夏の日の出会いと別れ~霊よりも怖いもの、それは人~

赤羽こうじ

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動画撮影

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 幸太と別れ、部屋に戻った叶は冷蔵庫を開けると缶ビールを取り出した。勢いのまま、缶ビールを開けると一気に喉に流し込む。
 ふぅ、と息をつくと、ゆっくりとソファに腰掛けた。

「なんなんだろねぇ、あの子達。あんまり深入りしたくはないけど、どうしよっかな」

 叶が今日の事を振り返りながら一人呟いていた。
何かあるかと思い浜辺に行くと、先日会った幸太が再び負のオーラを背負い立っていた。気になり声を掛けようか悩んでいると、幸太の方も気付いた様だったので近付き声を掛けてみた。
 その後、幸太に連れられ入った海の家で咲良や弘人に出会い、久しぶりに楽しい歓談の時間を過ごす事にもなった。

「悪い人達じゃないんだろうけど……だから余計に……」

 叶は呟き、更にビールをあおった。

「あそこまでコケにされるんだもんねぇ……まぁ言う方も言う方なら、言われる方も言われる方かもね」

 帰る途中、唯に出会い、好き放題言われていた幸太を思い出していた。

「……良い人だけじゃ駄目だよ倉井君」

 誰もいない部屋に叶の独り言だけが響いた。
 叶はそのままソファに身体を預けるといつの間にか眠りについてしまった。

「……あの子なんか気味悪くない?」
「もう無理だよ。一緒にいたくないんだ」
「やだ気持ち悪い」

 自身に向けられる罵詈雑言とも言える悪口を叶は笑みを浮かべながら聞いていた。
 そんな場面でふと叶は目を覚ます。
「ふぅ、夢か……普通じゃないもんね。分かってるよ」
 そう呟き窓の外に目を向けると、暗くなっており、夜の帳は既に下りていた。
 叶は立ち上がると再び冷蔵庫の前に立つ。徐に冷蔵庫を開けると自らの頭を軽く掻いた。

「晩ご飯の材料買ってないじゃん」

 ほぼ空っぽの冷蔵庫を見つめて叶が呟く。

「今日はコンビニでいいっか」

 仕方なく叶は部屋を出ると近くのコンビニへと向かった。その道中で叶は突然声を掛けられる。

「あ、ちょっとお姉さん。お願いお願い、ちょっと止まって」

 軽い調子で声を掛けられ、叶はうんざりした様な表情を浮かべる。叶はその容姿から声を掛けられる事は少なくなかった。だからこそ、幸太が送ってくれる事になった時はそういった煩わしさから解放されると思っていたのだが、この一人になったタイミングで声を掛けられ天を仰ぐ。

「忙しいんですよ。彼氏も待たせてるんで」

 叶が振り返り、冷たく言い放つとそこにはカメラを構えた男達が立っていた。

「いやいや、ナンパとかじゃないから警戒しないでよ。今そこのウィークリーマンションから出て来たでしょ?あそこ単身者用の女性専用マンションでしょ?彼氏なんか待ってないよね?俺達動画撮影しに今から心霊スポットに行くんだけど男ばっかりじゃ寂しくてさ。是非協力してよ。なんなら出演料も払うからさ」

 慣れた口調で男達は誘って来る。叶は男達を見つめて思慮を巡らせる。

『この人達が行こうとしている所は何処かな?この辺の心霊スポットと言えば確か、崖の上か旧校舎かな?崖の上は昨日行ってみたし――』

「ごめんなさい、確かに彼氏は部屋に待たせてないけど、夏とはいえ、この時期崖の上とかで夜風に当たり続けるのもつらいのよ、だから――」

「いやいや、崖の上とかは行かないから。今日行くのは旧校舎って所。皆で行ったら怖さとかもやわらぐでしょ?だからどう?一緒に」

 満面の笑みを浮かべて断る叶だったが男達も簡単には引き下がらなかった。再び叶が男達を見つめる。

『なるほど。そっちか……本当は一人で行きたかったんだけど……ちょっと危ないかな。まぁなんとかなるか。もし何かあったら――』

「……自業自得ってね」

「……?えっ?何って?」

 叶が小さく呟くと男達は聞こえなかったのか首を傾げて聞き返す。しかし叶は再び満面の笑みを見せた。

「いえ、じゃあ御一緒しましょうか。でも私、顔とか映りたくないんでちゃんと編集で隠して下さいね」

「ええ、なんでなんで?そんなに綺麗で可愛いんだから隠さなくてもいいでしょ。まぁ嫌なら仕方ないけど」

 そんな事を言いながら叶は男達と歩いて行く。
 そんなやり取りを遠くで見つめる人影があった。

「えっ?どうなってんの?幸太君は?」

 そんな光景を咲良が離れた場所から見つめていたのだ。
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