70 / 89
70 情報網
しおりを挟む
マーカスの実家の領地から戻り、エドとリックの胸板サンド状態で辺りを見回すと、王宮の転移陣の部屋にはなんだかたくさんの人が集まっていた。
ここにニスカーナンとクルサード侯爵、それと騎士たちが待機しているのはわかるけど、なんで貴族たちまでいるんだろう。そして俺たちを見て「成功だ!」とか「本当に四人で帰ってきた!」と歓声を上げて騒いでいる。
しかもあれは陛下だよな? なんで王様までいるんだろう。
「お帰りなさいませ。ご無事で何よりでございます」
転移陣から下りていくと一番前にいたニスカーナンが笑顔で迎えてくれた。
「えぇっと…、ニスカーナン? ただいま…?」
でも俺の微妙な表情を見てその笑顔が苦笑に変わっていく。
「申し訳ございません。アキラ様の転移の成功をどうしても見たいと多くの貴族から嘆願されまして、このような状態に…」
俺に謝罪した後、小声で「お任せください」と囁いたニスカーナンが集まっている人達に振り返った。
「アキラ様は転移を使い疲弊していた領地へ最速で赴き、祈りを捧げるだけでなく、魔法も使ってその土地を癒してくださいました」
ニスカーナンは俺がマーカスの実家の領地でしたことをほとんど知っていて、どれ程その土地が潤ったか、そして多くの領民に感謝されたのかを語った。
なんでそんなに知っているんだ?
「アキラ様はそれをたった一日で成し遂げてくださいました。けれど疲弊されて休息を取らねばならない場面もありました」
いや待て。
その休息って北西の農地のあれか?
いったいどこまで知っているんだ?
情報網どうなってんの?
俺の困惑をよそにニスカーナンの話は続く。
「アキラ様お一人にご負担をかけることは陛下も望んでおりません。ですがアキラ様の御慈悲にすがらなければこの国は疲弊していくばかり…」
そこからたくみにニスカーナンは貴族たちを誘導し、俺がどこの領地に赴いても全面的に協力するように導いていった。
おかげで貴族たちから「我が領地では何の不自由もさせません!」「何かご希望があれば言ってください!」なんて言葉をかけてもらえた。
更に陛下までもが前に出て来て、騒いでいた貴族たちが静まり返る。
「アキラ殿の転移の補助を騎士団に命じる。決して無理をさせてはならない」
陛下がその場の貴族たち全員に届く威厳のある声で騎士団長に命令を下した。そして陛下の命令に騎士団長が恭しく膝をつくのが見えた。
ありがとう陛下。
でも、騎士団とは仲良くしたいけど、騎士団長とは出来るだけ関わりたくないんだ。
よし! 俺たちの窓口は副団長のアンドレアスを指名しよう。
なんて勝手に決めていたら、陛下がゆっくりこちらに歩いて来て俺の前まで来た。
エドとリックが膝をつき、陛下が俺の両手を取り胸のあたりまで持ち上げた。こんなに近くで会うのはこの世界に来た時の謁見の間以来だろうか?
「我が国のため尽力してくれたことに感謝する」
そう言って俺の手を更に持ち上げた陛下が身体を倒して手の甲に額を触れさせた。
陛下の後ろにいた護衛たちが目を瞠り、周りからどよめきが上がる。騎士たちの中で俺の専属部隊の者が目を輝かせてこちらを見ていた。
流石に俺も陛下のこの行為が特別なものだとわかる。
でもこれどういう反応したらいいんだ? こういう時の作法なんて勉強してないよ。
困っていたら顔を上げた陛下と目が合った。手を離されるとその口元が弧を描いて「疑っていてすまなかった」と俺にしか聞こえないくらいの声が届く。そして直ぐに振り返った。
「領地を癒したアキラ殿には休息が必要だ。道を開けてくれ」
陛下の一声で集まっていた人が移動して出口までの道が出来た。
さすがは一国の王様だ。まるでモーゼの十戒の海割りみたいになったぞ。
ゆっくり休むように陛下から労いの言葉をもらって送り出され、立ち上がったエドとリック、マーカスと一緒に転移陣の部屋を後にした。
ここにニスカーナンとクルサード侯爵、それと騎士たちが待機しているのはわかるけど、なんで貴族たちまでいるんだろう。そして俺たちを見て「成功だ!」とか「本当に四人で帰ってきた!」と歓声を上げて騒いでいる。
しかもあれは陛下だよな? なんで王様までいるんだろう。
「お帰りなさいませ。ご無事で何よりでございます」
転移陣から下りていくと一番前にいたニスカーナンが笑顔で迎えてくれた。
「えぇっと…、ニスカーナン? ただいま…?」
でも俺の微妙な表情を見てその笑顔が苦笑に変わっていく。
「申し訳ございません。アキラ様の転移の成功をどうしても見たいと多くの貴族から嘆願されまして、このような状態に…」
俺に謝罪した後、小声で「お任せください」と囁いたニスカーナンが集まっている人達に振り返った。
「アキラ様は転移を使い疲弊していた領地へ最速で赴き、祈りを捧げるだけでなく、魔法も使ってその土地を癒してくださいました」
ニスカーナンは俺がマーカスの実家の領地でしたことをほとんど知っていて、どれ程その土地が潤ったか、そして多くの領民に感謝されたのかを語った。
なんでそんなに知っているんだ?
