23 / 48
【ピピリとピリリの隊商道中記―其の三】
しおりを挟む
私達が置いてもらっている隊商は、山岳地帯を越え次の街まであと二日というところまで来ていた。
嬉しいことに、砂漠、山岳を抜けると陽が高い時間帯でもさほど暑くなくなった。熱さに弱い私達姉妹にはこれ以上なく幸いなことだった。
「ピピリ、何だか変な匂いがしない?嗅いだことの無い匂い。何だろう」
「ピリリは心配性だなー。初めて来た場所なんだから当たり前でしょー」
幌車の屋根の上にピピリと並んで座り、辺りを警戒する私達の警備網に何かが引っ掛かった。
ピピリはのほほんとしているけれど、これはこの子の性格が楽観的なだけで、状況を把握した上での発言でないことを私はよく解っている。ピピリは基本的に危機感が乏しいのだ。
今も私の隣でツンと立った犬鼻をふんふんと鳴らしている。
……ちょっと可愛い。不謹慎だけれどそう思ってしまった。
「それにさぁ。こんだけ開けた場所なら、ウチ達の視力なら5キロくらい先なら見通せちゃうよー? そんで今のところ怪しいものは見当たらないし。ピリリは何が気になってるの?」
「それはそうだけれど……。砂漠を抜けて、山岳も無事に越えて来れたけれど、荒野を旅するって、こんなに簡単なものなのかしら。お守りのお陰? ピピリ、一応注意だけはしてっ」
「?!」
「!?」
「ピリリ、何かいる?!」
「ピピリ隊長に報告を!」
ピピリが屋根から飛び降り先頭を走る隊長の幌車へと走り出す。
私とピピリは視力もそうだが、半獣人の特徴として嗅覚が特に優れている。人間と比べると数千倍くらいあるらしい。
これは1キロ離れた所にある果実が腐っているか匂いで判断できるレベルだ。
普段から嗅覚を十全に駆使していると、匂いのせいで自分達がダメージを受けてしまうので口元までターバンを巻いたりして鼻を隠しているけれど(ダメージを受けると酷い頭痛に襲われてしまう)、警戒する時は別だ。
その私達の嗅覚が、はっきりと魔物の匂いを捉えた。それもこれまで嗅いだことの無い匂いだ。
辺りは見渡す限り草すら生えていない荒れた大地。魔物が隠れるような遮蔽物は見当たらない。
それに、私達の嗅覚を以て感知が遅れたことを考えるに対象の匂いが風で運ばれて来たのではなく、密閉に近い状態にあると考えられる。
つまり、魔物は空ではなく、地中にいる可能性が極めて高い!
蟻地獄のような罠を張っているのか、蚯蚓型の地中を這う魔物かもしれない。土竜や蟻のように地中を掘り進む魔獣も考えられる。
まさかとは思うが、蟻だとしたら非常に危険だ。数はそれだけで暴力だし、個ではなく集団で連携するやつもいる。それに、生きたまま捕まって幼虫の餌にされることすら考えられる。
隊長の判断に任せることになるが、もしかしたら魔物を避けて迂回したほうが良いって伝えるべきかもしれない。
と、私が思考をぐるぐる回転させているとピピリが戻ってきた。
「ピリリ、たいちょーが『大丈夫だから、このまま進むぞ』だって! 大丈夫らしいよ! 良かったね!」
(To be continued)
嬉しいことに、砂漠、山岳を抜けると陽が高い時間帯でもさほど暑くなくなった。熱さに弱い私達姉妹にはこれ以上なく幸いなことだった。
「ピピリ、何だか変な匂いがしない?嗅いだことの無い匂い。何だろう」
「ピリリは心配性だなー。初めて来た場所なんだから当たり前でしょー」
幌車の屋根の上にピピリと並んで座り、辺りを警戒する私達の警備網に何かが引っ掛かった。
ピピリはのほほんとしているけれど、これはこの子の性格が楽観的なだけで、状況を把握した上での発言でないことを私はよく解っている。ピピリは基本的に危機感が乏しいのだ。
今も私の隣でツンと立った犬鼻をふんふんと鳴らしている。
……ちょっと可愛い。不謹慎だけれどそう思ってしまった。
「それにさぁ。こんだけ開けた場所なら、ウチ達の視力なら5キロくらい先なら見通せちゃうよー? そんで今のところ怪しいものは見当たらないし。ピリリは何が気になってるの?」
「それはそうだけれど……。砂漠を抜けて、山岳も無事に越えて来れたけれど、荒野を旅するって、こんなに簡単なものなのかしら。お守りのお陰? ピピリ、一応注意だけはしてっ」
「?!」
「!?」
「ピリリ、何かいる?!」
「ピピリ隊長に報告を!」
ピピリが屋根から飛び降り先頭を走る隊長の幌車へと走り出す。
私とピピリは視力もそうだが、半獣人の特徴として嗅覚が特に優れている。人間と比べると数千倍くらいあるらしい。
これは1キロ離れた所にある果実が腐っているか匂いで判断できるレベルだ。
普段から嗅覚を十全に駆使していると、匂いのせいで自分達がダメージを受けてしまうので口元までターバンを巻いたりして鼻を隠しているけれど(ダメージを受けると酷い頭痛に襲われてしまう)、警戒する時は別だ。
その私達の嗅覚が、はっきりと魔物の匂いを捉えた。それもこれまで嗅いだことの無い匂いだ。
辺りは見渡す限り草すら生えていない荒れた大地。魔物が隠れるような遮蔽物は見当たらない。
それに、私達の嗅覚を以て感知が遅れたことを考えるに対象の匂いが風で運ばれて来たのではなく、密閉に近い状態にあると考えられる。
つまり、魔物は空ではなく、地中にいる可能性が極めて高い!
蟻地獄のような罠を張っているのか、蚯蚓型の地中を這う魔物かもしれない。土竜や蟻のように地中を掘り進む魔獣も考えられる。
まさかとは思うが、蟻だとしたら非常に危険だ。数はそれだけで暴力だし、個ではなく集団で連携するやつもいる。それに、生きたまま捕まって幼虫の餌にされることすら考えられる。
隊長の判断に任せることになるが、もしかしたら魔物を避けて迂回したほうが良いって伝えるべきかもしれない。
と、私が思考をぐるぐる回転させているとピピリが戻ってきた。
「ピリリ、たいちょーが『大丈夫だから、このまま進むぞ』だって! 大丈夫らしいよ! 良かったね!」
(To be continued)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる