怖いお話。短編集

赤羽こうじ

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廃村 廃村の呪い②

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 身体を丸めて小刻みに震えながら取り乱す祐司君を見つめて私と透は互いの顔を見合わせた。

「……いや何言ってるんだ?あの時一緒に帰っただろ?それに今日だって大学で会ってこの廃村にもう一度来るって話になったじゃないか」

「知らねぇ、知らねぇって!」

 そう言って震える祐司君に私達は掛ける言葉が見つからなかった。

「なぁ、帰ろうぜ。早く帰ろうぜ」

 突然祐司君が顔を上げ懇願するように私達に迫る。

「ああ、そうだな。だけどひとまずその建物に向かって手を合わせよう」

 少し興奮気味の祐司君を落ち着かせ、私達は三人揃って廃屋に向かって手を合わせた。

 もう二度とここを踏み荒らしたりしません。ごめんなさい。だから私達の日常を返して下さい――。

 私は手を合わせながら静かに祈った。
 その時だった。

「ふふふ……」

 すぐ後ろで笑い声が聞こえたような気がしたのだ。
 私は慌てて振り向き辺りを見渡した。

「真咲、どうした?」

 私の焦りが伝わったのか、透が心配そうに問い掛けてきた。

「あ、いや、ううん、なんでもない。早く帰ろう」

 私は笑みを浮かべて首を振った。
 あまりに怖い事が起こりすぎて神経が過敏になっていたのかもしれない。あれはきっと風の音だ――。

 私は自分に言い聞かせていた。
 そう考えなければ私は平静を保っていられそうになかったし、何よりこの場を一刻も早く立ち去りたかったのだ。

 私達は足早にその場を去り、停めてある車を目指した。
 その間会話はなく、震える祐司君の歯がカチカチとなる音だけが響いていた。

 そうして私達は車まで戻って来るとすぐさま車に乗り込んだ。

「よし乗ったな?行くぞ」

 透が確認し私達に声を掛けた時だった。

 あの日の帰り道、何処からともなく現れ、声を掛けてきたあの老婆が再び助手席側から笑みを浮かべて覗き込んできたのだ。

「何処に行くのね?儂の家に寄って行かんかね?」

 窓の外から笑みを浮かべながら老婆が話し掛けてきたが私はすぐに透の方に視線を向けた。
 透は窓の外にいる老婆を怯えるように見つめていた。

「透!出して!!」

 思わず私が叫ぶと透は慌ててエンジンを掛けアクセルを踏み込んだ。
 車のエンジンが唸りを上げ私達を乗せた車は急発進し狭い獣道を駆け抜けて行く。

 助かった――。

 後方を確認すると老婆はその場に立ち尽くしており、私が安堵した時だった。

「うわぁぁぁ!」

 叫び声を上げた透に驚き私が前方を振り向くと、そこには私達の行く手を遮るようにあのえんじ色の着物を身に纏った女の子がこちらを見つめ立っていたのだ。

 狭い獣道の真ん中に立つ女の子を避けようと透は咄嗟にハンドルを切り、道を外れた私達の車は猛スピードのまま山の中を転がるように落ちて行った。

 回転しながら落ちて行く車内は衝撃音と私達の悲鳴が響き渡っていた。
 凄まじい衝撃に身体は揺られ、どちらが上でどちらが下なのかわからないまま転がり落ちて行く感覚だけはわかった。

 そして強烈な衝撃と共にようやく私達の車は止まった。
 薄れ行く意識の中、窓の外を見るとあの女の子がこちらを見ていたような気がした。
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