幸太は少し戸惑いながら笑みを浮かべて立ち上がると、ゆっくりと食堂を出て行く。
 それを見送った叶は食堂に残った者達を注視しながら素早くスマホを手に取る。

 (幸太君、煙草を吸いながら屋敷から誰も出て行かないか見ていてほしいの。もし誰か外に出て行きそうならすぐに私に教えて)

 幸太にそうメッセージを送り、食堂全体に目を向ける。
 各々がまだ朝食を取り、雑談を繰り広げていた。

 正直、こうやってじっとしてるのは性にあわないなぁ。まだ動いてる方が楽なんだけど、今回は仕方ないか。でもあの人はまだ何かを警戒してるのかな?――。

 叶が食堂全体に目配りをする中、小夜子の霊も険しい表情のまま全体を見つめていた。
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