「アキラ様はそれをたった一日で成し遂げてくださいました。けれど疲弊されて休息を取らねばならない場面もありました」
いや待て。
その休息って北西の農地のあれか?
いったいどこまで知っているんだ?
情報網どうなってんの?
俺の困惑をよそにニスカーナンの話は続く。
「アキラ様お一人にご負担をかけることは陛下も望んでおりません。ですがアキラ様の御慈悲にすがらなければこの国は疲弊していくばかり…」
そこからたくみにニスカーナンは貴族たちを誘導し、俺がどこの領地に赴いても全面的に協力するように導いていった。
おかげで貴族たちから「我が領地では何の不自由もさせません!」「何かご希望があれば言ってください!」なんて言葉をかけてもらえた。
更に陛下までもが前に出て来て、騒いでいた貴族たちが静まり返る。
「アキラ殿の転移の補助を騎士団に命じる。決して無理をさせてはならない」
陛下がその場の貴族たち全員に届く威厳のある声で騎士団長に命令を下した。そして陛下の命令に騎士団長が恭しく膝をつくのが見えた。
ありがとう陛下。
でも、騎士団とは仲良くしたいけど、騎士団長とは出来るだけ関わりたくないんだ。
よし! 俺たちの窓口は副団長のアンドレアスを指名しよう。
なんて勝手に決めていたら、陛下がゆっくりこちらに歩いて来て俺の前まで来た。
エドとリックが膝をつき、陛下が俺の両手を取り胸のあたりまで持ち上げた。こんなに近くで会うのはこの世界に来た時の謁見の間以来だろうか?
「我が国のため尽力してくれたことに感謝する」
そう言って俺の手を更に持ち上げた陛下が身体を倒して手の甲に額を触れさせた。
陛下の後ろにいた護衛たちが目を瞠り、周りからどよめきが上がる。騎士たちの中で俺の専属部隊の者が目を輝かせてこちらを見ていた。
流石に俺も陛下のこの行為が特別なものだとわかる。
でもこれどういう反応したらいいんだ? こういう時の作法なんて勉強してないよ。
困っていたら顔を上げた陛下と目が合った。手を離されるとその口元が弧を描いて「疑っていてすまなかった」と俺にしか聞こえないくらいの声が届く。そして直ぐに振り返った。
「領地を癒したアキラ殿には休息が必要だ。道を開けてくれ」
陛下の一声で集まっていた人が移動して出口までの道が出来た。
さすがは一国の王様だ。まるでモーゼの十戒の海割りみたいになったぞ。
ゆっくり休むように陛下から労いの言葉をもらって送り出され、立ち上がったエドとリック、マーカスと一緒に転移陣の部屋を後にした。
219
あなたにおすすめの小説
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
転生した気がするけど、たぶん意味はない。(完結)
exact
BL
11/6〜番外編更新【完結済】
転生してきたのかなーと思いつつも普通に暮らしていた主人公が、本物の主人公と思われる人物と出会い、元の世界に帰りたがっている彼を手伝う事こそ転生の意味だったんだと勝手に確信して地道に頑張る話。元同級生✕主人公(受け)。ゆるーっと話が進みます。全50話。
表紙は1233様からいただきました。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる