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二人きりの旅行③
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二人はその後、街を少し散策した後目的のリゾートホテルへと辿り着いた。
幸太の質問に対して「そのうち分かるから今は気にしないで」とはぐらかされ、結局何が目的なのか分からないままで幸太は少しもどかしさを感じていた。
叶は受付の方に一礼して笑顔で話し掛ける。
「こんにちは、今日一泊させていただく鬼龍です」
「鬼龍様ですね、少々お待ち下さい……あ、」
皺一つないパリッとした制服に身を包んだホテルマンが丁寧に一礼し、慣れた手付きでパソコンを操作していたが、一瞬手が止まり眉根を寄せて戸惑いの表情を見せた。だがすぐに笑顔を作ると叶の顔を見て再び一礼する。
「失礼しました鬼龍様。ご宿泊は二名様でよろしいでしょうか?」
「はい、それでお願いします」
「かしこまりました。こちらルームキーになります。お荷物お持ちしましょうか?」
「いえ、自分達で持つので大丈夫です」
ホテルマンの提案を叶が丁寧に断ると、ルームキーを受け取りエレベーターに乗り込んだ。
「あの叶さん。こんな高そうなホテル本当に無料《タダ》でいいんですか?」
「ふふ、大丈夫だって気にしないで」
ホテルの外観や接客を目の当たりにし、不安になった幸太が問い掛けたが叶は気にする素振りもなかった。
やがて二人を乗せたエレベーターが十階に着くと二人はそこで降りる。
「えぇっと、部屋は突き当たりの部屋か」
叶が案内板を見ながら確かめていると、少し離れた所から幼い子供が二人走って来た。
「きゃははは」
「待て待てー」
子供二人は楽しそうに走り回り叶と幸太の間をすり抜けて行く。そんな子供二人を母親とおぼしき女性が慌てて追いかけていた。
「こらっ待ちなさい。走っちゃ駄目!あの、すいません」
女性は幸太達に頭を下げると、再び子供達を追いかけて行った。
「子供は元気だね」
そう言って微笑み、叶は走り去った子供達に軽く手を振っていた。そんな光景を目にして、幸太は何処か心がほぐれる様な気がした。
二人はそのまま進み自分達の部屋に入る。扉を開けるとすぐに靴を脱ぐようになっており、正面は短い廊下になっていた。廊下を挟んで右側に客室が二つあり、左側にトイレや洗面所、お風呂になっていた。
「二人でこの部屋って広くない?」
思わず幸太が驚き問い掛けると叶は口元に手を当て、くすくすと笑った後、冷笑を浮かべた。
「そうだね、広いかもね。だけど客室が二部屋あるんだから別々に寝れるし丁度いいでしょ?」
そう言って叶は笑みを見せていたが、叶の真意が読めない幸太は戸惑いながら苦笑いを浮かべるしかなかった。
ひとまずそれぞれ別々の部屋に荷物を置き、間を隔てる襖を全開に開ける。
背を向け、自分の鞄を探りながら荷物を取り出していく叶を幸太は静かに見つめていた。
叶さんはどういうつもりで俺を誘ったんだろう?何かあるかなって流石に期待してるんだけどな――。
幸太が叶を見つめて思慮を巡らせていると叶が突然振り向く。
「ねぇ幸太君、私ね内緒にしてた事があるんだけどさ」
叶はそう言って少し俯き上目遣いで幸太の事を見つめた。
「な、内緒にしてた事?何?気になるんだけど」
「はは、その内緒にしてたって言ったら大袈裟かもしれないんだけど、私煙草吸うんだよね。外や人前では滅多に吸わないから言う事なかったんだけど幸太君には言っとこうかなって思ってね。幻滅した?」
「いや、そんな事で幻滅する訳ないじゃんか。その、ちゃんと言ってくれて逆に嬉しいよ」
「本当?良かった、じゃあ早速だけど一服させてもらうね」
そう言って叶は電子煙草を取り出すと幸太の横に来て煙草を咥える。
幸太も一緒になって煙草を取り出し二人揃って一服を始めた。そんな時、叶が笑顔で覗き込む。
「まぁ二人を知るいい機会になるよね?」
えっと、どういう意味――?
叶の言葉に幸太は少し戸惑い首を傾げる。
幸太の質問に対して「そのうち分かるから今は気にしないで」とはぐらかされ、結局何が目的なのか分からないままで幸太は少しもどかしさを感じていた。
叶は受付の方に一礼して笑顔で話し掛ける。
「こんにちは、今日一泊させていただく鬼龍です」
「鬼龍様ですね、少々お待ち下さい……あ、」
皺一つないパリッとした制服に身を包んだホテルマンが丁寧に一礼し、慣れた手付きでパソコンを操作していたが、一瞬手が止まり眉根を寄せて戸惑いの表情を見せた。だがすぐに笑顔を作ると叶の顔を見て再び一礼する。
「失礼しました鬼龍様。ご宿泊は二名様でよろしいでしょうか?」
「はい、それでお願いします」
「かしこまりました。こちらルームキーになります。お荷物お持ちしましょうか?」
「いえ、自分達で持つので大丈夫です」
ホテルマンの提案を叶が丁寧に断ると、ルームキーを受け取りエレベーターに乗り込んだ。
「あの叶さん。こんな高そうなホテル本当に無料《タダ》でいいんですか?」
「ふふ、大丈夫だって気にしないで」
ホテルの外観や接客を目の当たりにし、不安になった幸太が問い掛けたが叶は気にする素振りもなかった。
やがて二人を乗せたエレベーターが十階に着くと二人はそこで降りる。
「えぇっと、部屋は突き当たりの部屋か」
叶が案内板を見ながら確かめていると、少し離れた所から幼い子供が二人走って来た。
「きゃははは」
「待て待てー」
子供二人は楽しそうに走り回り叶と幸太の間をすり抜けて行く。そんな子供二人を母親とおぼしき女性が慌てて追いかけていた。
「こらっ待ちなさい。走っちゃ駄目!あの、すいません」
女性は幸太達に頭を下げると、再び子供達を追いかけて行った。
「子供は元気だね」
そう言って微笑み、叶は走り去った子供達に軽く手を振っていた。そんな光景を目にして、幸太は何処か心がほぐれる様な気がした。
二人はそのまま進み自分達の部屋に入る。扉を開けるとすぐに靴を脱ぐようになっており、正面は短い廊下になっていた。廊下を挟んで右側に客室が二つあり、左側にトイレや洗面所、お風呂になっていた。
「二人でこの部屋って広くない?」
思わず幸太が驚き問い掛けると叶は口元に手を当て、くすくすと笑った後、冷笑を浮かべた。
「そうだね、広いかもね。だけど客室が二部屋あるんだから別々に寝れるし丁度いいでしょ?」
そう言って叶は笑みを見せていたが、叶の真意が読めない幸太は戸惑いながら苦笑いを浮かべるしかなかった。
ひとまずそれぞれ別々の部屋に荷物を置き、間を隔てる襖を全開に開ける。
背を向け、自分の鞄を探りながら荷物を取り出していく叶を幸太は静かに見つめていた。
叶さんはどういうつもりで俺を誘ったんだろう?何かあるかなって流石に期待してるんだけどな――。
幸太が叶を見つめて思慮を巡らせていると叶が突然振り向く。
「ねぇ幸太君、私ね内緒にしてた事があるんだけどさ」
叶はそう言って少し俯き上目遣いで幸太の事を見つめた。
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「いや、そんな事で幻滅する訳ないじゃんか。その、ちゃんと言ってくれて逆に嬉しいよ」
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そう言って叶は電子煙草を取り出すと幸太の横に来て煙草を咥える。
幸太も一緒になって煙草を取り出し二人揃って一服を始めた。そんな時、叶が笑顔で覗き込む。
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