異世界で神子になりまして

negi

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 マーカスの実家の領地から戻り、エドとリックの胸板サンド状態で辺りを見回すと、王宮の転移陣の部屋にはなんだかたくさんの人が集まっていた。

 ここにニスカーナンとクルサード侯爵、それと騎士たちが待機しているのはわかるけど、なんで貴族たちまでいるんだろう。そして俺たちを見て「成功だ!」とか「本当に四人で帰ってきた!」と歓声を上げて騒いでいる。

 しかもあれは陛下だよな? なんで王様までいるんだろう。


「お帰りなさいませ。ご無事で何よりでございます」

転移陣から下りていくと一番前にいたニスカーナンが笑顔で迎えてくれた。
 
「えぇっと…、ニスカーナン? ただいま…?」

でも俺の微妙な表情を見てその笑顔が苦笑に変わっていく。

「申し訳ございません。アキラ様の転移の成功をどうしても見たいと多くの貴族から嘆願されまして、このような状態に…」

 俺に謝罪した後、小声で「お任せください」と囁いたニスカーナンが集まっている人達に振り返った。

「アキラ様は転移を使い疲弊していた領地へ最速で赴き、祈りを捧げるだけでなく、魔法も使ってその土地を癒してくださいました」

 ニスカーナンは俺がマーカスの実家の領地でしたことをほとんど知っていて、どれ程その土地が潤ったか、そして多くの領民に感謝されたのかを語った。
 なんでそんなに知っているんだ?

「アキラ様はそれをたった一日で成し遂げてくださいました。けれど疲弊されて休息を取らねばならない場面もありました」

いや待て。
その休息って北西の農地のあれか?
いったいどこまで知っているんだ? 
情報網どうなってんの? 

俺の困惑をよそにニスカーナンの話は続く。

「アキラ様お一人にご負担をかけることは陛下も望んでおりません。ですがアキラ様の御慈悲にすがらなければこの国は疲弊していくばかり…」

 そこからたくみにニスカーナンは貴族たちを誘導し、俺がどこの領地に赴いても全面的に協力するように導いていった。

おかげで貴族たちから「我が領地では何の不自由もさせません!」「何かご希望があれば言ってください!」なんて言葉をかけてもらえた。

 更に陛下までもが前に出て来て、騒いでいた貴族たちが静まり返る。

「アキラ殿の転移の補助を騎士団に命じる。決して無理をさせてはならない」

 陛下がその場の貴族たち全員に届く威厳のある声で騎士団長に命令を下した。そして陛下の命令に騎士団長が恭しく膝をつくのが見えた。


 ありがとう陛下。
でも、騎士団とは仲良くしたいけど、騎士団長とは出来るだけ関わりたくないんだ。
 よし! 俺たちの窓口は副団長のアンドレアスを指名しよう。

 なんて勝手に決めていたら、陛下がゆっくりこちらに歩いて来て俺の前まで来た。
エドとリックが膝をつき、陛下が俺の両手を取り胸のあたりまで持ち上げた。こんなに近くで会うのはこの世界に来た時の謁見の間以来だろうか?

「我が国のため尽力してくれたことに感謝する」

 そう言って俺の手を更に持ち上げた陛下が身体を倒して手の甲に額を触れさせた。

 陛下の後ろにいた護衛たちが目を瞠り、周りからどよめきが上がる。騎士たちの中で俺の専属部隊の者が目を輝かせてこちらを見ていた。

流石に俺も陛下のこの行為が特別なものだとわかる。

でもこれどういう反応したらいいんだ? こういう時の作法なんて勉強してないよ。
困っていたら顔を上げた陛下と目が合った。手を離されるとその口元が弧を描いて「疑っていてすまなかった」と俺にしか聞こえないくらいの声が届く。そして直ぐに振り返った。

「領地を癒したアキラ殿には休息が必要だ。道を開けてくれ」

 陛下の一声で集まっていた人が移動して出口までの道が出来た。
さすがは一国の王様だ。まるでモーゼの十戒の海割りみたいになったぞ。 

 ゆっくり休むように陛下から労いの言葉をもらって送り出され、立ち上がったエドとリック、マーカスと一緒に転移陣の部屋を後にした。



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