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出会い⑫
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「何?顔に何か付いてる?」
幸太の視線に気付いた叶が笑顔で問い掛けると、幸太は慌てて目線を逸らした。
「あ、いや、すいません。その鬼龍さんが――」
「ちょっと待って」
幸太が謝罪を口にし取り繕おうとした時、叶が人差し指をぴんと立ててそれを遮る。
「君さぁ、すぐ謝るね。私は別に怒ってる訳でも咎めてる訳でもないのに」
「あ、すいません。癖なんですかね……」
「また今も……ふぅ、まぁいいか。少し変な質問してもいい?」
叶は笑顔を作り幸太を覗き込む様にして尋ねてきた。その愛らしい笑顔に思わず幸太も胸が高鳴る。
「は、はい。何ですか?」
「この街、怪談話や心霊スポットみたいな所もあるよね。何か知ってる話、教えてくれない?」
『質問ってそっちか……』
自分の事を聞かれるのか、と一瞬でも頭をよぎった幸太は少なからず落胆した。しかし幸太は悟られないようすぐに笑顔を作ると、海女の話を叶に伝える。
「……へぇ、なるほどね。よくありそうな話ではあるんだけど、身を投げた女の霊か……」
話を聞いた叶は口元に手を添えて、頷き少し考えている様に幸太は見えた。
『鬼龍さんは心霊に興味があるのか?』
叶の反応や仕草を見て、そう思った幸太が更に続ける。
「鬼龍さん。この海女の話、実はもうちょっと話があるんです」
幸太がそう言うと叶はキョトンとした表情を見せた。普段クールで人を見透かした様な笑みを浮かべている事の多い叶が不意に見せたその表情に、幸太の心は僅かに和んだ。
「俺も詳しくは知らないんですけどね、十数年前に実際にサーフィンをしていた人が一人行方不明になっているらしいんですよ。そしてその直後から浜辺で一人佇む女の人がいた、なんて言う噂話も出始めて海女の話が急速に広がったみたいなんです」
「なるほど、実際に人が行方不明になってるんだ……」
補足された幸太の話を聞き、叶は自らの唇を人差し指でとんとんと、軽く触れながら空を見つめた。
そんな叶の仕草を幸太が見つめていると、視線に気付いた叶がなめまかしく微笑む。
「何?何かあるなら言ってくれた方が楽なんだけど」
そう言って微笑む叶を見て幸太は眉尻を下げると、困った様な笑みを浮かべる。
時折見せる貴女のその微笑みが艶っぽいんです――。
そんな事を告げられる筈もなく、幸太は苦笑しながら視線を外した。
「いや、その、何かあるって言うか……色っぽさを感じると言うか」
「へぇ、倉井君は私の事そんな風に見るんだ。送ってもらってるけど実は一番危険なのかもね」
叶が半目で幸太を見つめ、口元は薄らと笑みを浮かべると、幸太が慌てて否定する。
「いや、違う。そんな変な意味じゃなくて、その、ほら、なんて言えばいいんですか……」
幸太が焦りながら言い訳を並べるも言葉に窮してしまう。すると叶はくすくすと笑い出した。
「ふふふ、冗談だって。それにね、色気を感じないって言われるより感じるって言われる方が女としては嬉しいと思うよ」
幸太を見つめながら悪戯っぽく笑う叶を見て、幸太も笑みを浮かべた。ころころと変わり、少しずつ違う笑みを見せる叶のおかげで幸太の心も少しずつ解されていく。
はたから見たら楽しそうなカップルに見えていたかもしれない。しかしそんな二人を少し離れた所から面白くなさそうに見つめる人物がいた。
唯である。
唯は不機嫌そうに眉根を寄せたまま、楽しそうに笑っている二人の元へと歩んで行く。
幸太の視線に気付いた叶が笑顔で問い掛けると、幸太は慌てて目線を逸らした。
「あ、いや、すいません。その鬼龍さんが――」
「ちょっと待って」
幸太が謝罪を口にし取り繕おうとした時、叶が人差し指をぴんと立ててそれを遮る。
「君さぁ、すぐ謝るね。私は別に怒ってる訳でも咎めてる訳でもないのに」
「あ、すいません。癖なんですかね……」
「また今も……ふぅ、まぁいいか。少し変な質問してもいい?」
叶は笑顔を作り幸太を覗き込む様にして尋ねてきた。その愛らしい笑顔に思わず幸太も胸が高鳴る。
「は、はい。何ですか?」
「この街、怪談話や心霊スポットみたいな所もあるよね。何か知ってる話、教えてくれない?」
『質問ってそっちか……』
自分の事を聞かれるのか、と一瞬でも頭をよぎった幸太は少なからず落胆した。しかし幸太は悟られないようすぐに笑顔を作ると、海女の話を叶に伝える。
「……へぇ、なるほどね。よくありそうな話ではあるんだけど、身を投げた女の霊か……」
話を聞いた叶は口元に手を添えて、頷き少し考えている様に幸太は見えた。
『鬼龍さんは心霊に興味があるのか?』
叶の反応や仕草を見て、そう思った幸太が更に続ける。
「鬼龍さん。この海女の話、実はもうちょっと話があるんです」
幸太がそう言うと叶はキョトンとした表情を見せた。普段クールで人を見透かした様な笑みを浮かべている事の多い叶が不意に見せたその表情に、幸太の心は僅かに和んだ。
「俺も詳しくは知らないんですけどね、十数年前に実際にサーフィンをしていた人が一人行方不明になっているらしいんですよ。そしてその直後から浜辺で一人佇む女の人がいた、なんて言う噂話も出始めて海女の話が急速に広がったみたいなんです」
「なるほど、実際に人が行方不明になってるんだ……」
補足された幸太の話を聞き、叶は自らの唇を人差し指でとんとんと、軽く触れながら空を見つめた。
そんな叶の仕草を幸太が見つめていると、視線に気付いた叶がなめまかしく微笑む。
「何?何かあるなら言ってくれた方が楽なんだけど」
そう言って微笑む叶を見て幸太は眉尻を下げると、困った様な笑みを浮かべる。
時折見せる貴女のその微笑みが艶っぽいんです――。
そんな事を告げられる筈もなく、幸太は苦笑しながら視線を外した。
「いや、その、何かあるって言うか……色っぽさを感じると言うか」
「へぇ、倉井君は私の事そんな風に見るんだ。送ってもらってるけど実は一番危険なのかもね」
叶が半目で幸太を見つめ、口元は薄らと笑みを浮かべると、幸太が慌てて否定する。
「いや、違う。そんな変な意味じゃなくて、その、ほら、なんて言えばいいんですか……」
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「ふふふ、冗談だって。それにね、色気を感じないって言われるより感じるって言われる方が女としては嬉しいと思うよ」
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