怖いお話。短編集

赤羽こうじ

文字の大きさ
78 / 87

廃村 訪れる異変

しおりを挟む

 透に抱き締められ、少し落ち着いた私が時計に目をやると時刻はまだ午前四時を回ったぐらいだった。

「ありがとう、ちょっと落ち着いた。すっきりしたいから一回顔洗ってくるね」

 一息ついた後、透に礼を伝え、私は洗面所へと歩いて行く。
 洗面所で顔を洗い鏡を見つめると、そこには酷く疲れた顔をしている自分が映っていた。

「……はは、酷いな。なんか一気に年取った気分……」

 鏡を見つめ自虐的に笑っている時、ふと廃村にあった鏡を思い出してしまった。
 途端に恐怖心が沸き上がり、私は慌てて透のいるベッドに戻ると静かに体を滑り込ませる。
 透は既に寝息を立てていたが、私は体を密着させてそっと目を瞑った。

 しかしその後私は眠る事が出来ずにそのまま朝を迎えてしまった。

 窓から射し込む陽の光が目にしみる。だが明るくなっていく部屋を見て安心感は広がっていった。

 私はこのままベッドにいても眠れる気がしなかった為、ゆっくりとベッドを抜け出した。
 そのまま朝食の支度をしようかとも思ったが、寝不足のせいかどうにも体が言う事を聞かない。
 仕方なく私はそのままソファに体を預けて横になる。

 そのまま特に何も出来ずに時間だけが過ぎて行き、そのうち透も目を覚まし起き上がる。

「どうした?何処か体調悪いのか?」

 普段あまりだらけた姿を見せない私を見て、起きてきた透は少し驚き、ソファで横になる私に声を掛けてきた。

「うん、ちょっとなんだろ……疲れたのかな?」

 笑顔を作って返したが恐らくぎこちなかったのだろう。透は苦笑いを浮かべて心配そうに私の顔を覗き込み、そっと私の頭を撫でた。

「今日はゆっくりしようか」

 そう言って私の頭を撫でながら透は微笑んでいた。

 結局私達はその日一日、特に何かをする訳でもなく、透の言う通りゆっくりとした休日を過ごし、そして早めに就寝する事になった。

「おやすみ」

 簡単な言葉を交わし、ベッドで横になる。時計の針は十時を回った辺りだったが倦怠感と寝不足のせいか、私はすぐに眠りについた。

 だが気が付くと私は再び霧がかった山中に佇んでいた。
 私の数メートル先には例の黒ずんだ小さな廃屋があり、私は恐怖心から二、三歩後退りする。

 逃げなきゃ――。

 理由なんかなかった。絶対に良くない事が起こると直感し、私が身を翻し走り出そうとした時だった。

 〝ギィィィィィィ……〟

 軋む様な不気味な音が後方で響いた。

 走り出そうとした私の足は止まり、思わず息を呑む。静かな山中に、私の荒れた呼吸だけが聞こえている様だった。

 何かがいる――。

 後ろから何かの気配を感じ、恐怖から私の鼓動は早まり呼吸も荒れていく。
 私は例えそこに何かがいたとしても、後ろから感じる気配が何なのか確認せずにはいられなかった。

 私は覚悟を決めゆっくりと振り向く。

 すると、そこにあった廃屋の扉は開き、傍らには笑みを浮かべた祐司君とえんじ色の着物に身を包んだ例の女の子が不気味な眼差しで私を見つめて立っていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

1話5分でゾッと出来る話。短編ホラー集。短編怖い話は、そこにある

みにぶた🐽
ホラー
9時から24まで1時間に1話更新中。7/26 14時に100話で終了か判断中です! 1話完結型短編ホラー集。非日常、ホラーチックなちょい怖、世にも奇妙な体験をどうぞ 下記の怖さメーターをタイトルで確認して希望の話だけでもどうぞ 怖さメーター ★★★★★(極恐怖) ★★★★☆(高恐怖) •絶望的結末、逃れられない運命 ★★★☆☆(中恐怖) •超常現象の不安だが最終的に解決 ★★☆☆☆(軽恐怖) •温かい結末への転換が明確 ★☆☆☆☆(微恐怖) •ほぼ感動系への完全転換 ―それは、「日常」が崩れる瞬間。 ドアのすき間、スマホの通知、すれ違った人の顔。 あなたのすぐ隣にある“気づいてはいけない恐怖”を、あなたは何話まで読めるか? これは、100の物語に潜む、100通りの終わらない悪夢。 ──あなたの知らない日常が、ここにある。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...