好きなキャラクターを紹介させてくれ

FILE1 蘆屋道満 （Fate Grand Order より）

　記念すべき一人目はFate Grand Order(FGO) より、蘆屋道満。史実では、かの安倍晴明の対をなす悪の陰陽師として語られることが多い存在です。実際、FGO上では混沌・悪という属性で、随分と卑劣な手を使って主人公であるマスターの前に立ちふさがりました。かつては多くのマスターから反感と恨みを買った道満ですが、今ではゲーム内でも屈指の人気を誇っています。私も道満が好きで、ゲーム内において入手に限りがある「聖杯」と呼ばれるアイテムを使っています。
　蘆屋道満と言えば、多くの作品で安倍晴明の天敵として登場します。その多くは大抵、善の晴明が悪の道満を打ち倒すという構図です。まさしく、打ち倒すべき悪として描かれているんですね。しかし、史実では道満はまるっきりの悪だったというわけではありません。道満が悪として描かれるのは彼が上京してからのものが多く、彼が上京する以前は人助けをすることも多く、地方で人々から頼られる存在であったようです。その証拠に、いまだに一部地域では彼を大切に想っており、お墓にはたくさんの花が添えられているそうです。そういった点を考慮すると、安倍晴明の活躍をより目立たせるために悪にならざるを得なかった存在というのが彼なのかもしれません。
　ゲーム内では彼のその複雑な感情が所々で見て取れます。陰陽術の実力は間違いなく類まれなものなのに、安倍晴明がさらにその上をいってしまうため、周囲からの評価はいまいち。それどころか、「晴明殿ならば」と比較されてきつい言葉を浴びせられることもあったでしょう。安倍晴明が凄すぎたあまり、誰も蘆屋道満のすごさに気が付かない。誰も自分を認めてくれず、ありもしない噂や誹謗中傷を受けた彼の宮中での暮らしはそれはそれはつらいものだったでしょう。挙句の果てに、晴明だけは自分の実力を評価してくれている、そうなれば嫉妬や悔しさだけでなく、様々な感情が渦巻いて狂ってしまうというもの。太陽に近づきすぎたあまり、羽が溶けて地に落ちてしまったというイカロスの話を思い出しますね。
　少し話がそれました。改めてゲーム内の蘆屋道満について語りましょう。FGOの2部ストーリーはかなり重い話で、主人公は自分の世界のために他の世界を滅ぼさなければならないんですね。もともと何の変哲もない一般人にそんなやりたくない重い使命を背負わせるあたり、Fate世界の残酷さがうかがえます。そんな主人公をサーヴァント達は各々支えてくれるわけですが、道満は少し他と違います。他のサーヴァントが主人公を肯定しても道満はしてくれない。一見残酷なようですが、それはあまたの人間から悪であれと言われ、思われ続けた道満だからこそできることで、決して主人公罪から目をそらさないということであり、主人公自身を見ているということでもあります。彼のボイスの中には「地獄の果てまでお供させていただきたく」というものもありますが、主人公の罪意識を理解し、そのうえでついてきてくれるという意思表示です。自分の悪を罪を認めてくれる存在というのは望まぬ道を歩む主人公にとって一種の心の支えもあるでしょう。
　道満の魅力はそこだけではありません。まず、声がいい。CV森川さんですからね。そりゃあイケボですよ。森川さんの演技も相まって、キャラクターとして使用しているのがとても楽しいです。キャラクターのバトルモーションもまさしく悪といった感じで、厨二心をくすぐられます。挙句の果てにストーリーではギャグもシリアスもこなせるという万能さを発揮します。ンンンンン！まさしく拙僧、多彩なれば！
　また、Fateシリーズすべてに言えることですが二次創作のクオリティが高いです。蘆屋道満に関するものはおなかを抱えて笑うものから、彼の感情を見事に表現したしんみりとするものまで多岐にわたります。SNS、動画サイト、イラスト投稿サイトで検索をかけることで、蘆屋道満というキャラクター像に深みを与えてくれる作品に出会えることでしょう。
　いかがだったでしょうか。初めての紹介で、字数も多くなりすぎないように意識したため、私の文才では彼の魅力をまだ十二分に伝えきれていないと思います。しかし、これを機に彼を知っている方もそうでない方も少しでも興味を持っていただけたら執筆したかいがあります。もし、道満はこんなところも魅力だよね！などの意見がある方はぜひ感想で教えていただけると嬉しいです。