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ナマ配信① 雛本彰(女体化新人)
1話 配信開始
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初夏の穏やかな日差しが入り込む、日曜日の午後だった。柔らかな日光が、ちょっとしたスタジオと化した、自宅マンションの居間を穏やかに照らす。ライトアウターにスラックス姿の僕は、ダイニングの椅子に座り、軽く伸びをする。
地上の喧噪からいくらか離れた十階のマンションに住む、僕こと河原真也は、しがないエンジニア三年目の社会人だった。親が特に裕福でもないのに、地方都市でとは言え、3LDKの新築に住めているのには、ちょっとした理由があった。
LoveLiveChat。通称ナマナマ放送という、ネットで簡単に視聴が可能な課金有りのR-18系のサイトのおかげだった。素人の女性出演者が脱いだり、自慰したり、エッチしたりのエロ配信で、小銭稼ぎに最適と言える代物だった。
誰でも視聴できる割に、運営が色々とイベントを実施し、さらに一般の非登録ユーザーにも良画素を提供したりと、割と好評だった。モザイクもなしも可能で規制も緩く、生ハメに乱交と何でもありと――他の似た配信サイトとの住み分けもできていた。最初の説明にもどるけど、僕みたいな若造の住環境が割と良い理由は、女性を呼んでは配信して副収入を得るという、ただ一点に過ぎなかった。
ピンポーン。
「おっ。来たね」
呼び鈴に応じて玄関へ向かう途中、壁掛けの全身鏡があった。そこには、黒髪の短髪で中肉中背で、紺のジャケットに灰色のスラックス姿と、同世代を焼き直したような姿の僕が一瞬だけ映った。
ガチャ。
「いらっしゃ~い」
広い玄関の扉を開放すると、鼻に女性用の整髪剤の甘い匂いが――ふわ――っと飛び込んでくる。
「……ハァ」
艶やかな金髪のロングヘアが、初夏の風でカーテンみたく揺れる。不機嫌そうな表情だけど、整った眉や目鼻立ちに加えて、薄目のメイクな彼女は、背格好も含めてスマートだった。ちょっと気が強そうな若い美女と呼ばれる部類へ、余裕で入れた。服装についても、黒のタンクトップに灰色の薄いカーディガンを羽織っていて、白の超ミニスカートという若さみなぎる格好だった。膨らんだ胸を持ち上げるみたく腕組みする彼女は、普通の男だったら三度見するくらいの魅力があった。
「真也。これで貸し借り無しだからなっ」
威圧するみたいな口調も、その透明な声質のせいで、威力も半分以下だった。軽い舌打ちの後、黒のパンプスを脱ぎ捨てて、部屋の奥へ勝手に歩いて行った。笑いそうになる表情を抑える僕は、彼女の履物を揃えてから、ゆっくりと後を追った。
――ガタッ。
「ったく」
音を立てて椅子を引く彼女は、浅めに腰をかけると、長い脚を組む。一見するとお行儀が悪い女性というか、まるで男みたいな粗野な動作とも言えた。けどまぁ、それらを埋めて余りある容姿端麗のおかげで、簡単に相殺できた。
遠慮なくその肉体に視線を突き刺す僕は、冷たい飲み物をコースターに置いて出してあげてから、その対面に座った。
「えぇっと、配信は初めてだっけ?」
カラン――彼女の前に置いたアイスコーヒーが、涼やかな音を立てる。それとは真逆な、あたかも熱がこもったような怒りの表情を作りだす。
「……お前の中で、女体化した男がどういう思考をしているのか知らんが、そもそも放送配信に出演ってのが初めてだよ」
髪を耳後ろへ揃えてから、細い指をシャープなアゴへと当てる。内情を知らない人が見たら、遊び慣れた女性の仕草にも見えるだろうだし、物憂げで男を惹きつけるポーズとも受け取れた。ただし中学のころから知り合いで、彰が元男子だったのを知る僕からすると、記憶が邪魔して興奮にまでは至らなかった。
「じゃあ復習も兼ねて手短に説明するよ? 僕はネットで知り合った女の子をお金で定期的に呼んで、エッチな生放送配信をしている。目的はもちろん、ラブコイン(※視聴者が課金して、投げ銭やチケット購入に消費される課金通貨)で収益を得るためなんだ」
僕の配信の売りの一つとして、割安なコイン相場で、けどそこそこの配信クオリティを提供するというのがあった。とはいえこのインフレの時代、何でもかんでもコストだけで勝負するのには無理があった。
「ケッ。悪どい胴元が、令和スタイルで荒稼ぎしているだけじゃねーか」
「手厳しいね。でもまぁほら、いつの時代も男の性欲は不滅であり、だからこそ色んな商売が成り立って――」
「お前の屁理屈なんて聞きたかねーっての。つまりは早い話、私に客寄せパンダになれってことなんだろ?」
「流れをわかってくれて助かるよ。ただキレイでエロいだけじゃ差別化ができない。……非常に珍しい奇病で女体化した雛本彰く――ちゃんが出演し、女体化した経緯や今現在について、根掘り葉掘り配信する。もちろん、後半はエッチに気持ち良くなってもらって、という台本さ。コンテンツのテコ入れになって、コイン獲得も捗ると思うんだよ」
わざとやらしく笑いながら、立ち上がっては配信の準備を始める。窓際のカーテンが柔らかく揺れる中、彰は行き場のない視線を部屋中へまき散らしていた。
「――気持ちよくなるのは、お前の財布と男優役の連中、あと視聴者だけだろ」
「いやいや。女優さんこと、出演者も心の底から気持ちよくなって、初めてレベルの高い配信になるんだって。素人モノのいいところは、演技に本音を混ぜていいところだと思うんだ。ましてや彰は女体化女子代表として、ガチでイッちゃってよ」
革張りのソファへカメラを向けつつ、収音マイクの感度を調整して、パソコンではタスクを複数立ち上げる。二画面の方では、配信画面も映してっと。
にしても、こういうライブ動画配信サイトは、AVの動画作成や配信の敷居を、大きく下げたねぇ。
「お、おい。今の口振りだと本番ありなのか? 聞いてねーぞ!」
細い眉を下げて、嫌そうに口を曲げる。
「今日日本番なしとか、やる気以前の問題なんだけど? ってか元男なんだからその辺わかるっしょ?」
ソファにクッションを投げ置いて、水分も画面外に置いておこう。そろそろ家に来てもらうよう、男優さんにも連絡を入れておこうかな。
「チッ……さっきも言ったが」
「わかってるって。彰が女体化した時、高校や中学の男子連中からのセックスの催促を、上手く交通整理して回避してあげた借りはチャラ。あの時の彰、ノイローゼになりかけてたくらいだもんねぇ」
まぁ、男友達が女体化したら、気軽にヤラせてくれるって期待しちゃうのもわかるけどね。彰の場合は見た目が良くなりすぎて、ただでさえ多かった悪友が、餌に群がるピラニアみたいになってたっけ。それに乗らなかった僕は、彰に手を出さない上に助けることで貸しを作り、今日にいたった、と。
「ささっ、過去のことなんてどうでもいいから配信を始めるよ~。タイトルは『新人女体化女子のアキラちゃん』で。――っと、おおっ。すでに千人以上がスタンバってくれてるよ」
「……全く嬉しかねぇよ。とりあえずソファに座ってればいいのか?」
嫌々ながらも、これで僕と縁切りが出来るからと我慢して、スカートを直しつつ座る。う~ん、こういう所作を見ると、徐々に女になってっちゃうんだねぇ。
「うん。たまにカメラの位置を変えるから、必要に応じて視聴者サービスを連発し……ってぇ、マスクすんのぉ?」
ハンドバッグから白の不織布のマスクを取り出して、付け始める。
「は? ったりめーだろ。身バレとかしてたまるかってんだ。これでもかなり譲歩してんだぞ?」
目だけで器用に怒ってくる。――まっ、出演者からマスク取り上げるのは得意だから、今はいっか。
「カーディガンくらい脱いで置いて。じゃあ、とりあえずスタートっと」
スイッチを入れて、配信を開始する。
「……はいど~も。シンヤで~す。画面や音声、大丈夫ですか~?」
早々に、チャット欄ではポツポツとコメントが上がってくる。ほんとこの手の生配信は時間帯が命な部分があるよねぇ――おっ、彰を見てか早くも投げ銭、あざっす。
……さぁ、女体化女子のナマナマ配信、始めよっか!
