異世界の住人を見守るだけの簡単なお仕事です。

虫圭

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【カレンとミルテの義姉弟―其の三】

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 女子養成兵の座学は退屈だった。
 魔術の基礎。属性とその相関性、詠唱と無詠唱の優劣、術式と魔術陣の関係性、魔力と体力の互換性、一般魔術と秘術の存在。
 どれも既知のもので、私には新鮮味がなく知識のおさらい程度のものでしかなかった。 
 強いて挙げるとすれば、医療技術だけは知らない知識が多い。とにかく奥が深いのだ。

 意外だったのは、私と共に学ぶ同期の者には浅学なものが多く、私がそらで言えるようなことを真剣に紙に書き写している者も少なくなかった。
 紙はこの国では比較的安価なものではあったが、では安いかと言うとそうでもなく、私にとっては紙を買うか、昼食を抜くか。という切実な問題だったので、過去に自力で学んだ内容の復習は、担当官が黒板に書き出す文字を記憶の中の文章と照らし合わせることで終わらせた。
 恐らく、ミルテも同様だろう。

「ねえ、カレンちゃん。カレンちゃんは、勉強も出来るし、魔術の基礎も出来てるって教官に褒められるのに、どうして養成所に入ったの?」

 私が木製の長椅子に座り、同じく木製の長机に向かい腕を組んで突っ伏していると、突然右隣から声を掛けられた。
 誰だ? どうして人があからさまに他を拒絶する雰囲気を醸しているのに、空気を無視して話し掛けて来るんだ?
「ねえカレンちゃん聞いてる?」
 むしろ聞こえない振りしてるのが分からないか? 何処の誰だか分からない奴と話すことなんか、私には何一つ無いのよ。

「こらヴェルチ! いきなり声掛けるやつがあるか! 誰だってそんな突然声掛けられたら迷惑だろ!?」

 私にしつこく声を掛けてきたのはヴェルチと言う名らしい。
 ヴェルチを後ろからはたいたもう一人の女が、ごめんねーと詫びを言いながヴェルチを捕まえて引っ張り去って行った。
 その間、私はずっと長机に向かって突っ伏したまま。微動だにしていない。
 完全に無視してやった。

 次の講義は医療技術の基礎か。治療後の感染症を抑える為の処置の手順と処置後の経過確認の記録の付け方についてだったな。
 医療技術に関しては学ぶ機会が少なかったから、出来れば復習用に何かに記して残したいけど、紙代の出費は痛い。仕方ない、努力して頭に叩き込もう。
 準備をしようと頭を起こすと、机の上に首が乗っていた。

「ひぇっ!?」
「やっと起きた!」

 ニカッ、と笑い私を見つめる女が居た。
 誰だお前は。

(To be continued)
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