異世界で神子になりまして

negi

文字の大きさ
48 / 89

48 不安

しおりを挟む
 鏡の前で抱き合っていると二人の体温を感じて気持ちも落ち着いてきた。お互いの不安の原因を取り除くにはどうしたらいいんだろう。

「申し訳ありません。嫉妬深い私たちをお許しください」

「アキラ様が魅力的過ぎて、気持ちが先走ってしまいました」

 ちっとも悪い事なんかないのに謝ってくる二人に胸が苦しくなる。いつも俺を優先してこんなに俺のことを思ってくれる二人が大好きだ。だからこのままお互いに不安を抱えたままなのは嫌なんだ。

「二人はどうして不安になるの?」

 俺の問いかけに二人が黙り込む。それに何かに耐えるような表情をしている。

「俺には二人だけだよ。他にどんなに格好いい人が現れても変わらない」

 俺を見つめる二人の瞳に熱を感じる。だから、ずっと気になっていたことを聞いた。

「俺と、…最後までしないのは、どうして?」

 ほんのわずかだけど、二人の身体がぴくっと反応した。

まだ数回しか肌を合わせていないけど、俺だけ感じさせるばかりで手で処理を一緒にしたくらいしかしていない。

「俺が男だから、その気にならない?」

 自分で言ってダメージを受けた。でもそうなのかもしれない。俺は神子で愛されないと消える存在で、だから…

「そんなわけがないでしょう!」

「こんなに愛しているんです。だからこそ、出来ない!」

良くない方に傾いていた気持ちが二人の叫びで引き戻された。過剰な反応に答えを見つけた気がして更に問いかけてみた。

「どうして出来ないの? 思い合って恋人同士になったら自然なことだろ?」

答えが欲しくて聞いたのに、予想外の反応が返ってきた。

「恋人…私とアキラ様が…」

「恋人同士…そうか…」

 呆然とつぶやく二人に頭が真っ白になって、二人の声が遠い。まさか、そう思っていたのは俺だけなのか? 目に映るものがゆらゆら揺れて、そして流れていった。

「アキラ様?!」

「ああ?! こんなに泣いて」

「俺たち、恋人、じゃ、なか、ったのか…」

 悲しくて思いがこぼれたら、後頭部に指が差し込まれて引き寄せられ、いきなりリックに唇を塞がれた。わけがわからないし、泣いているから余計に苦しくて思わず唇を噛んでしまった。離れていく口元は血が滲んでいる。

「あ…、ごめ、なさい」

「いいのです。こんな傷に比べたら…っ」

「私たちが間違えたためにアキラ様を悲しませてしまった!」

 驚いて涙の止まった俺を二人が抱えて寝室に連れていかれた。そっとベッドに下ろされて、今度はエドの唇が下りてくる。思わず身構える俺に構わずキスをするエドの瞳は熱を帯びていつもより煌めいている。

「ん、どう、して?」

「私たちはアキラ様を愛しています。だからこそ、どうしても失いたくなかった」

「神の声に、アキラ様が愛されなければ消えると告げられて、それから愛情を隠さずにお伝えしてきました」

言葉の通り、二人から愛情を向けられていると感じていた。だから恋人同士になったと思っていたんだ。

「アキラ様は一度、腕の中で消えかけた…。その恐怖が忘れられない…」

あの出来事が相当ショックだったみたいで、二人の瞳には暗い影が落ちている。そこまでのトラウマを与えていたなんて知らなかった。

「最後までしないのか、とお聞きになりましたね? それはあなたに私たちの欲望をぶつける事になると思ったのです」

「体格差もありますし、苦痛を与える事になるかもしれない。あなたに苦しい思いをさせるくらいなら、自分たちの欲望など抑え込むつもりでした」

じゃあ二人は俺の身体を心配して我慢していたってことなのか? まさかそんな風に考えていたなんて。

「愛しいあなたを前に、いつか欲望に負けてしまう日が来るのを恐れていました。だから他の者があなたに邪な思いを向けるのが我慢できなかった」

「けれどアキラ様が恋人だからそれは自然な事だと言ってくださって、失うことを恐れるあまりに本質を忘れていた私たちの目を覚ましてくれました」

「じゃあ、俺たちは、恋人?」

「「 はい! 」」

嬉しくて伸ばした手を二人がそれぞれ取ってキスしてくれる。

「愛しています。恋人のあなたを感じたい」

「手加減できないかもしれません。それでもいいですか?」

「うん、いいよ」




しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

最強βの俺が偽装Ωになったら、フェロモン無効なのに狂犬王子に求愛されました~前世武道家なので物理で分からせます~

水凪しおん
BL
前世は日本の武道家、今世は平民β(ベータ)のルッツ。 「Ωだって強い」ことを証明するため、性別を偽り「Ω」として騎士団へ入団した彼は、その卓越した身体能力と前世の武術で周囲を圧倒する。 しかし、その強さと堂々とした態度が仇となり、最強のα(アルファ)である第一王子・イグニスの目に止まってしまった! 「お前こそ俺の運命の番だ」 βだからフェロモンなんて効かないのに、なぜかイグニスの熱烈な求愛(物理)攻撃を受ける日々に突入!? 勘違いから始まる、武闘派β×最強王子のドタバタ王宮BLファンタジー!

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

処理中です...