地上の喧噪からいくらか離れた十階のマンションに住む、僕こと河原真也は、しがないエンジニア三年目の社会人だった。親が特に裕福でもないのに、地方都市でとは言え、3LDKの新築に住めているのには、ちょっとした理由があった。
LoveLiveChat。通称ナマナマ放送という、ネットで簡単に視聴が可能な課金有りのR-18系のサイトのおかげだった。素人の女性出演者が脱いだり、自慰したり、エッチしたりのエロ配信で、小銭稼ぎに最適と言える代物だった。
誰でも視聴できる割に、運営が色々とイベントを実施し、さらに一般の非登録ユーザーにも良画素を提供したりと、割と好評だった。モザイクもなしも可能で規制も緩く、生ハメに乱交と何でもありと――他の似た配信サイトとの住み分けもできていた。最初の説明にもどるけど、僕みたいな若造の住環境が割と良い理由は、女性を呼んでは配信して副収入を得るという、ただ一点に過ぎなかった。
ピンポーン。
「おっ。来たね」
呼び鈴に応じて玄関へ向かう途中、壁掛けの全身鏡があった。そこには、黒髪の短髪で中肉中背で、紺のジャケットに灰色のスラックス姿と、同世代を焼き直したような姿の僕が一瞬だけ映った。
ガチャ。
「いらっしゃ~い」
広い玄関の扉を開放すると、鼻に女性用の整髪剤の甘い匂いが――ふわ――っと飛び込んでくる。
「……ハァ」
艶やかな金髪のロングヘアが、初夏の風でカーテンみたく揺れる。不機嫌そうな表情だけど、整った眉や目鼻立ちに加えて、薄目のメイクな彼女は、背格好も含めてスマートだった。ちょっと気が強そうな若い美女と呼ばれる部類へ、余裕で入れた。服装についても、黒のタンクトップに灰色の薄いカーディガンを羽織っていて、白の超ミニスカートという若さみなぎる格好だった。膨らんだ胸を持ち上げるみたく腕組みする彼女は、普通の男だったら三度見するくらいの魅力があった。
「真也。これで貸し借り無しだからなっ」
威圧するみたいな口調も、その透明な声質のせいで、威力も半分以下だった。軽い舌打ちの後、黒のパンプスを脱ぎ捨てて、部屋の奥へ勝手に歩いて行った。笑いそうになる表情を抑える僕は、彼女の履物を揃えてから、ゆっくりと後を追った。
――ガタッ。
「ったく」
音を立てて椅子を引く彼女は、浅めに腰をかけると、長い脚を組む。一見するとお行儀が悪い女性というか、まるで男みたいな粗野な動作とも言えた。けどまぁ、それらを埋めて余りある容姿端麗のおかげで、簡単に相殺できた。
遠慮なくその肉体に視線を突き刺す僕は、冷たい飲み物をコースターに置いて出してあげてから、その対面に座った。
「えぇっと、配信は初めてだっけ?」
カラン――彼女の前に置いたアイスコーヒーが、涼やかな音を立てる。それとは真逆な、あたかも熱がこもったような怒りの表情を作りだす。
「……お前の中で、女体化した男がどういう思考をしているのか知らんが、そもそも放送配信に出演ってのが初めてだよ」
髪を耳後ろへ揃えてから、細い指をシャープなアゴへと当てる。内情を知らない人が見たら、遊び慣れた女性の仕草にも見えるだろうだし、物憂げで男を惹きつけるポーズとも受け取れた。ただし中学のころから知り合いで、彰が元男子だったのを知る僕からすると、記憶が邪魔して興奮にまでは至らなかった。
「じゃあ復習も兼ねて手短に説明するよ? 僕はネットで知り合った女の子をお金で定期的に呼んで、エッチな生放送配信をしている。目的はもちろん、ラブコイン(※視聴者が課金して、投げ銭やチケット購入に消費される課金通貨)で収益を得るためなんだ」
僕の配信の売りの一つとして、割安なコイン相場で、けどそこそこの配信クオリティを提供するというのがあった。とはいえこのインフレの時代、何でもかんでもコストだけで勝負するのには無理があった。
「ケッ。悪どい胴元が、令和スタイルで荒稼ぎしているだけじゃねーか」
「手厳しいね。でもまぁほら、いつの時代も男の性欲は不滅であり、だからこそ色んな商売が成り立って――」
「お前の屁理屈なんて聞きたかねーっての。つまりは早い話、私に客寄せパンダになれってことなんだろ?」
「流れをわかってくれて助かるよ。ただキレイでエロいだけじゃ差別化ができない。……非常に珍しい奇病で女体化した雛本彰く――ちゃんが出演し、女体化した経緯や今現在について、根掘り葉掘り配信する。もちろん、後半はエッチに気持ち良くなってもらって、という台本さ。コンテンツのテコ入れになって、コイン獲得も捗ると思うんだよ」
わざとやらしく笑いながら、立ち上がっては配信の準備を始める。窓際のカーテンが柔らかく揺れる中、彰は行き場のない視線を部屋中へまき散らしていた。
「――気持ちよくなるのは、お前の財布と男優役の連中、あと視聴者だけだろ」
「いやいや。女優さんこと、出演者も心の底から気持ちよくなって、初めてレベルの高い配信になるんだって。素人モノのいいところは、演技に本音を混ぜていいところだと思うんだ。ましてや彰は女体化女子代表として、ガチでイッちゃってよ」
革張りのソファへカメラを向けつつ、収音マイクの感度を調整して、パソコンではタスクを複数立ち上げる。二画面の方では、配信画面も映してっと。
にしても、こういうライブ動画配信サイトは、AVの動画作成や配信の敷居を、大きく下げたねぇ。
「お、おい。今の口振りだと本番ありなのか? 聞いてねーぞ!」
細い眉を下げて、嫌そうに口を曲げる。
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ソファにクッションを投げ置いて、水分も画面外に置いておこう。そろそろ家に来てもらうよう、男優さんにも連絡を入れておこうかな。
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「わかってるって。彰が女体化した時、高校や中学の男子連中からのセックスの催促を、上手く交通整理して回避してあげた借りはチャラ。あの時の彰、ノイローゼになりかけてたくらいだもんねぇ」
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「ささっ、過去のことなんてどうでもいいから配信を始めるよ~。タイトルは『新人女体化女子のアキラちゃん』で。――っと、おおっ。すでに千人以上がスタンバってくれてるよ」
「……全く嬉しかねぇよ。とりあえずソファに座ってればいいのか?」
嫌々ながらも、これで僕と縁切りが出来るからと我慢して、スカートを直しつつ座る。う~ん、こういう所作を見ると、徐々に女になってっちゃうんだねぇ。
「うん。たまにカメラの位置を変えるから、必要に応じて視聴者サービスを連発し……ってぇ、マスクすんのぉ?」
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「は? ったりめーだろ。身バレとかしてたまるかってんだ。これでもかなり譲歩してんだぞ?」
目だけで器用に怒ってくる。――まっ、出演者からマスク取り上げるのは得意だから、今はいっか。
「カーディガンくらい脱いで置いて。じゃあ、とりあえずスタートっと」
スイッチを入れて、配信を開始する。
「……はいど~も。シンヤで~す。画面や音声、大丈夫ですか~?」
早々に、チャット欄ではポツポツとコメントが上がってくる。ほんとこの手の生配信は時間帯が命な部分があるよねぇ――おっ、彰を見てか早くも投げ銭、あざっす。
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