異世界で神子になりまして

negi

文字の大きさ
41 / 89

41 思いの比率

しおりを挟む
 クルサード侯爵の考察によると、俺の身体が透けていたのは与える方の比重が大き過ぎたからではないかという事だった。

「神殿で祈りを捧げた時に何を思いましたか?」

何を……。
あそこの床には地図が描かれていた。
それでイメージがしやすかったことを思い出した。

「床の地図を見ながら、国の隅々までその土地に合った天候になるようにと思って祈っていたと思う。そうしたら自分の魔力が出て行く感覚がして、魔力の動きがよく解ったんだ」

 祈りを続ければ魔力コントロールが上手くなりそうなんだよな。そう呑気に考えていたら難しい顔をした侯爵がニスカーナンに聞いた。

「ニスカーナン様、各地からの報告はどれくらいの数届きましたか?」

「こちらを訪ねる前に確認した分は確か六通だったはずだが、…まさか」

「執務室に戻られたら相当数届いていると思いますよ」

 そう予測した侯爵が、真剣な眼差しを俺に向けてきた。

「アキラ様、これからはもうそんな無茶な祈りはお止めください。お命を危険に晒すことになりかねません」

「でも祈ることは神子の使命なんだろう? それで命の危険なんて…」

「先代の神子様は陳情書に沿って祈りを捧げていました。国の隅々に届くほどの魔力は使っていなかったと思います。アキラ様の優しいお気持ちは尊いものです。ですが、国民はまだアキラ様のことを理解していません」

 国民はまだ新しい神子である俺の本質を知らない人がほとんどで、しかも先々代の神子と同じ若い男性ということで忌避感を持っている人が多い。つまり、俺に気持ちを返してくれる人が圧倒的に少ないということ。侯爵の持論だと、比重が傾き過ぎていてそれが俺の透明化の原因だと言った。

「すでにお気付きかと思いますので隠しませんが、神子様のご遺体は存在しません。ご逝去されると消えてしまわれます。これは王家とごく一部の者しか知りません」

「じゃあ、あの時透明になった俺は死にかけたってこと?」

今はこうして無事だし、一度死んでいるせいか言われた内容にそこまでのショックを感じない。でも護衛の二人は違った。

「そんな、耐えられません。神の声が届かなければ絶望していました」

「考えたくありません。アキラ様、愛しています」

両側から俺の手を握る二人の指が震えていて、見つめる瞳にも影が落ちている。

「大丈夫だよ。二人のおかげで意識も戻っただろう? それにお互い、その、…あ、あ、あいっ……、」

駄目だ。「愛し合っていれば」の一言が恥ずかしくて言えない。

「愛しています。神の声が届く前から」

「私も愛しています。全身全霊をかけて」

 言えない俺に、二人が気後れすることなく惜しみなく与えてくれる愛の言葉に、身体の中に温かいものが巡り、幸福感が溢れてくる。

「うん、俺も…。だから大丈夫」

 どうしても恥ずかしくて俺の方からははっきり言えないけど、手を握る二人の指が温かくて、俺の身体までポカポカしてきた。

「アキラ様? お身体が?!」

「魔力を放出されているのですか? いけません! またっ」

 慌てる二人に両側から抱きしめられて自分を見下ろせば、なんだこれ。俺光ってる? でも魔力を放出している感じは無くて、凄く満たされてる感じ。まさにHPMP満タン状態だ。

「二人とも落ち着いてください。魔力の放出はされていないようですよ。今のアキラ様は満たされた状態なのでは?」

 なだめるニスカーナンの言う通りなんだけど、言い当てられてしまうと面映ゆい。

「そう、だね…。二人の気持ちが嬉しくて、胸がいっぱいかも…」

自分の胸に手を当てれば鼓動も少し早い気がする。そして気付けば光るのもおさまっていた。

「ああ、アキラ様。良かった、本当に…」

「アキラ様、良かった…、生きた心地がしませんでした」

「リック? ちょ、エド?」

抱きしめてる二人が俺の頭やこめかみにキスをしてきて、あ、手も取られて甲にも。
わっ、こらっ! ほっぺに唇が下りてきた!

ニスカーナンの呆れ顔と苦笑いのクルサード侯爵の視線がいたたまれない。

だから~、自重して~!!


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

処理中です...