怖いお話。短編集

赤羽こうじ

文字の大きさ
77 / 87

廃村 心霊スポット巡り⑮

しおりを挟む

 私と透が恐怖で動けない中、祐司君が思いがけない行動に出る。

「何か?」

 突然助手席の窓を開け、老婆に話し掛けのだ。
 私達は呆気に取られ、言葉が出て来なかった。

「いやぁ、あんちゃん何か調子悪そうだね?ちょっと戻った所に儂の家がある。休んでいかんね?」

 笑顔で老婆が尋ねるが、私は微かに首を振っていた。
 それは老婆からの提案に対してというより、早くその窓を閉めてくれと、祐司君に訴えていたんだと思う。

「いやぁ有り難いけど、早く家に帰りたいからもう行きますよ」

 祐司君がそう言うや否や、透が車を発進させる。

「そうか、ちゃんと帰れるかいね?」

 去り際老婆の言葉が耳に入り、思わず私は老婆を見つめた。
 老婆は相変わらず人の良さそうな笑みを浮かべており、私は思わず背筋が凍りつくような思いだった。

 車はそのまま県道からメインである大きな国道に合流し、私達は何処かに寄り道をする事もなくそのまま祐司君のアパートまで帰って来た。

 停めていた透の車と祐司君の車を入れ替えると、まだ何処か上の空の祐司君に声を掛ける。

「おい、祐司。俺達帰るけど、お前大丈夫だよな?」

「何言ってるんだよ?大丈夫に決まってるだろ?ちょっと疲れただけさ」

 私達の心配を他所に、祐司君は笑っていた。その笑顔を見て私は一抹の不安を感じたが、その日はそのまま別れる事になった。

 私のアパートに向かう車内は特に会話もなく、まだ重い雰囲気に包まれていた。

「ねぇ、今日も泊まっていってくれるよね?」

 私がお願いするように尋ねると、透は「ああ勿論」と笑って答えていた。
 私達はアパートに戻って来るとシャワーを浴びてさっさと就寝の準備に入る。

 一緒にベッドに入り「おやすみ」と互いに言葉を交わし眠りについた。

 透と共に眠りについた私だったが、気が付くと暗い山中に立っており、戸惑い周りを見渡すと崩れた家屋等が目についた。

 ここはまさか……廃村――?

 困惑しながら歩いて行くと例の黒ずんだ小さな廃屋が視界に入った。
 
 私が廃屋から発する異質な恐怖を感じ立ち尽くしていた時、廃屋から一人の女の子が姿を現す。

 女の子は前髪がまっすぐ揃えられたおかっぱ頭でえんじ色の着物に身を包んでおり、まっすぐ私の事を見つめていた。

 その表情は、怒るでもなく悲しむでもなく、言うなれば完全なる無表情だった。
 そんな無表情のまままっすぐ見つめてくる女の子があまりにも不気味で私は恐怖のあまり逃げ出した。

 暗い廃村の中を走り、逃げ出した私だったが、振り返ると女の子は表情を変えることなく無表情のまま私を見つめ追いかけて来る。

 私は全力で走り逃げようとするが、女の子を振り切る事は出来ず、徐々にその距離は近付いていた。

 私は恐怖でおかしくなりそうだった。

 だがそんな時、何処からともなく私を呼ぶ声が聞こえてきた。

「……真咲……真咲!」

 はっと気付くと心配そうに私の顔を覗き込む透と目が合った。

「……透!……怖かったよ!」

 私は咄嗟に透に抱きつき思わず叫んでしまう。

「大丈夫か?かなりうなされてたぞ」

 そう言って透は混乱する私を優しく抱きしめてくれた。
 透の言葉を聞き、少し落ち着いた私はようやくそこで夢を見ていたんだと気付いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

1話5分でゾッと出来る話。短編ホラー集。短編怖い話は、そこにある

みにぶた🐽
ホラー
9時から24まで1時間に1話更新中。7/26 14時に100話で終了か判断中です! 1話完結型短編ホラー集。非日常、ホラーチックなちょい怖、世にも奇妙な体験をどうぞ 下記の怖さメーターをタイトルで確認して希望の話だけでもどうぞ 怖さメーター ★★★★★(極恐怖) ★★★★☆(高恐怖) •絶望的結末、逃れられない運命 ★★★☆☆(中恐怖) •超常現象の不安だが最終的に解決 ★★☆☆☆(軽恐怖) •温かい結末への転換が明確 ★☆☆☆☆(微恐怖) •ほぼ感動系への完全転換 ―それは、「日常」が崩れる瞬間。 ドアのすき間、スマホの通知、すれ違った人の顔。 あなたのすぐ隣にある“気づいてはいけない恐怖”を、あなたは何話まで読めるか? これは、100の物語に潜む、100通りの終わらない悪夢。 ──あなたの知らない日常が、ここにある。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...