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クルサード侯爵の考察によると、俺の身体が透けていたのは与える方の比重が大き過ぎたからではないかという事だった。
「神殿で祈りを捧げた時に何を思いましたか?」
何を……。
あそこの床には地図が描かれていた。
それでイメージがしやすかったことを思い出した。
「床の地図を見ながら、国の隅々までその土地に合った天候になるようにと思って祈っていたと思う。そうしたら自分の魔力が出て行く感覚がして、魔力の動きがよく解ったんだ」
祈りを続ければ魔力コントロールが上手くなりそうなんだよな。そう呑気に考えていたら難しい顔をした侯爵がニスカーナンに聞いた。
「ニスカーナン様、各地からの報告はどれくらいの数届きましたか?」
「こちらを訪ねる前に確認した分は確か六通だったはずだが、…まさか」
「執務室に戻られたら相当数届いていると思いますよ」
そう予測した侯爵が、真剣な眼差しを俺に向けてきた。
「アキラ様、これからはもうそんな無茶な祈りはお止めください。お命を危険に晒すことになりかねません」
「でも祈ることは神子の使命なんだろう? それで命の危険なんて…」
「先代の神子様は陳情書に沿って祈りを捧げていました。国の隅々に届くほどの魔力は使っていなかったと思います。アキラ様の優しいお気持ちは尊いものです。ですが、国民はまだアキラ様のことを理解していません」
国民はまだ新しい神子である俺の本質を知らない人がほとんどで、しかも先々代の神子と同じ若い男性ということで忌避感を持っている人が多い。つまり、俺に気持ちを返してくれる人が圧倒的に少ないということ。侯爵の持論だと、比重が傾き過ぎていてそれが俺の透明化の原因だと言った。
「すでにお気付きかと思いますので隠しませんが、神子様のご遺体は存在しません。ご逝去されると消えてしまわれます。これは王家とごく一部の者しか知りません」
「じゃあ、あの時透明になった俺は死にかけたってこと?」
今はこうして無事だし、一度死んでいるせいか言われた内容にそこまでのショックを感じない。でも護衛の二人は違った。
「そんな、耐えられません。神の声が届かなければ絶望していました」
「考えたくありません。アキラ様、愛しています」
両側から俺の手を握る二人の指が震えていて、見つめる瞳にも影が落ちている。
「大丈夫だよ。二人のおかげで意識も戻っただろう? それにお互い、その、…あ、あ、あいっ……、」
駄目だ。「愛し合っていれば」の一言が恥ずかしくて言えない。
「愛しています。神の声が届く前から」
「私も愛しています。全身全霊をかけて」
言えない俺に、二人が気後れすることなく惜しみなく与えてくれる愛の言葉に、身体の中に温かいものが巡り、幸福感が溢れてくる。
「うん、俺も…。だから大丈夫」
どうしても恥ずかしくて俺の方からははっきり言えないけど、手を握る二人の指が温かくて、俺の身体までポカポカしてきた。
「アキラ様? お身体が?!」
「魔力を放出されているのですか? いけません! またっ」
慌てる二人に両側から抱きしめられて自分を見下ろせば、なんだこれ。俺光ってる? でも魔力を放出している感じは無くて、凄く満たされてる感じ。まさにHPMP満タン状態だ。
「二人とも落ち着いてください。魔力の放出はされていないようですよ。今のアキラ様は満たされた状態なのでは?」
なだめるニスカーナンの言う通りなんだけど、言い当てられてしまうと面映ゆい。
「そう、だね…。二人の気持ちが嬉しくて、胸がいっぱいかも…」
自分の胸に手を当てれば鼓動も少し早い気がする。そして気付けば光るのもおさまっていた。
「ああ、アキラ様。良かった、本当に…」
「アキラ様、良かった…、生きた心地がしませんでした」
「リック? ちょ、エド?」
抱きしめてる二人が俺の頭やこめかみにキスをしてきて、あ、手も取られて甲にも。
わっ、こらっ! ほっぺに唇が下りてきた!
ニスカーナンの呆れ顔と苦笑いのクルサード侯爵の視線がいたたまれない。
だから~、自重して~!!
