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86 コピペを実践
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協力を惜しまないと言ってくれたクルサード侯爵が、数日と待たずに丈夫な布や紐、鎖やベルトまで用意してくれた。
俺はいつもの図書室のサロンで試そうと思っていたのだけれど、何故か王宮の会議室で、陛下、王太子、第二王子、ニスカーナン、それにアンドレアスまで参加することになっていた。この国の重要人物が集まっちゃったよ!?
「どうしてこんな大事に…」
これだけの大物が揃うと、部屋の扉の前だけでなく外にも大勢の護衛がいるし、この会議室は結界が張られていて魔法攻撃も通さないらしい。もちろん外に音が漏れることも無い。
お膳立てしたクルサード侯爵に視線を向ければ、申し訳なさそう説明してくれた。
「この魔術は高い利便性がある反面、アキラ様にご指摘いただいた通り非常に危ういものです。今後の為にも国の上層部に正しく認識していただく必要があると判断いたしました」
俺から教わってすぐにニスカーナンに相談して、そこから陛下にも伝えて協議した結果がこの会議室の様子に繋がるらしい。まあ、確かに不用意に広めるのは不味いものかもしれない。それに、俺の世界でどんな犯罪が起きていたかも聞いて対策したいと言われてしまえば、納得するしかないよな。
目の前の机には転移陣の見本と三人が乗れる大きさの布、そして魔石から作られた専用のインクが準備されている。国の最重要人物たちが見守る中、見本の上に手をかざした。
「まず最初に魔法陣を複製します」
皆の視線が俺の指先に集中しているのを感じながら、見本に描かれた魔法陣をタップした。今回は専用インクを使うことを意識したから、ちゃんと用意された瓶からインクが指先に集まって来た。前回普通のインクでコピペした時よりも魔力の消費が激しくて、ギュルギュルと魔力が動いているのが分かる。それに…
「インクが光っています!」
「これは、美しいな…」
「前回は光りませんでした。やはり専用のインクは違うのでしょうか?」
そうなんだよ、ニスカーナンや陛下も驚いてるように、見本の上に集まって来たインクがキラキラ光ってるんだよ。なんか複製にも時間がかかってるし、魔力も物凄く使ってる。
「かなり魔力が流れてるから、光ってるのかも? 複製できたから移動するよ」
出来上がった魔法陣を横に置かれた布の上に持っていき、大きさに合わせて拡大すると、インクが補充されて更に魔力が流れていく。これは相当魔力を使っているぞ。
「拡大や縮小はこんな感じで、移したいところにタップします」
布の中心にキラキラと輝く魔法陣をトンっと押し付ければ、光は飛散して魔法陣が綺麗に定着した。ものすごく魔力は使うけど、我ながらいい感じに出来たと思う。
「これで、転移魔法陣、完成です」
出来上がった転移魔法陣から顔を上げると、皆無言で完成したばかりの魔法陣を凝視していた。そんな中で最初に声を上げたのはクルサード侯爵だ。
「素晴らしい!! こんな魔術を間近で見ることが出来るなんて、私は何て幸運なのでしょう! ああ! 魔法陣も完璧な出来上がりです!」
はしゃぐ侯爵に周りのみんなもやっと声を上げはじめる。
「…こんな一瞬で出来てしまうなんて」
「ああ、本来なら何日もかけて作り上げるものが…」
「殿下、アキラ様は神のお言葉を聞くことの出来る規格外のお方です。常人には真似できない御業なのですよ」
ニスカーナンに言われた王子二人がキラキラした瞳をこちらに向けてきた。あんまり変な事を吹き込まないで欲しい。
「専用インクはかなりの魔力を使うけど、普通のインクならクルサード侯爵も出来ましたよ」
きっとこの部屋にいる人達は魔力が多いだろうから、みんな出来るはずだ。
クルサード侯爵はちゃんとそれも見越していて、試すのにちょうど良い書類や普通のインクも準備されていた。
「アキラ様のおっしゃる通り、私にも『こぴぺ』は出来ました。素材を準備しておりますので、試してみたい方はどうぞこちらに…」
「是非、やらせていただきたい」
クルサード侯爵の呼びかけに直ぐに応えたのはアンドレアスだ。以外に好奇心が旺盛なんだなって思ってた俺の耳元に、リックが囁く。
「アンドレアスは騎士団きっての魔力の持ち主です」
「そうなの?」
「はい。私やエドよりも多いはずです」
リックは元騎士団副団長だし、エドは第二王子の元護衛だ。そんな二人より魔力が多いなら、コピペも問題なく出来るだろう。クルサード侯爵にやり方を教わったアンドレアスは、予想通り一枚の書類全てを簡単にコピペ出来てしまった。
「これは、確かに魔力をかなり使いますが、凄い魔術です」
アンドレアスが元の書類と複製した書類を両手にそれぞれ持って見比べながら感心している。今までは一枚一枚手書きで書き写すものが、一瞬で出来上がれば驚くのも当然かもな。
「誰でもある程度の魔力があれば出来るから、同じものがたくさん作りたいときに便利だろ? まあ、そこが危ういんだけど…」
そう言った俺に注目してくれている皆に向かって、少ない魔力でもコピペ出来てしまう短い文章だったり、小さな紋章や判なんかをコピーされると悪用されてしまうことがあるのを説明した。
「例えば、陛下やニスカーナンのサインとか、了承の判や印は小さいものだから簡単にコピペ出来てしまう。悪用したいと思う人がいれば危ういだろ?」
「それは、確かに恐ろしいですね。この魔術の運用は慎重に進めなくては…」
難しい顔になったニスカーナンが顎に手を当てて考え込んでいる。陛下や王子たちも真剣な顔で言葉を交わしているから、危うさは伝わったようだ。まあ、ニスカーナンに任せておけば、きっと上手く運用してくれるだろう。
俺はいつもの図書室のサロンで試そうと思っていたのだけれど、何故か王宮の会議室で、陛下、王太子、第二王子、ニスカーナン、それにアンドレアスまで参加することになっていた。この国の重要人物が集まっちゃったよ!?
