61 / 62
エピローグ②
しおりを挟む
翌日。
京都に戻った叶が荷物をまとめているとスマートフォンに幸太からメッセージが届く。
(叶さん、今週末検査して異常がなければ退院出来るそうです。叶さんは帰って来れそうですか?叶さんに会いたいな)
届いたメッセージを見て叶が満面の笑みを浮かべていた。
(そっかおめでとう。じゃあそれまでにはそっちに戻れるようにするからそれまで大人しく待っててね。私も楽しみにしてるから)
メッセージを送ると叶が小さく呟く。
「私も会いたいよ、幸太君」
そう言って一人笑みを浮かべて、ふとパソコンに目をやると一通のメールが届いている事に気付いた。
叶は少し首を傾げながらそのメールを開いてみる。
『鬼龍ちゃんお久し振り。
ニュース見たけどなんか大変だったみたいね。
まぁそれはそうと私達、今忙しくて案件が被ってるんだけど、一つ代わりに受けてくれない?とりあえず詳細はまた話すから連絡してね。 陸奥方志穂』
メールを読みながら叶は電子タバコを咥えて紫煙をくゆらせる。その後、天井を見つめ、座っていたソファに身体を預けた。
「志穂さんか……なんで私に振るかなぁ……」
そう呟きスマートフォンを持つと、電話帳から志穂の名前を見つけタップする。
数コールの後、電話はすぐに繋がった。
「もしもし?」
「もしもし、鬼龍叶です」
「あら鬼龍ちゃん久し振りね。電話くれたって事はメール見てくれたのかな?」
「見ましたよ、なんですか案件って?」
「何よ?怒ってるの?実はね斗弥陀グループからの依頼があるんだけど鬼龍ちゃん代わりに受けてくれないかなって思ってね」
叶は少しうんざりした様子で静かに語り掛ける。
「……斗弥陀グループってなんですか?有名な会社なんですか?」
「斗弥陀グループって建築関係の総合商社よ、知らないんだ?結構大きな会社で業界の中でもトップクラスのシェアらしいよ」
「そんな大きな会社の案件なら志穂さんが受けたらいいじゃないですか」
「そうしたいけど私達も今別件で忙しいのよ。流石に先に入ってた先約を疎かにも出来ないしさ、お願いよ鬼龍ちゃん、友達でしょ?」
「……お世話にはなりましたが、私と志穂さんて友達でしたっけ?今私達事件に巻き込まれて結構大変なんですけど?」
「分かってるわよ。でも斗弥陀グループよ?それなりの報酬期待出来ると思うんだけどなぁ」
叶は電話で話ながらも、今志穂がどんな表情をして話しているかが簡単に想像がついていた。
「志穂さん絶対今悪い笑い方してますよね?」
「あら、霊能力だけじゃなくて千里眼まで身につけたの?」
そう言って電話口で笑う志穂に対して、叶は呆れたように小さくため息をつく。
「私に千里眼があればあんなニュースになる前になんとかします」
「ははは、まぁそうよねぇ。ねぇ鬼龍ちゃんお願いよ」
「……まぁ今回志穂さんに教えて頂いた護身術のおかげで事なきを得たんで、こっちが少し落ち着いてからで良ければ考えますけど」
「あら、役立ったんだ、それは良かったわ。なんならもっと教えてあげようか?例えば男を喜ばせる方法とか」
「必要ありません!切りますからね!」
そう言って叶は乱暴に電話を切った。
一方的に電話を切られた志穂はスマートフォンを見つめながら含みのある笑みを浮かべる。
「本当に切っちゃった。鬼龍叶、少し変わった?何かあったかな?」
志穂が一人呟き笑みを浮かべていると少し離れた所から男性が声を掛ける。
「どうした?何かあったのかな?」
「いえいえ、特にたいした事はないですよ。ただ旧友からちょっと連絡があっただけですから」
「旧友?珍しいな。僕も知ってる人かな?」
「ええ、鬼龍叶です」
「ああ!あの綺麗な子か」
「ええそうです。さぁさぁ仕事しましょうか先生」
「え、ああ、そうだな」
志穂に急かされる様にして、二人並んで歩いて行く。
――
数日後。
駅前の焼き鳥屋には久し振りに四人が集まっていた。
「幸太君退院おめでとう」
「ありがとう」
四人掛けのテーブルに座り、対面に座る咲良が元気良く声を掛けると幸太も少し照れながら礼を口にする。
「これでやっと四人でゆっくり乾杯出来るな」
弘人が笑いながら言うと全員が笑顔で静かに頷いていた。
「でも君はまだ全快じゃないんだから程々にしときなよ」
「まぁ分かってるって。ただ、また皆でこうして集まれたんだから今日は少しぐらい飲み過ぎても大丈夫だよね?」
「まぁ仕方ないからその時は少しぐらい介抱してあげようかな」
叶が覗き込むようにしながら笑って言うと幸太は嬉しそうに頭を描いた。
「じゃあとりあえず乾杯!」
四人は元気な掛け声と共にグラスを合わせた。
夏の日の出会いと別れ~霊よりも怖いもの、それは人~
~完~
京都に戻った叶が荷物をまとめているとスマートフォンに幸太からメッセージが届く。
(叶さん、今週末検査して異常がなければ退院出来るそうです。叶さんは帰って来れそうですか?叶さんに会いたいな)
届いたメッセージを見て叶が満面の笑みを浮かべていた。