「神殿で祈りを捧げた時に何を思いましたか?」
何を……。
あそこの床には地図が描かれていた。
それでイメージがしやすかったことを思い出した。
「床の地図を見ながら、国の隅々までその土地に合った天候になるようにと思って祈っていたと思う。そうしたら自分の魔力が出て行く感覚がして、魔力の動きがよく解ったんだ」
祈りを続ければ魔力コントロールが上手くなりそうなんだよな。そう呑気に考えていたら難しい顔をした侯爵がニスカーナンに聞いた。
「ニスカーナン様、各地からの報告はどれくらいの数届きましたか?」
「こちらを訪ねる前に確認した分は確か六通だったはずだが、…まさか」
「執務室に戻られたら相当数届いていると思いますよ」
そう予測した侯爵が、真剣な眼差しを俺に向けてきた。
「アキラ様、これからはもうそんな無茶な祈りはお止めください。お命を危険に晒すことになりかねません」
「でも祈ることは神子の使命なんだろう? それで命の危険なんて…」
「先代の神子様は陳情書に沿って祈りを捧げていました。国の隅々に届くほどの魔力は使っていなかったと思います。アキラ様の優しいお気持ちは尊いものです。ですが、国民はまだアキラ様のことを理解していません」
国民はまだ新しい神子である俺の本質を知らない人がほとんどで、しかも先々代の神子と同じ若い男性ということで忌避感を持っている人が多い。つまり、俺に気持ちを返してくれる人が圧倒的に少ないということ。侯爵の持論だと、比重が傾き過ぎていてそれが俺の透明化の原因だと言った。
「すでにお気付きかと思いますので隠しませんが、神子様のご遺体は存在しません。ご逝去されると消えてしまわれます。これは王家とごく一部の者しか知りません」
「じゃあ、あの時透明になった俺は死にかけたってこと?」
今はこうして無事だし、一度死んでいるせいか言われた内容にそこまでのショックを感じない。でも護衛の二人は違った。
「そんな、耐えられません。神の声が届かなければ絶望していました」
「考えたくありません。アキラ様、愛しています」
両側から俺の手を握る二人の指が震えていて、見つめる瞳にも影が落ちている。
「大丈夫だよ。二人のおかげで意識も戻っただろう? それにお互い、その、…あ、あ、あいっ……、」
駄目だ。「愛し合っていれば」の一言が恥ずかしくて言えない。
「愛しています。神の声が届く前から」
「私も愛しています。全身全霊をかけて」
言えない俺に、二人が気後れすることなく惜しみなく与えてくれる愛の言葉に、身体の中に温かいものが巡り、幸福感が溢れてくる。
「うん、俺も…。だから大丈夫」
どうしても恥ずかしくて俺の方からははっきり言えないけど、手を握る二人の指が温かくて、俺の身体までポカポカしてきた。
「アキラ様? お身体が?!」
「魔力を放出されているのですか? いけません! またっ」
慌てる二人に両側から抱きしめられて自分を見下ろせば、なんだこれ。俺光ってる? でも魔力を放出している感じは無くて、凄く満たされてる感じ。まさにHPMP満タン状態だ。
「二人とも落ち着いてください。魔力の放出はされていないようですよ。今のアキラ様は満たされた状態なのでは?」
なだめるニスカーナンの言う通りなんだけど、言い当てられてしまうと面映ゆい。
「そう、だね…。二人の気持ちが嬉しくて、胸がいっぱいかも…」
自分の胸に手を当てれば鼓動も少し早い気がする。そして気付けば光るのもおさまっていた。
「ああ、アキラ様。良かった、本当に…」
「アキラ様、良かった…、生きた心地がしませんでした」
「リック? ちょ、エド?」
抱きしめてる二人が俺の頭やこめかみにキスをしてきて、あ、手も取られて甲にも。
わっ、こらっ! ほっぺに唇が下りてきた!
ニスカーナンの呆れ顔と苦笑いのクルサード侯爵の視線がいたたまれない。
だから~、自重して~!!
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