「どうしてこんな大事に…」
これだけの大物が揃うと、部屋の扉の前だけでなく外にも大勢の護衛がいるし、この会議室は結界が張られていて魔法攻撃も通さないらしい。もちろん外に音が漏れることも無い。
お膳立てしたクルサード侯爵に視線を向ければ、申し訳なさそう説明してくれた。
「この魔術は高い利便性がある反面、アキラ様にご指摘いただいた通り非常に危ういものです。今後の為にも国の上層部に正しく認識していただく必要があると判断いたしました」
俺から教わってすぐにニスカーナンに相談して、そこから陛下にも伝えて協議した結果がこの会議室の様子に繋がるらしい。まあ、確かに不用意に広めるのは不味いものかもしれない。それに、俺の世界でどんな犯罪が起きていたかも聞いて対策したいと言われてしまえば、納得するしかないよな。
目の前の机には転移陣の見本と三人が乗れる大きさの布、そして魔石から作られた専用のインクが準備されている。国の最重要人物たちが見守る中、見本の上に手をかざした。
「まず最初に魔法陣を複製します」
皆の視線が俺の指先に集中しているのを感じながら、見本に描かれた魔法陣をタップした。今回は専用インクを使うことを意識したから、ちゃんと用意された瓶からインクが指先に集まって来た。前回普通のインクでコピペした時よりも魔力の消費が激しくて、ギュルギュルと魔力が動いているのが分かる。それに…
「インクが光っています!」
「これは、美しいな…」
「前回は光りませんでした。やはり専用のインクは違うのでしょうか?」
そうなんだよ、ニスカーナンや陛下も驚いてるように、見本の上に集まって来たインクがキラキラ光ってるんだよ。なんか複製にも時間がかかってるし、魔力も物凄く使ってる。
「かなり魔力が流れてるから、光ってるのかも? 複製できたから移動するよ」
出来上がった魔法陣を横に置かれた布の上に持っていき、大きさに合わせて拡大すると、インクが補充されて更に魔力が流れていく。これは相当魔力を使っているぞ。
「拡大や縮小はこんな感じで、移したいところにタップします」
布の中心にキラキラと輝く魔法陣をトンっと押し付ければ、光は飛散して魔法陣が綺麗に定着した。ものすごく魔力は使うけど、我ながらいい感じに出来たと思う。
「これで、転移魔法陣、完成です」
出来上がった転移魔法陣から顔を上げると、皆無言で完成したばかりの魔法陣を凝視していた。そんな中で最初に声を上げたのはクルサード侯爵だ。
「素晴らしい!! こんな魔術を間近で見ることが出来るなんて、私は何て幸運なのでしょう! ああ! 魔法陣も完璧な出来上がりです!」
はしゃぐ侯爵に周りのみんなもやっと声を上げはじめる。
「…こんな一瞬で出来てしまうなんて」
「ああ、本来なら何日もかけて作り上げるものが…」
「殿下、アキラ様は神のお言葉を聞くことの出来る規格外のお方です。常人には真似できない御業なのですよ」
ニスカーナンに言われた王子二人がキラキラした瞳をこちらに向けてきた。あんまり変な事を吹き込まないで欲しい。
「専用インクはかなりの魔力を使うけど、普通のインクならクルサード侯爵も出来ましたよ」
きっとこの部屋にいる人達は魔力が多いだろうから、みんな出来るはずだ。
クルサード侯爵はちゃんとそれも見越していて、試すのにちょうど良い書類や普通のインクも準備されていた。
「アキラ様のおっしゃる通り、私にも『こぴぺ』は出来ました。素材を準備しておりますので、試してみたい方はどうぞこちらに…」
「是非、やらせていただきたい」
クルサード侯爵の呼びかけに直ぐに応えたのはアンドレアスだ。以外に好奇心が旺盛なんだなって思ってた俺の耳元に、リックが囁く。
「アンドレアスは騎士団きっての魔力の持ち主です」
「そうなの?」
「はい。私やエドよりも多いはずです」
リックは元騎士団副団長だし、エドは第二王子の元護衛だ。そんな二人より魔力が多いなら、コピペも問題なく出来るだろう。クルサード侯爵にやり方を教わったアンドレアスは、予想通り一枚の書類全てを簡単にコピペ出来てしまった。
「これは、確かに魔力をかなり使いますが、凄い魔術です」
アンドレアスが元の書類と複製した書類を両手にそれぞれ持って見比べながら感心している。今までは一枚一枚手書きで書き写すものが、一瞬で出来上がれば驚くのも当然かもな。
「誰でもある程度の魔力があれば出来るから、同じものがたくさん作りたいときに便利だろ? まあ、そこが危ういんだけど…」
そう言った俺に注目してくれている皆に向かって、少ない魔力でもコピペ出来てしまう短い文章だったり、小さな紋章や判なんかをコピーされると悪用されてしまうことがあるのを説明した。
「例えば、陛下やニスカーナンのサインとか、了承の判や印は小さいものだから簡単にコピペ出来てしまう。悪用したいと思う人がいれば危ういだろ?」
「それは、確かに恐ろしいですね。この魔術の運用は慎重に進めなくては…」
難しい顔になったニスカーナンが顎に手を当てて考え込んでいる。陛下や王子たちも真剣な顔で言葉を交わしているから、危うさは伝わったようだ。まあ、ニスカーナンに任せておけば、きっと上手く運用してくれるだろう。
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