(そっかおめでとう。じゃあそれまでにはそっちに戻れるようにするからそれまで大人しく待っててね。私も楽しみにしてるから)
メッセージを送ると叶が小さく呟く。
「私も会いたいよ、幸太君」
そう言って一人笑みを浮かべて、ふとパソコンに目をやると一通のメールが届いている事に気付いた。
叶は少し首を傾げながらそのメールを開いてみる。
『鬼龍ちゃんお久し振り。
ニュース見たけどなんか大変だったみたいね。
まぁそれはそうと私達、今忙しくて案件が被ってるんだけど、一つ代わりに受けてくれない?とりあえず詳細はまた話すから連絡してね。 陸奥方志穂』
メールを読みながら叶は電子タバコを咥えて紫煙をくゆらせる。その後、天井を見つめ、座っていたソファに身体を預けた。
「志穂さんか……なんで私に振るかなぁ……」
そう呟きスマートフォンを持つと、電話帳から志穂の名前を見つけタップする。
数コールの後、電話はすぐに繋がった。
「もしもし?」
「もしもし、鬼龍叶です」
「あら鬼龍ちゃん久し振りね。電話くれたって事はメール見てくれたのかな?」
「見ましたよ、なんですか案件って?」
「何よ?怒ってるの?実はね斗弥陀グループからの依頼があるんだけど鬼龍ちゃん代わりに受けてくれないかなって思ってね」
叶は少しうんざりした様子で静かに語り掛ける。
「……斗弥陀グループってなんですか?有名な会社なんですか?」
「斗弥陀グループって建築関係の総合商社よ、知らないんだ?結構大きな会社で業界の中でもトップクラスのシェアらしいよ」
「そんな大きな会社の案件なら志穂さんが受けたらいいじゃないですか」
「そうしたいけど私達も今別件で忙しいのよ。流石に先に入ってた先約を疎かにも出来ないしさ、お願いよ鬼龍ちゃん、友達でしょ?」
「……お世話にはなりましたが、私と志穂さんて友達でしたっけ?今私達事件に巻き込まれて結構大変なんですけど?」
「分かってるわよ。でも斗弥陀グループよ?それなりの報酬期待出来ると思うんだけどなぁ」
叶は電話で話ながらも、今志穂がどんな表情をして話しているかが簡単に想像がついていた。
「志穂さん絶対今悪い笑い方してますよね?」
「あら、霊能力だけじゃなくて千里眼まで身につけたの?」
そう言って電話口で笑う志穂に対して、叶は呆れたように小さくため息をつく。
「私に千里眼があればあんなニュースになる前になんとかします」
「ははは、まぁそうよねぇ。ねぇ鬼龍ちゃんお願いよ」
「……まぁ今回志穂さんに教えて頂いた護身術のおかげで事なきを得たんで、こっちが少し落ち着いてからで良ければ考えますけど」
「あら、役立ったんだ、それは良かったわ。なんならもっと教えてあげようか?例えば男を喜ばせる方法とか」
「必要ありません!切りますからね!」
そう言って叶は乱暴に電話を切った。
一方的に電話を切られた志穂はスマートフォンを見つめながら含みのある笑みを浮かべる。
「本当に切っちゃった。鬼龍叶、少し変わった?何かあったかな?」
志穂が一人呟き笑みを浮かべていると少し離れた所から男性が声を掛ける。
「どうした?何かあったのかな?」
「いえいえ、特にたいした事はないですよ。ただ旧友からちょっと連絡があっただけですから」
「旧友?珍しいな。僕も知ってる人かな?」
「ええ、鬼龍叶です」
「ああ!あの綺麗な子か」
「ええそうです。さぁさぁ仕事しましょうか先生」
「え、ああ、そうだな」
志穂に急かされる様にして、二人並んで歩いて行く。
――
数日後。
駅前の焼き鳥屋には久し振りに四人が集まっていた。
「幸太君退院おめでとう」
「ありがとう」
四人掛けのテーブルに座り、対面に座る咲良が元気良く声を掛けると幸太も少し照れながら礼を口にする。
「これでやっと四人でゆっくり乾杯出来るな」
弘人が笑いながら言うと全員が笑顔で静かに頷いていた。
「でも君はまだ全快じゃないんだから程々にしときなよ」
「まぁ分かってるって。ただ、また皆でこうして集まれたんだから今日は少しぐらい飲み過ぎても大丈夫だよね?」
「まぁ仕方ないからその時は少しぐらい介抱してあげようかな」
叶が覗き込むようにしながら笑って言うと幸太は嬉しそうに頭を描いた。
「じゃあとりあえず乾杯!」
四人は元気な掛け声と共にグラスを合わせた。
夏の日の出会いと別れ~霊よりも怖いもの、それは人~
~完~
2
あなたにおすすめの小説
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/25:『がんじつのおおあめ』の章を追加。2026/1/1の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/24:『おおみそか』の章を追加。2025/12/31の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/23:『みこし』の章を追加。2025/12/30の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる