怖いお話。短編集

赤羽こうじ

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初めての男 初めての……

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 その後聖也は普段、優里亜と普通に付き合い、週に一回杠と会う生活を送り三ヶ月ほど経った頃だった。

「ねえ、今度手料理に挑戦してみたいから部屋に来てくれる?」

「杠の手料理!? 勿論行くだろ」

 杠からの思わぬ誘いに聖也は驚きながらも喜んで承諾していた。

「ただ来る道順は気を付けてね。あと私のマンションは女性専用だから裏口からになるから近くまで来たら連絡して。迎えに降りるから」

 そう言って杠は自らのマンションに来る道順を書いたメモを渡し満面の笑みを見せる。

『何処かで待ち合わせして迎えに来てくれたらいいだけだろ?』
 聖也はそう思ったがその言葉を口にする事はなかった。

 折角杠が部屋に招く気になっているのに変な事を言ってへそを曲げられたくはなかったのだ。

 当日、聖也は杠に言われた通りの道順でマンション近くまで来ると杠に連絡を入れた。すると杠からマンションの裏口まで電話で案内される。
 裏口までやって来ると杠は既にそこで待っていた。

「ごめんね、準備とか色々あったからね」
「いや構わないよ。それより楽しみだ」

 眉根を寄せた笑顔で謝る杠を見て聖也は楽しくなっていた。
 初めの頃に比べると杠の表情も豊になっていたからだ。

 なんだかんだと聖也の方が従順に従っているようにも見える。

「いやぁ杠の部屋初めて来たけどなんて言うか、シンプルだな」

 テーブルに座椅子。それにベットがあり、無造作に床の上にテレビが置いてあるだけの部屋。
 正直シンプルと言うより殺風景と言う方がしっくりくる。
 それぐらい部屋に物が少なかった。

「これぐらいあれば生活は十分出来るから。それよりも今日は手料理に挑戦したんだから食べてみて」

 そう言って杠は手料理を振舞う。

 『ベットの上での反応やテクなんかも上達してるしなんだかんだ言って俺好みの女になってきている』
 聖也がそんな事を考えていると自然と口角も上がっていた。

「あら、何か楽しそうね?」
「いや、杠が手料理を振舞ってくれるんだから嬉しいだろ」

 杠が作ってくれた料理を食べながら酒を飲む。互いに腹の底で進む計画を隠しながら二人、共に楽しい時間を過ごす。
 普段飲んでもそれ程酔わない聖也だが、暫くすると聖也は酔いが回ってきた。

「ああ、なんだ、今日は凄い酒が回る」

「あらどうしたの?ちょっとベットで横になる?」

「そうだな。そうさせてもらう」

 そう言ってベットに移り横になると杠が心配そうに覗き込んできた。

「大丈夫かな?」

 聖也は薄れ行く意識の中で今までに見た事もないような杠の笑顔を見た気がした。


 ここまでは順調に来ている。
 長かったがこの後は最後の仕上げに移行するだけだ。
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