異世界で神子になりまして

negi

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「…侯爵もコピペ、出来るんじゃないかな?」

微妙に不機嫌なエドとリックをなだめつつ、少し顔色の悪いクルサード侯爵に提案してみた。だって魔法って万能感あるし、クルサード侯爵みたいな高位貴族は魔力も高いだろうから出来そうだよね。

「私も? ……出来るでしょうか?」


戸惑いつつも興味はある感じの侯爵に、俺が薄布にコピペした感覚を出来る限り丁寧に伝えた。侯爵は俺の説明を真剣に聞いてから転移陣の見本をじっと見つめて、助手が用意した薄布にコピペを実践してみることになった。近くにあった方が良いかもしれないからインク瓶も側に置くように準備してもらう。


「アキラ様。こぴぺ、にはどのくらいの魔力を使いますか?」

側で見ていたエドが、俺の目を見て確認するように聞いてきた。


――そうだった。俺の魔力は尽きないように設定されている。


コピペをしたときに自分の中の魔力が動くのをはっきり感じた。これはかなりの魔力を使うのかもしれない。

「クルサード侯爵、ちょっと待って!」

「ひっ!? へぁ? 神子様?」

ガンっ!! ゴロゴロ……

「ひゃぁっ! もっ、申し訳ございません!!」

準備していたインク瓶が床に落ちて転がる音が部屋内に響く。慌てて止めたら大きな声が出てしまい、侯爵と助手の二人を飛び上がらんばかりに驚かせてしまったようだ。落としたインク瓶が割れなくて本当に良かった。

「あ~、驚かせてごめんなさい。コピペにはかなりの魔力を使うみたいなんだ。だから最初は小さいものから試した方が良いかもしれない」

「かなりの魔力…。神子様がおっしゃるなら相当なのでしょう」

俺のアドバイスを聞いた侯爵が、図書室内の本の中から情報が少ないページを選び出し、それを別の紙にコピペすることになった。初めて実践するのだから出来るだけ負担が少ない方が良いということで、タイトルの書かれたページが選ばれた。



緊張した面持ちの侯爵が、開いたページのタイトル文字を俺と同じようにタップした。

「文章を複製…、おぉ?!」

俺の時と同じようにインクが集まり出来上がった複製を、指を動かし移動する。震える指が直ぐに側にあった紙をタップしたので拡大までは出来なかったが、見事にコピペを成功させた。

「こ、これは、あぁ、私にも、出来るとは!!」

コピペを成功させた侯爵は息が上がっていて額に汗も浮かべている。

「大丈夫ですか? そんなに身体に負担がかかるとは思わなくて…」

無茶をさせてしまったとオロオロする俺に、侯爵は嬉しそうな笑顔を向けてくれた。

「はは、大丈夫ですよ。短い文章だったからか魔力はそれほど消費しておりません。こんなに緊張したのは久しぶりでしたから、身体に力が入り過ぎました。それよりも、素晴らしい魔術を伝授していただきありがとうございます。本当に、これは歴史が変わる程の魔術です!」

達成感でいっぱいな表情の侯爵はとにかく嬉しそうだけど、一応注意もしておいた。

「俺の世界では、不正にコピペを使った犯罪もあったんだ。だから重要な書類の管理も一緒に考えて使っていかなければ駄目だと思うよ」

俺の言葉に侯爵の表情が一瞬で引き締まる。宰相であるニスカーナンと懇意にしていて、この国の高位の貴族だからこそ、危うさに気付いてくれたみたいだ。

まあ、コピペの扱いについてはニスカーナンと相談して決めてもらおう。




そして、まだ少し興奮気味の侯爵に、俺が思いついたことを言ってみた。

「転移陣を丈夫な布に描いたら、持ち歩けて便利だと思わない?」

薄布に下描きをするって聞いて、思いついたのがこれだ。何処でも下に敷いて転移できたら便利だよね。インクに余裕があれば何枚か作りたい。
良い考えだと思ったのに、俺以外は困惑の表情を浮かべている。

「何とも贅沢な使い方ですな。ですが、転移陣がその場に置き去りになりませんか? 騎士に回収させるのでしょうか?」

クルサード侯爵が申し訳なさそうに進言してくれたけど、それも想定していた。

「布に丈夫な紐や鎖をつけて、それを離れないようにベルトや腕輪に繋げておいたら一緒に移動できないかな?」

それが不可能だったら侯爵が言ったように騎士に回収を頼むことになるかな。でも、どんな場所からでも転移出来る様になれば、かなり便利だと思ったんだ。

「魔法陣が一緒に移動できなくても、緊急時に役にたちそうだろう?」

そんな俺の提案にエドとリックが賛同してくれた。

「それが実現できればどんな場所からでも戻れますね…」

「いざというときのアキラ様の安全確保にも良いかもしれません」

そして色々な利便性を挙げていく。そのほとんどが俺の安全や休養に関してなのが、嬉しいけど恥ずかしい。俺、本当に愛されてるよね。

少し考え込む様子だった侯爵も、新しい試みへの興味の方が勝ったようだ。

「魔力に対して丈夫な布や紐を準備させます。私も実現できるように是非とも協力させていただきたい」

「ありがとう! 頼りにしてます!」

もろ手を挙げて感謝を伝えたら、珍しく侯爵が照れ顔を見せてくれた。


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